Nucleolus 核小体

内容

  • リボソームの構造-サブユニット
  • リボソームRNAとリボソームrRNA遺伝子(=rDNA)
  • リボソーム, 16S rRNAの細菌同定への応用 概説
  • リボソーム病
     

リボソーム ribosome

文献*1

タンパク質の合成はmRNA分子が運ぶ情報に従って行われる. 正しい読み枠を保ち, 1万アミノ酸につき1個程度の精度を維持するために, タンパク質合成は触媒作用(ribozyme活性)をもつ分子装置, リボソーム(ribosome)で行われている.

 
  • リボソームは50種類以上のタンパク質(リボソームタンパク質, ribosome proteins)数種類のリボソームRNA(ribosomal RNA, rRNA)からできた大型の複合体.
    3分の2がRNAで3分の1がタンパク質。通常の真核生物(出芽酵母/ 哺乳類)細胞は, 細胞質に数百万個のリボソームをもつ.
     
  • 2000年にリボソーム大小サブユニット三次元構造が決定された。これにより, リボソーム全体構造, mRNAにtRNAを配置する働き, ペプチド結合形成の触媒作用は, タンパク質ではなくて, リボソームRNA(rRNA)がになっていることが明らかになった。
     
  • タンパク質は表面を覆うかRNAのすき間を埋めて効率の良いタンパク質合成を進めるのに必要なrRNAの立体構造を許容しながらRNAコアを安定化させることにある. 最初にrRNAが集合しコアを作る手助けもしていると考えられている。
     
  • 原生生物(細菌/古細菌), 真核生物のリボソームは, 構成も機能もよく似ており, 全てが大小2つのサブユニットからできている。各サブユニットは核小体において組み立てられる.
     
  • 核小体では, rRNA遺伝子(rDNA)の転写がおこることでリボソーム合成が始まる.
    rDNAは染色体上に反復しており, この染色体上のrDNAリピートにリボソーム生合成に必要なRNAやタンパク質, さらに合成途中のリボソームサブユニット前駆体が集合している(集合した密度の高い部分が「核小体」)
     
  • rRNAは長い前駆体としてRNAポリメラーゼIにより転写される. rRNAは修飾(メチル化と擬ウリジル化)とプロセッシング(切断やトリミング)をうけ, 適正なサイズの rRNAへと成熟する.
    Ecoli-ribosome.jpg
     
  • プロセッシングと同時に, 細胞質において合成され, 核内へ運搬された数多くのリボソームタンパク質がrRNAと結合, 大小2つのリボソームサブユニットが組み立てられる.
     
  • 核小体内で合成された2つのリボソームサブユニットは細胞質に運び出され, 合体してタンパク合成を行う。
     
  • 小サブユニットは, tRNAとmRNAのコドンを正確に対応させる場であり, 大サブユニットはアミノ酸間にペプチド結合を形成し, ポリペプチド鎖を作る。

70Sリボソーム;原核生物のリボソーム

  • 原核生物:細菌(bacteria)や古細菌(archaea)は, 哺乳類のものより小さなリボソームを持っている。70Sリボソーム(70s Ribosome)と呼ばれ、小さい 30Sサブユニットと大きい 50Sサブユニットで構成されている。
     
  • 50S(分子量160万)の大サブユニットが23S rRNA(2904ヌクレオチドnt)、5S rRNA(120ヌクレオチド:塩基数)と〜34個のタンパク質からなっている。
     
  • 30S(分子量90万)の小サブユニットは16S rRNA(1542ヌクレオチドnt)と21個のタンパク質からなる。すなわち、リボソームは3種のrRNAと53種のタンパク質(大腸菌)とからなる。図: 大腸菌リボソームのシェーマ
     
  • 原核生物のリボソームは細胞質に遊離状態で存在する。
     

16S rRNA遺伝子シークエンスによる細菌の同定

16s-e-coli03.jpg

左図はE.coliの16S rRNA二次元構造図

 

16S rRNAは原核生物の系統解析に用いられる。

  • rRNAは, タンパク合成という生物の本質的機能を持つRNAのため機能変化を起こすような遺伝子変異の頻度が極端に低い
     
  • 上記の理由から進化系統が離れた生物間でも高度に保存された部位(この領域はPCR増幅でのuniversal primerとして用いる)と比較的変化しやすい領域とが存在しており近縁種間の比較にも使用可能。
     
  • rRNAの中でも、16S rRNAはそれをコードするDNAの塩基数が1600bp前後と比較処理に適した長さである。細菌の場合、16S rRNAの遺伝子相同値が97%以下であれば別種と推定される。
     
  • broad-range PCRを用いて細菌に共通な16S rRNAあるいは真菌の18S rRNAを増幅, anpliconに含まれる特定の細菌/真菌に特徴的な可変領域DNA塩基配列をシークエンスデータベースと比較検討し菌種を決定する.*2
  • 通常無菌的な血液, 髄液, 関節液, 胸水, 腹水, リンパ節ほかの組織や壊死組織, 膿汁からの微生物検出にbroad-range PCRは非常に有効な手段である*3
     
