病理学総論

免疫

A. 免疫の基礎知識

A-1. 免疫とはどのような働きですか

  • 体外から侵入する異物や危険物質から体を守るための反応で主に血液細胞がその役割を担っている
  • 異物には、細菌、ウイルス、真菌(かび)や寄生虫(アニサキス,蟯虫など)などの病原体のほか、癌細胞、移植された臓器や組織なども自分自身にとって異物になる。
  • 異物と自分自身を区別して異物だけを攻撃するためには,異物と自分を見分けるためのしくみが必要。自分の体を構成する細胞には自分自身に固有の標識物質があり免疫を担当する細胞がそれを認識して自分と異物を区別している(HLAの項目を参照)
  • 免疫反応を引き起こす物質を抗原(antigenアンチジェン)と呼ぶ。
    • 抗原は細菌やウイルスなどの病原体, 癌細胞内部や表面に存在するタンパク質などの物質です。花粉や食物の分子のように、そのものが抗原であることもあります。

免疫反応が正常に働いていると、体内に侵入した異物の抗原を見つけ出し、防御力を結集してそれを攻撃します。異物の侵入はリンパ球により記憶され再度の侵入に対しては速やかに免疫システムが作動します。このようなシステムのおかげでわれわれは病気にならずにすんだり、もし、病気にかかったとしても軽症ですんだりすることができます。

A-2. HLA(エッチエルエー)とはなんですか、免疫システムでどのような役割があるのですか

免疫システムは自分(自己)と自分以外のもの(異物)を区別し異物の存在を認識したうえでそれを破壊します。免疫システムがこの区別をできるのは、すべての細胞の表面に「自分」をあらわす標識となる分子があるからです。この分子にはペプチド(アミノ酸のつながったもの)を結合する溝があり,自己のタンパク質由来のペプチド断片を結合させた分子を「自己」の標識としてTリンパ球が認識します。異物,たとえばあるウイルスが細胞に感染するとウイルスに特異的なタンパク質が産生され,標識分子はこのタンパク質由来のペプチドを結合して表面に出現します。そのため 異物標識として「自分ではない」侵入者とT細胞が判別し免疫応答が開始されます。

人間の細胞の標識分子は最初,白血球の型を決める物質として発見されました。HLA(エイチエルエ−)と略して呼びます。(HLA= human leukocyte antigenヒューマンロイコサイト・アンティジェン=ヒト白血球抗原の略です。) 自分以外の人の体内では免疫反応を起こすので(自分の体の中では反応を起こさないけれど)抗原 (Antigen) と名前がつけられました。 その後の研究で白血球だけでなく,さまざまな有核細胞(核を持った細胞)や血小板にも存在しており,ヒト細胞の標識分子であることがわかったため,主要組織適合遺伝子複合体(MHC)とも呼ばれます。(赤血球にはHLA分子はありません)

HLAの分子は一卵性双生児など特殊な場合をのぞき、ひとりひとり違っていて自分自身に全く固有なものです。細菌、移植組織の細胞などあきらかに自分以外の異物だけではなくて病原体によって侵され変性した自分の細胞や自分自身の細胞が変化した癌細胞なども細胞表面に正しい標識を表しておらず異物として認識され、免疫システムの攻撃目標になります。

白血球中のBリンパ球は、異物の立体構造を直接認識し反応できます。しかし、Tリンパ球は、免疫システム中の別の細胞である抗原提示細胞の助けを必要とします。

マクロファージや樹状細胞は異物を細胞内に取りこみ断片に分解しTリンパ球が認識できる形で細胞の表面に「提示」する働きを受け持っており抗原提示細胞と呼ばれます。
現在は樹状細胞がいちばん抗原提示能力にすぐれていることがわかっています。

