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赤痢アメーバ症

赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)と従来呼ばれてきた単細胞生物は今日, 病源種である狭義の赤痢アメーバE.histolyticaと非病源種であるEntamoeba disparの2種に大別される

  • E.histolytica原虫が感染した場合,発症者は治療が必要になるが無症候性感染者(キャリア)や症状が軽微な慢性感染者も他の宿主への感染源となるため治療が必要である
  • E.disparは免疫不全のヒト宿主であっても病原性を示さず感染者でも駆除の必要はない
  • 原虫の同定は主に遺伝子学的手法または特定抗原検出によりおこなわれるが日本では一般検査化していない
    PCRによる診断についての文献--->fileAmoebaDxPCR.txt
     
  • 大腸炎や肝膿瘍を発症している症例では原虫種が同定されていなくても臨床的にE. histolytica陽性として治療をおこなう

アメーバ性大腸炎

  • E. histolyticaは大腸に病変を形成し好発部位は,盲腸・上行結腸と直腸・S状結腸である
  • 横行結腸に病変をきたすことは少ない
  • 潜伏期間は一定せず,数日・数週・数ヶ月(数年)のことがある
  • 下痢・粘血便・テネスムス(渋り腹)・下腹部痛などが主症状である
  • 38℃以上の発熱は肝膿瘍を伴わない限り原則としてない.全身症状は一般になし
  • 症状は一般に軽微,患者さんは症状に不快をおぼえながらも通常の社会生活を営んでいる
  • 粘血便は最も出現頻度が高く, 典型的症例ではテネスムスを伴ったイチゴゼリー様の粘血便とともに頻回に糞便が排出される
  • 粘血便は大腸潰瘍よりの出血と粘液の混在したもので持続する症例では潰瘍性大腸炎・大腸憩室症・大腸悪性腫瘍との鑑別が必要になる
  • コルチコステロイド投与は大腸炎の悪化と穿孔性腹膜炎併発の原因となるためUCとの鑑別はとくに慎重さが必要である
  • 他覚所見としては左下腹部(S状結腸部分)の圧痛が多い
  • 大腸炎の5%が肝膿瘍を併発する

大腸内視鏡所見 (磐田市立総合病院症例)

40歳代の男性. 発熱で発症,肝膿瘍の診断でドレナージを行う.感染経路検索のため大腸内視鏡検査を施行
盲腸,直腸に中心白苔と周囲の強い発赤を伴うびらんが多発している(クリックすると大きな画像が見られます)

amoeba01.pngamoeba02.pngamoeba03.png

大腸生検組織所見(同上症例)

AmoebaLoupe.pngAmoebaM01.png
大腸粘膜生検組織びらん性大腸炎
AmoebaM02.pngAmoebaPAS.png
粘膜表面の赤痢アメーバ栄養型栄養型原虫はPAS陽性

赤痢アメーバ(栄養型)は胞体内に貧食した赤血球や空胞、原形質顆粒などを含んでいる

治療

  • メトロニダゾール(5-ニトロイミダゾール系薬剤)が第一選択薬
  • 投与量は1-2g/日, 7-10日が1クールで必要に応じもう1クール追加する
  • 1.5g/日以上の投与は嘔気, 嘔吐, 腹痛やうつ症状などの副作用発現頻度が増加する
  • メトロニダゾールには抗酒薬であるジスルフィラム様作用があるので投与終了後1週間までは禁酒
  • 大腸炎には著効.肝膿瘍は解熱や腹痛の軽快など臨床症状の改善を効果判定の第一の目安とする
  • 薬剤が有効であっても膿瘍はすぐには縮小しない.腫瘤消失には数ヶ月-数年かかる
  • ドレナージなど外科処置についての有効性には議論が残っている
  • ドレナージが必要なのは破裂の可能性がある巨大膿瘍の時, 左葉膿瘍が心嚢穿破の危険があるとき, 薬剤が無効な場合
  • 殺組織アメーバ剤には他にチニダゾールがある
  • キャリアやシスト排出者には殺管腔アメーバ剤のフロ酸ジロキサニドやパロモマイシンなどを用いることがある

リンク

国立感染症研究所感染症情報センタの赤痢アメーバページへ移動する。


添付ファイル: fileamoeba02.png 1604件 [詳細] fileAmoebaLoupe.png 1343件 [詳細] fileAmoebaDxPCR.txt 704件 [詳細] fileAmoebaM01.png 1436件 [詳細] fileamoeba01.png 2096件 [詳細] fileAmoebaM02.png 2687件 [詳細] fileAmoebaPAS.png 1793件 [詳細] fileamoeba03.png 1624件 [詳細]

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Last-modified: 2016-06-16 (木) 23:33:31 (674d)