  • この方法は, 感染性心内膜炎や, リンパ節炎のように起因菌がバリエーションに富む感染症の診断においてとりわけ威力を発揮する*2
16S-rRNA-sequence.jpg

16S rRNA遺伝子解析のためのユニバーサルプライマー

細菌16S(E.coliを例に) rRNAシークエンス検出のためのユニバーサルprimer; primerとその位置-->fileEcoli16SrRNA.pdf

8UA forward primerは27F primerと同じもの.1485Bは1494Rと同じ.(図のサイズが少し異なっているところはごめんなさい.)

左図のprimer シークエンスの数値(論文*4*5より)はEscherichia coli 16S ribosomal RNA, complete sequence Genbank: J01859.1とは必ずしも一致していないことに注意

菌種同定の詳細な方法については文献*5を参照してください.

ribosome RNA遺伝子(=rDNA)

ヒトには1細胞あたり,約400コピーのrDNA(= rRNA遺伝子)が, 5本のアクロセントリック染色体 acrocentric chromatin(ch.13, 14, 15, 21, 22)短腕二次狭窄部分に分散して存在し,
一つの染色体あたり20〜40コピーが直列配列して,10個のrDNAクラスターを形成している。(13p12, 14p12, 15p12, 21p12, 22p12: OMIM180450-180454)

rDNA01.jpg
acrocentric chromatin
セントロメアが染色体の端に寄っており、短腕が極端に短い場合、アクロセントリック染色体(Acrocentric chromosome)と呼ばれる。(日本語では端部着糸型染色体/ 端部動原体染色体)。
ヒトの場合、13番、14番、15番、21番、22番、Y染色体の6本がアクロセントリック染色体に分類される.*6
  • rDNA(=rRNA遺伝子)は18S, 5.8S, 28Sの3種類のrRNAをコードし, これらのrRNAは一本の前駆体RNA(47S rRNA前駆体)としてRNA ポリメラーゼ I(PolI)によって転写され次いで修飾と切断を受けて成熟する. 独立の遺伝子に存在する5S rRNAはRNAポリメラーゼIIIにより転写されて成熟後核小体で60Sリボソーム前駆体に取り込まれる。5S rRNA遺伝子クラスター(数百コピーからなる)は1qの2カ所に局在している.
     
  • 1ユニットのrDNAは約43kbで, 47S rRNA前駆体をコードする13kbと, 転写調節領域などを含む約30kbの非コード領域(IGS: intergenic spacer 遺伝子間領域)で構成される. 酵母とは異なって, 5S rDNAは独立したクラスターを形成する。
     
  • 47S rDNAクラスターの長さには多型が存在し, 70kb程度から6Mb以上の長いものまであり, 長いrDNAクラスター上には140コピー以上ものrDNAの反復配列が存在する.
     
  • ヒトrDNAクラスターは大規模な反復構造, rRNA合成のための非常に活発な転写活性, IGSに散在する非B型DNAと予測される単純反復配列の存在などより酵母同様, 異常な組み替えを頻発する不安定ゲノム領域と予想されるにもかかわらず,
    正常細胞においてrDNAの構造は, 細胞分裂を通じて安定に維持されており, このためのrDNAクラスター安定性維持機構の存在が推察されている

rDNAの再編成はいくつかの疾患において報告されている。

  • 筋ジストロフィー患者さんでデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)遺伝子との転座breakpointが28S rRNA領域にマップされている*7
     
  • ヒト肺, 大腸から採取されたがん組織の半数以上に非がん組織では見られないrDNAクラスター再編成が観察された*8. rDNA安定性維持機構がこれらのがん細胞において異常になっている可能性が考えられる
     
  • がんを多発する遺伝病の原因遺伝子である, BLM, ATM, rDNAのサイレンシングに関わるDNAメチルトランスフェラーゼやTIP5などがrDNAの安定性維持に関与していることが示唆されている。これらの遺伝子の機能よりDNA複製, 修復, チェックポイント, ヘテロクロマチン形成などの過程がrDNA安定性維持に機能している可能性があると考えられているが詳細はわかっていない。

リボソーム病 ribosome disease

ribosome-eukaryo01.jpg

ribosomeの生合成は細胞機能の制御に密接に関係しており, クロマチン構造の変換, apoptosis, 老化や疾患など高次生命現象に深く関与していることが最近明らかになってきた*9

さらにp53シグナルがこの現象に大きくかかわっている可能性が指摘されている。*10

 

ヒトのリボソームは大サブユニットが3種類のRNA(28S, 5.8S, 5S rRNA)と48種類のタンパク質(L1-L48), 小サブユニットは1種類のRNA(18S rRNA)と32種類のタンパク質(S1-S32)からできている.