HLAは臓器移植の拒絶反応に関する分子であり, 骨髄移植など, 移植医療におおきくかかわります。それは別項目(B-9)で説明します。

A-3. 免疫のシステムを担当する細胞や器官にはどんなものがありますか

ヒトの体内ではいくつかの器官が免疫システムを作動させるために働いている--これらはリンパ系器官とよばれる

  • 1次リンパ系器官(中枢リンパ系器官)と
  • 2次リンパ系器官(末梢性リンパ系器官)とに分類されます。

一次リンパ系器官--免疫を担当する細胞を作り出し成熟させる場所

  • 胸腺
  • 骨髄

骨髄では好中球、単球、Bリンパ球、未熟なTリンパ球などいろいろなタイプの白血球がつくられます。 胸腺では、白血球の1種であるTリンパ球が異物の抗原を認識する一方で自身の抗原は無視するように訓練され成熟します。このTリンパ球は、特異免疫(=獲得免疫,後述)を担うきわめて重要なものです。体を守る必要が生じたときは、骨髄で白血球が多量につくり出され、血流に入って必要とされる部位に送られます。これらの細胞が免疫防御機構の最前線ではたらくことになります。

2次リンパ系器官

  • 脾臓(ひぞう)、
  • リンパ節
  • 扁桃
  • 肝臓
  • 虫垂
  • 小腸内のパイエル板 などがある

これらの器官は、細菌や異物を捕えるとともに、免疫システムの成熟した細胞が集合して細胞同士や異物と相互に作用し、特定の免疫反応を行うための場所になっています。

        

A-4. リンパ系( リンパ節とリンパ管 )とはどんな器官ですか、免疫にどのようにかかわっていますか

リンパ系は、胸腺、骨髄、脾臓、扁桃、肝臓、虫垂、小腸内のパイエル板とともに、免疫システムを構成する重要な部分

  • リンパ系は、リンパ節がリンパ管でつながったネットワークで、体じゅうに分布しリンパ液を運ぶ
  • リンパ液は、酸素、タンパク質、その他の栄養素を含んでおり、毛細管の薄い壁を通って組織の中へ浸透して組織に栄養分を与えます。
  • リンパ液の一部は、リンパ管に入り、最後は血流に戻る
  • リンパ液は、組織中の細菌などの病原体、癌細胞、死傷した細胞をリンパ管へ運ぶ
  • リンパ液にも多くの白血球が含まれている。

リンパ液によって運ばれた物質はかならずリンパ節を通過し、リンパ液が血流に戻る前に異物はそこで取り除かれ破壊されます。リンパ節には、リンパ球が集まっており、リンパ球同士あるいは抗原と反応し、異物に対して免疫反応を起こす。

リンパ節は、リンパ球がきっちり詰まった組織が網状をなしています。有害な微生物はこの網状組織でろ過され、リンパ球や、それとともにリンパ節に存在するマクロファージによって攻撃されます。リンパ節は、首筋、わきの下、鼠径部(そけいぶ)のようなリンパ管の枝が分かれる部位に集まっています。

A-5. 皮膚や粘膜は感染の防御にどのように役立っていますか

  1. 侵入した異物は、まず皮膚や角膜、呼吸器、消化器、泌尿器、生殖器などの表面を覆う粘膜などの機械的、物理的なバリアーで食い止められます。
  2. これらのバリアーが無傷であれば異物の多くは組織内に進入できない。
  3. 外傷や熱傷による皮膚の損傷などを起こしてバリアーが傷ついている場合は感染の危険性が高まります。
  4. これらのバリアーは、細菌を破壊する酵素を含んだ分泌物、たとえば涙や、消化管や腟(ちつ)の分泌物によって守られています。たとえばリゾチームという酵素は涙や鼻水に多量に含まれています.これは,外気と直接触れる粘膜を病原菌から守るための機構と考えられています.

A-6. 非特異免疫(自然免疫)とはなんですか

非特異免疫(自然免疫)は、生まれたときにすでに備わっています。「非特異免疫」と呼ばれるのは、どんな異物に対してもほぼ同じ方法で対応するからです。非特異免疫に関与する白血球には、好中球、好酸球、好塩基球、単球(組織で樹状細胞やマクロファージに分化する), NK(ナチュラルキラー)細胞があります。それぞれ少しずつ機能が違います。細胞ではありませんが補体系とサイトカインという物質も非特異免疫に関係しています。

