病理学総論 腫瘍

腫瘍の発生

「腫瘍がなぜできるのか」について現在の考え方をまとめてみましょう

遺伝子を解析する分子生物学がめざましい発展をとげている現在、「腫瘍」という病態は遺伝子、DNAの異常が大きくかかわっていることがわかってきました。DNAは体の有核細胞*1すべての核内にふくまれ,タンパク質合成の設計図として重要な働きをしている核酸という物質です
このDNAは実にさまざまな要因で毎日傷つけられています。放射線、紫外線、化学物質などがDNAを傷つける原因です。ウイルスの感染もヒトのDNAを傷つけ変化させてしまいます。ウイルスは自分のDNAやRNAを増殖させるためにヒトの細胞を借りています.とくにヒトDNAを傷つけて腫瘍を発生させる原因になるウイルスを腫瘍ウイルスと呼んでいます。ヒトではC型肝炎ウイルス, EBウイルス, 成人T細胞白血病ウイルスなどが知られています。このように傷ついたDNAをもとに作られるタンパク質は正常にできあがるタンパク質の働きを失ったり,正常と異なった働きをするようになったりすることがわかっています。

neoplasia03a.png

図は、腫瘍の成立とDNAの障害の関係を表しています
さまざまな原因でDNAが傷ついても,ヒトにはDNAを修復する機構や遺伝子が備わっています。修理屋さんがいて傷ついたDNAを修復してくれるわけです。しかしこの修復がうまくいかない場合は,傷ついたDNAをもった細胞が出現してしまいます。もし傷ついたDNAが

  1. 細胞の増殖(増えていくこと)にかかわるタンパク質に関係するものであったり、
  2. 癌抑制遺伝子とよばれる腫瘍の発生を抑制する働きをもった遺伝子だったり、
  3. よけいな細胞や、傷ついた細胞を排除するアポトーシスとよばれるしくみに関係した遺伝子だったりする場合

つぎの段階に進んでしまいます。これらの遺伝子が壊れると細胞の増殖がコントロールできずに無秩序にどんどん細胞が増えていくことになってしまいます。アポトーシス関係の遺伝子が壊れると余分な細胞や、傷ついたDNAをもった細胞を破壊処理できなくなり、やはり異常な細胞がどんどん残って増えていくことになります。まったく同一の体細胞がどんどん増え続けることをクローン増殖と呼びます。 DNAに異常のある細胞のクローン増殖=腫瘍の誕生です. 異常な細胞はさらにDNAが傷つきやすく、異常がエスカレートしていきます。へんなタンパク質をもつ異常細胞として免疫で処理されるはずなのに処理を逃れるようになったり,自分自身で血管を作り出し酸素や栄養をどんどん取り入れるようになったり、最後には異常な細胞の大きな塊をつくり、はがれて血流やリンパに乗って転移を来すようになります。こうして悪性腫瘍が成立します

このように腫瘍は細胞の増え方の異常といえます。いいかえると、同じ,異常なDNAを持つ細胞が無秩序に増え続ける(クローン増殖する)状態が腫瘍です。 「腫瘍の病理」を理解するためには正常な細胞がどのようにして増えるのか(細胞分裂)も、知っている必要があるようです。

悪性腫瘍の診断

腫瘍マーカー

腫瘍マーカとはがん細胞自身が産生するか,他の細胞ががん細胞に反応して血液や体液中に検出される物質で
がんの存在・種類・量を反映する指標になり健常人や非がん患者よりも異常な高値を示す

肺癌の血清腫瘍マーカ

CA19-9 CA-125


*1 核をもつ細胞;赤血球や血小板には核がない。幼弱な赤芽球や巨核球の時には存在していた核を成熟により喪失したため

添付ファイル: fileneoplasia03a.png 513件 [詳細]

トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2014-08-29 (金) 12:41:21 (1905d)