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副腎髄質の腫瘍--->副腎の解剖と生理機能

副腎髄質の腫瘍には次の2系統が存在する

  • 交感神経系腫瘍である神経芽腫群の腫瘍
  • 内分泌系腫瘍である褐色細胞腫

褐色細胞腫 pheochromocytoma

褐色細胞腫の病理

マクロ所見

  • 直径1cm以上の副腎髄質細胞由来腫瘤を褐色細胞腫という
  • 重量は数gから1kgを超すものがあるが, 数10gのものが多い
  • 腫瘍は薄い副腎皮質に覆われて, 通常単発であるが同一副腎内に結節が複数個生じることがある
  • 腫瘍と皮質間には結合組織性皮膜が介在することが多い.
  • 腫瘍と髄質の間には移行像がみられ残存する髄質は,ほとんどが過形成像を示す.萎縮像を示すことはない.
  • 割面は膚色から暗赤色で非常に柔らかい.しばしば出血と嚢胞変性を伴い中にチョコレート色の液体を含む
  • ホルマリン(またはグルタールアルデヒド)で固定すると組織および固定液はアドレナリンの含量が多いほど濃い褐色を呈する
  • アドレナリンを含まずノルアドレナリンまでしか合成されていない場合, 黄色にとどまり褐色調を呈さない
  • 組織内カテコールアミン含量が乏しい場合は, ほとんど呈色しない

ミクロ所見

  • 腫瘍細胞は典型的な場合, 充実性胞巣状配列(zellballen)をとり増殖し胞巣間に薄い線維血管性隔壁が存在する
  • 腫瘍細胞は副腎髄質細胞に似るが胞体はより豊かで, 核は大きく核小体は明瞭である.細胞の大小不同が目立つ.
  • 胞体は顆粒状, 空胞や好酸性硝子滴が多く見られる. Grimelius染色陽性である.
  • 核はクロマチンに富み大型で, 核形不整, しばしば彎入を示して核内封入体様に見える.
  • 腫瘍細胞内にはしばしば褐色顆粒がみられ, ヘモジデリン, ニューロメラニン(Masson-Fontana染色で黒色顆粒として染まる)である.
  • 核分裂像は通常ほとんど見られない

褐色細胞腫の臨床事項

大量のカテコールアミン(CA)を産生・分泌する腫瘍

  • 高血圧, 代謝亢進, 頭痛, 発汗, 高血糖などの症状を呈する
  • アドレナリン(エピネフリン)を主に産生する褐色細胞腫は発作性高血圧を呈することが多く, 臨床的には糖尿病として発見されることがある

血中・尿中CA値測定やCAの代謝産物である尿中VMA(vanillylmandelic acid)を測定することで診断
無症候性副腎腫瘍で偶然発見されるincidentalomaも画像の発達により増加している
好発年齢は30-50歳代であるが小児にも発生する

多くは片側性であるが10%は両側性の発生 MEN typeII(Sipple症候群)では70%が両側性, 家族性褐色細胞腫は40%が両側性である

遠隔転移をきたす悪性褐色細胞腫は全褐色細胞腫の10%

カテコールアミンの合成

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カテコールアミンの合成酵素

.船蹈轡鵐劵疋蹈シラーゼ
▲鼻璽僖妊ルボキシラーゼ
ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(DBH)
PNMT(フェニルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼ)

  • チロシンはカテコールアミンの直接の前駆体である
  • チロシンヒドロキシラーゼ,魯テコールアミンを合成する組織においてのみ可溶型ならびに顆粒結合型の両者が存在する
  • カテコールアミンは脳血液関門を通過できないために脳内ではカテコールアミンはその場所で合成されなければならない
  • パーキンソン病など,ある疾患ではドーパミン合成の局所での欠乏がみられる. ドーパミンの前駆体であるL-ドーパはたやすく脳血液関門を通過できるためパーキンソン病の重要な治療薬となる

副腎の褐色細胞腫では

  • チロシンハイドロキシラーゼ
  • ドーパデカルボキシラーゼ
  • ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(DBH)
    の3種の酵素が全ての腫瘍に検出されるが
  • PNMT(フェニルエタノールアミン-N-メチルトランスフェラーゼ)
    はエピネフリン産生腫瘍にだけ認められる。

臨床的に非機能性褐色細胞腫と診断される腫瘍は大部分がエピネフリン産生腫瘍である。

褐色細胞腫が産生するカテコラミン以外のホルモン

褐色細胞腫ではカテコールアミン過剰産生だけでは説明のできない症状をていすることがある.これはカテコールアミン以外のペプチドホルモンを産生することがあるためである

  • met-enkepahlin 内因性モルヒネ様物質のenkephalinにはmet-とleu-がある
    (Met-enkephalinの構造はTyr-Gly-Gly-Phe-Met. , Leu-enkephalin はTyr-Gly-Gly-Phe-Leu. で,どちらもproenkephalin遺伝子産物です)
  • neuropeptide Y
  • somatostatin
  • VIP(vasoactive intestinal peptide)
  • substance P
  • corticosteroid releasing hormon(CRH)
  • growth hormon releasing hormon(GHRH)
  • calcitonin
  • calcitonin gene-related peptide
  • ACTH
    このうちACTHによるcushing症候群やVIPによるWDHA(wartery diarrhear hypokalemia and achlorhydria)症候群の報告がある.これ以外はほとんど臨床症状をしめさない