A-7. 非特異免疫(自然免疫)にかかわる細胞や物質

非特異免疫を担当する細胞には好中球、好酸球、好塩基球、マクロファージ、樹状細胞,NK細胞などがある。

好中球や樹状細胞,マクロファージは異物を細胞内にとりこんで破壊する働きがあり食細胞とよばれる。

マクロファージ Macrophage

  • マクロファージは、単球と呼ばれる白血球の一種が血流からさまざまな組織に移行した後、分化した細胞
  • 感染が起こると単球は血流を離れて組織に入りそこで約8時間,肥大し内部に顆粒をつくる。顆粒には酵素やその他の物質が詰まっていて、これらが細菌や異物細胞を消化するのを助ける
  • マクロファージは組織内にとどまり、細菌、異物細胞、損傷した細胞、死んだ細胞などを食べ尽くす
  • このように細胞が細菌やさまざまな細胞や細胞片などを食べるプロセスを貪食(どんしょく)作用と呼び、このような細胞を食細胞と呼ぶ。

好中球

  • 好中球は、細菌やさまざまな異物細胞を捕食する。
  • 内包している顆粒にはエステラーゼ,ペルオキシターゼなどの酵素が含まれこれらの細胞を殺したり消化したりするのを助ける。
  • 好中球は血流とともに体内を循環していますが、特別な信号を受けると血流を離れ組織に入りこむ
  • これらの信号は細菌そのものから、あるいは補体タンパク、マクロファージなどから発信されますが、そのすべてが好中球を問題部位に引き寄せる物質をつくります。この細胞を引き寄せるプロセスは走化性と呼ばれる。

好酸球

  • 好酸球も細菌やその他の異物細胞を捕食する
  • 捕食した細菌や細胞を消化する酵素を含む顆粒をもち、血流とともに体内を循環している。
  • 好酸球は細菌に対して好中球やマクロファージほど活発ではありません。
  • 主な役目は寄生虫に取りついて動けなくし、殺すのを助けること。
  • また好酸球は喘息(ぜんそく)のようなアレルギー反応にも関与している

好塩基球

  • 好塩基球は異物細胞を捕食しない。
  • 好塩基球には、アレルギー反応を起こす物質であるヒスタミンを放出する顆粒がある
  • 好塩基球は好中球と好酸球を問題部位に引き寄せる物質をつくる。

NK(ナチュラルキラー)細胞

  • NK細胞は、白血球の1種でリンパ球です。
  • NK細胞は、形成された瞬間から外敵を殺す能力を備えているので、生まれつきの殺し屋(キラー)という意味でナチュラルキラー細胞と呼ばれる。
  • NK細胞は、異物細胞に付着し、酵素などの物質を放出して異物細胞の外側の膜を破壊し、ある種の微生物、癌細胞、ウイルス感染細胞などを殺す。

このように、NK細胞はウイルス感染に対する防衛の最前線に立ちます。また、NK細胞はTリンパ球、Bリンパ球、マクロファージなどの働きをコントロールするサイトカインをつくる。

補体とサイトカイン

補体とサイトカインは細胞そのものではなく産生された物質です。これらは非特異免疫だけでなく特異免疫にも働きます。

補体系
補体系は、連鎖反応をする30以上のタンパク質から成り立っていて、1つのタンパク質が次々と他のタンパク質を活性化させていきます。この一連の反応は、補体カスケードと呼ばれます。補体タンパクは細菌を直接殺傷することもできるし、細菌に付着して好中球やマクロファージに細菌の存在を認識させて、捕食を容易にすることで細菌の殺傷を助けることもできます。その他の働きとしては、マクロファージや好中球を問題部位に引き寄せることによって、細菌を凝集させ、ウイルスを制圧します。また補体系は特異免疫にも関与します。

サイトカイン
サイトカインは免疫システムの情報伝達物質です。体内で抗原が見つかると、免疫システムを構成する白血球やある種の細胞がサイトカインをつくります。サイトカインには多くの種類があり、それぞれ免疫システムのさまざまな働きに影響を及ぼします。あるものは活性化を促し、たとえば白血球を刺激してその殺傷力を高めたり、白血球を問題部位に引き寄せたりします。また、あるものは活性を抑えて免疫反応を終結させます。インターフェロンはサイトカインの1つでウイルスの増殖を抑えます。サイトカインは特異免疫にも重要な役割をはたします。