前述のように28S, 18S, 5.8S rRNAはRNA ポリメラーゼ I(PolI)により前駆体(47S pre-rRNA)として転写された後にプロセッシングをうけて生成される. 5S rRNAはPol靴砲茲蟾臉される.

タンパク質(RP)はそれぞれの遺伝子がPol兇砲茲蠹昭未気譴晋紊忘挧質で合成される.

すべての成分が核小体に集合し多種の因子の働きによりサブユニットごとに組み立てが進行する. 最終的にはそれぞれのサブユニットが細胞質に出て, 成熟したリボソームとして働く。

リボソーム病

リボソームは細胞内に大量に存在し進化的によく保存されているため,その異常は胎生致死となり疾患の原因たりえないと考えられてきた. しかし・・・

リボソームタンパク質やリボソーム生合成に関わる因子の遺伝子変異Diamond-Blackfan anemia, MDS del(5q)など造血障害を来す疾患で次々とみつかり, 現在はこれらの疾患をまとめてリボソーム病と呼ぶ.

興味深いことは, リボソームがタンパク質合成というすべての細胞にとって, きわめて普遍的な機能をもつのに,これらの疾患の多くは組織特異的な症状をもっている

 

リボソームタンパク質遺伝子変異が原因となる疾患.

ribosomeDx-RP.jpg
 

RP(ribosome protein)遺伝子, rRNA遺伝子の染色体マップ*11--->fileRPgenes on chromosomes.pdf

宮崎大学医学部 剣持先生のリボソーム蛋白質遺伝子データベース(<--クリックでページに異動)

 

リボソーム生合成に関与する遺伝子の異常が原因となる疾患

ribosomeDx02.jpg

琉球大学遺伝性疾患データベースHP (<--クリックでHPへ. 使用時登録が必要)

 
 
 

リボソーム生合成に関係するトランス作用因子, snoRNA(核小体内低分子RNA)の異常が原因の疾患

ribosomeDx03.jpg
  • 真核生物リボソーム大小サブユニット(60S, 40S)生合成には, 核小体内でrDNAから転写されたrRNA前駆体(pre-rRNA;哺乳類では47S pre-rRNA前駆体)に, リボソームタンパク質(RP)やトランス作用因子(trans-acting factors/ assembly factor)が会合した90S前駆体が60S前駆体と40S前駆体に分割されることが必要である。
     
  • トランス作用因子とはリボソーム生合成には働くが, 最終産物の成熟リボソームには含まれないタンパク質や核小体内低分子RNA(snoRNA)のことをいう。

*1  Alberts B, et al. Molecular Biology of the CELL, fifth ed. Garland publishing, Inc. New York&London.
*2  大楠清文・江崎孝行 感染症診断における遺伝子解析技術の適応 日本臨床微生物学会 2008; 18(3): 163-176
*3  Rantakokko-Jalava K, et al. Direct amplification of rRNA genes in diagnosis of bacterial infections.J Clin Microbiol. 2000 Jan;38(1):32-9.
*4  草場耕二 16SrRNAシークエンス解析による微生物の同定 臨床と微生物 2016; 43:109-113
*5  松本竹久ほか 16SrRNA遺伝子解析による細菌同定 臨床病理 2013;61: 1107-1115
*6  Strachan T, Read A. Human Molecular Genetics. Garland Science. 2010 p.45. ISBN 978-1-136-84407-2.
*7  Bodrug SE, et al. Molecular analysis of a constitutional X-autosome translocation in a female with muscular dystrophy.Science. 1987 Sep 25;237(4822):1620-4.
*8  Stults DM, et al. Human rRNA gene clusters are recombinational hotspots in cancer. Cancer Res. 2009 Dec 1;69(23):9096-104.
*9  剣持直哉 リボソーム病とp53経路, RNA異常による疾患 医学のあゆみ 2011; 238: 476-480
*10  Chakraborty A, et al. Guarding the 'translation apparatus': defective ribosome biogenesis and the p53 signaling pathway. Wiley Interdiscip Rev RNA. 2011 Jul-Aug;2(4):507-22.
*11  剣持直哉 リボソーム病 新たな疾患としての可能性を探る 蛋白質 核酸 酵素 2003; 48(4): 508-516

添付ファイル: fileEcoli16SrRNA.pdf 412件 [詳細] fileribosomeDx03.jpg 442件 [詳細] fileribosomeDx02.jpg 397件 [詳細] fileribosomeDx-RP.jpg 427件 [詳細] fileribosome-eukaryo01.jpg 383件 [詳細] fileRPgenes on chromosomes.pdf 199件 [詳細] file16S-rRNA-sequence.jpg 704件 [詳細] file16s-e-coli03.jpg 542件 [詳細] filerDNA01.jpg 493件 [詳細] fileEcoli-ribosome.jpg 576件 [詳細]

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Last-modified: 2019-06-25 (火) 13:29:19 (141d)