パラガングリオンparaganglion

原始自律神経神経節 primitive autonomic gangliaは 交感神経節副腎を含むパラガングリオンparaganglion (単数形はパラガングリアparaganglia)の2方向へ分化する

交感神経幹とパラガングリオンの形成

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  • 発生第5週に胸部神経堤由来の細胞が脊髄両側を背側大動脈すぐ後方に向かい移動する.
  • 移動した細胞は縦走する神経線維で相互に結合し両側性に分節的配列をした交感神経幹神経節連鎖を形成する.
  • 交感神経節の連鎖はいっしょになって脊柱の両側に交感神経幹を形成する
  • 胸郭内の神経芽細胞が頚部および腰仙部に遊走して交感神経幹は全長にのびる
  • 神経節は最初分節的に配列しているが神経節の癒合により配列はあいまいとなる。とくに頚部は分節があいまいである.
  • 交感神経性神経芽細胞の一部は大動脈の前面に移動して腹腔神経節および腸間膜神経節などの大動脈前神経節を形成する.

パラガングリオン paraganglion (傍節:「神経節のかたわら」の意味)

  • パラガングリアはprimitive autonomic gangliaが内分泌の性格を持って分化し自律神経節や神経叢付近に円形の集合体をつくったもの. この一部は副腎内方に侵入して副腎髄質となる.発生上はパラガングリアと副腎髄質は相同の器官であり副腎髄質は成人最大のパラガングリオンである.
  • Kohn(1902,プラハの解剖学者)は神経外胚葉由来だが神経組織とは異なる形状を示し,クロム塩で褐色に染まる細胞から構成されて豊富な自律神経支配を受けている組織をパラガングリオンと名づけた. パラガングリオンを構成する主要な細胞をクロム親和細胞と呼んだ
  • 副腎髄質は成人最大のパラガングリオンである.
  • この他, Zuckerkandl器官,骨盤内交感神経中や交感神経節状策に一致して分節的に配列するクロム親和細胞群がパラガングリオンに含まれる.

伝統的にはガングリオンはクロム親和性パラガングリオンと非クロム親和性パラガングリオンの二種類に分類される

クロム親和性パラガングリオン

1. 副腎髄質
副腎は中胚葉由来の皮質と外胚葉由来の髄質から形成される.胎性皮質が形成されているときに交感神経系に由来する細胞(神経堤細胞)が副腎の内方に侵入して細胞索や細胞集団をなして配列し副腎髄質となる.
これらの細胞は重クロム酸カリやクロム酸で黄褐色に染まるのでクロム親和細胞(chromaffin cell)とよばれる.
胎性期にはクロム親和性細胞は胚子体内に広く散在しているが成人では副腎髄質のみに細胞集団が残っている
副腎髄質にはノルエピネフリン分泌細胞とエピネフリン分泌細胞の二種類のクロム親和細胞が存在する。前者は強いクロム親和反応を有し,後者は塩基性色素に好染する.

2. Zuckerkandl器官
ヒト胎児や新生児の腹大動脈の左右両側で下腸間膜動脈起始部にみられるクロム親和性細胞集団 この器官は胎児新生児期には顕著だが副腎髄質の発達とともに1歳半ころから退化し始め思春期以後は通常見出せない
この器官に含まれるモノアミンは大部分ノルアドレナリンである
この器官のクロム親和細胞には副腎髄質と同様に交感神経節前線維が来てシナプスを形成するが頻度は髄質にくらべ極度に少ない

3. 交感神経にともなって見られるパラガングリオン
交感神経節状策や骨盤内交感神経叢の走行に一致してクロム親和細胞の小集団が散在している.
通常は神経周膜の内側にあるが,外側に存在するものもある
パラガングリオンのクロム親和細胞集団は神経細胞からは薄い結合織の皮膜で分画されている

非クロム親和性パラガングリオン

1. 頚動脈小体 Carotid body 総頚動脈内側で内・外頚動脈の分岐部に存在する,米粒大の卵形の小体 小体内には血管分布が豊富で舌咽・迷走・交感神経に由来する神経線維束が認められる. 電顕では主細胞(モノアミンを含有するがクロム親和反応陽性を示す細胞は少ない), 支持細胞および神経終末との特有な複合体である 頚動脈小体の本体はいまだ不明である (神経節, 神経性内分泌腺, 鰓弓由来の腺, 血管糸球, アドレナリン系物質を分泌する内分泌器官, 副腎皮質に拮抗するパラガングリオン, 動静脈吻合の一種などの説がある) 生理学的には呼吸運動反射に関与する化学受容器が存在すると考えられている(血中O2,CO2分圧, pH低下が刺激になる)

パラガングリオーマ Paraganglioma

パラガングリオーマは副腎髄質以外のパラガングリオンから発生する腫瘍である

  • 非機能性腫瘍のみをパラガングリオーマという場合もある
  • カテコールアミン過剰症状を呈する機能性腫瘍は後腹膜に発生することが多い
  • 組織学的には副腎褐色細胞腫と同じ
  • ノルエピネフリン産生腫瘍がほとんどで,ごく稀にエピネフリン産生腫瘍がある
  • 非機能性パラガングリオーマは血管周囲の各所に生じる
    • 頚動脈小体のcarotid body tumor
    • 中耳のglomus jagular tumor
    • 膀胱パラガングリオーマ
      など
    • 支持細胞や血管を基質として機能性に比べ小型の腫瘍細胞が小胞巣状構造をとる
    • chromograninA, neurofilamentなどが陽性

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Last-modified: 2014-08-29 (金) 12:41:21 (2606d)