A-8. 獲得免疫(特異免疫)とはなんですか。

獲得免疫(特異免疫)とは、生まれた時には備わっておらず、後天的に獲得される免疫です。免疫システムは新しい抗原に出会うたびに、それぞれの抗原ごとに攻撃方法を習得します。このタイプの免疫が特異免疫と呼ばれるのは、過去に遭遇した抗原に対し、その抗原1つ1つに限定して攻撃をするからです。特異免疫の優れたところは、学習し、適応し、記憶する能力にあります。体が新しい抗原に接しても、特異免疫ができるまでには時間がかかります。しかし、こうしてできた特異免疫は記憶されるので、同じ抗原に対するその後の反応は、非特異免疫に比べて素早く行われ、効力も高まります。特異免疫に関与する最も重要な白血球はリンパ球です。マクロファージや樹状細胞はTリンパ球に抗原がどんな抗原か教える抗原提示細胞として自然免疫と獲得免疫の橋渡しをします。抗体、サイトカインの他,抗体の有効性を高める補体系などの物質も関与しています。

A-9. 特異免疫(獲得免疫)にはたらく細胞や物質にはどんなものがありますか

特異免疫に働く細胞で最重要なものはリンパ球です。

  • 免疫システムは、リンパ球の働きによって抗原を記憶して、異物(非自己)と自己とを区別します。
  • リンパ球は必要に応じて血流、リンパ系、各種組織を巡ります。
  • リンパ球は何年も、場合によっては何十年も生きるため免疫システムは過去に遭遇したあらゆる抗原を記憶できます。
  • リンパ球は、過去に遭遇した抗原に再会すると、その特定の抗原に素早く活発に反応します。この特異免疫反応があるために水ぼうそう(水痘)やはしか(麻疹)は、1度かかると2度とはかかりません。また病気によっては予防接種で発病を予防できます。

特異免疫に関与するリンパ球にはBリンパ球(B細胞)Tリンパ球(T細胞)があります。

  • Bリンパ球(B細胞)は、骨髄の造血幹細胞からつくられて骨髄で成熟して末梢血液に出されます。
  • Bリンパ球は、表面に受容体と呼ばれる特別な部位をもち、そこで抗原と結合します。
  • Bリンパ球が抗原と出会うと、抗原は受容体と結合しBリンパ球を刺激して形質細胞に変えます。
  • 形質細胞になると抗体を盛んにつくりはじめます。
  • 1つの形質細胞は1種類の抗体を産生します。これらの抗体は循環血液中に分泌されて、刺激を受けた抗原に特異的に反応します。
     
  • Tリンパ球:(T細胞)も骨髄の造血幹細胞からできます。
  • その後,胸腺で自己と異物との区別の仕方を学びます。
    • 胸腺では自己識別分子に寛容な(=自分の標識をもった細胞を攻撃しない)Tリンパ球だけが成熟し胸腺を離れることができます。このトレーニングの過程を通過しないと、Tリンパ球は自分自身の細胞と組織を攻撃してしまいます。
  • Tリンパ球は脾臓などの2次リンパ系器官、骨髄、リンパ節で成熟し保存されます。
  • 成熟Tリンパ球は、血流やリンパ系をぐるぐると巡回し、細菌や、ウイルスに感染した細胞のような、ある種の異物細胞や異常細胞を探し出して攻撃します。
  • Tリンパ球には以下のような、いくつかの異なるタイプがあります。
    細胞傷害性(キラーまたはサイトトキシック)T細胞(注:ナチュラルキラー細胞とはちがいます)
    異物細胞や癌細胞や感染細胞など異常細胞に出会うと、それらの細胞に抗原があるのを認識して結合して細胞膜に穴を開け、内部に酵素を注入して殺す。CD8という蛋白を表面にもっています。
    ヘルパーT細胞
    Bリンパ球が異物抗原を認識し抗体をつくるのを助けたり、細胞傷害性(キラー)T細胞が異物細胞や異常細胞を殺すのを助けたりします。 CD4というタンパク質を表面にもっています。

樹状細胞

  • 樹状細胞は、単球から発達してでき、主に組織内に存在します。
  • 樹状細胞は、抗原を取りこんで断片に分割し、他の免疫細胞が抗原を認識できるようにします。この作用を抗原処理と呼びます。
  • 樹状細胞は、感染部位や炎症部位でサイトカインに刺激されて成熟します。そして組織からリンパ節に移行し、抗原の断片を特異免疫反応を起こすTリンパ球に提示します。

抗体

  • 抗体は他の免疫細胞が抗原を捕食するのを助けたり、細菌がつくる有毒物質を不活性化したり、細菌やウイルスを直接攻撃したりして体を守ります。
  • また、抗体は補体系を活性化します。
  • ある種の細菌感染では、抗体はその撃退に不可欠な働きをします。

A-10. 抗体とはなんですか、どんな種類がありますか

Bリンパ球から分化した形質細胞によってつくられ、特定の抗原と反応するタンパク質で免疫グロブリンあるいはIg(英語のImmunoglobulin=免疫グロブリンから)とも呼ばれます。

Bリンパ球が抗原に出会うと、刺激を受けて成熟し形質細胞となり抗体をつくります。抗体は他の免疫細胞が抗原を捕食するのを助けたり、細菌がつくる有毒物質を不活性化したり、細菌やウイルスを直接攻撃したりして体を守ります。また、抗体は補体系を活性化します。ある種の細菌感染では、抗体はその撃退に不可欠な働きをします。

抗体分子は2つの部分から成り立っています。一方の部分は抗体ごとに違い、それぞれ特定の抗原にだけ結合します。もう一方の部分には5つの種類があり、それらの構造体の違いによって、抗体の種類がIgG、IgM、IgD、IgE、IgAのいずれかに決まります。つまり、この部分が同じである抗体は同種の抗体ということになります。

IgM: この抗体は、特定の抗原に初めて会ったときにつくられます。抗原との最初の出会いで起こる反応は1次抗体反応と呼ばれます。IgMは組織中ではなく血流中にあります。

IgG: IgGは、最もたくさんつくられている抗体で、特定の抗原に再会するとつくられます。この反応は2次抗体反応と呼ばれ、1次抗体反応より反応が早く、より多くの抗体をつくります。IgGは血流中と組織中の両方にあり、母体から胎盤を通じて胎児に移行する唯一の抗体です。新生児の免疫システムが自分で抗体をつくり出す時期まで、母体のIgGが胎児や新生児を保護します。

IgA: この抗体は、鼻、眼、肺、消化管などで、粘膜で覆われた体表面から微生物が侵入するのを防ぐ働きをします。IgAは血流、粘膜でつくられた分泌物や母乳中にあります。

IgE: IgE抗体は、急激なアレルギー反応の引き金となる。IgEは、血流中にある白血球の1種である好塩基球や組織の肥満細胞と結合します。IgEと結合した好塩基球や肥満細胞がアレルゲンと呼ばれるアレルギー反応を引き起こす抗原に出会うと、ヒスタミンなどの物質を放出し、それにより炎症を引き起こしたり周辺組織にダメージを与えたりします。このように、抗体の中でIgEだけは、ときにはむしろ有害に働くことがあると考えられていますが、開発途上国にみられるある種の寄生虫感染症に対しては、防御を助勢します。

IgD: IgD抗体は血流中に少量あります。その機能はよくわかっていません。

A-11. 免疫反応はどのような流れで機能しますか

皮膚や粘膜を突破して侵入した異物に対して次の防御線には生まれつきそなわった自然免疫が働きます。この反応は侵入後数時間のうちに始まります。自然免疫の主役は好中球やマクロファージ、樹状細胞などの食細胞とよばれる細胞で、これらは血流にのって体内を巡り、組織に入りこんで微生物などの異物を見つけ出し、細胞の中に取り込んで酵素で破壊してしまいます。膿(うみ)は異物をとりこんで壊れて死んでしまった好中球の集まりです。マクロファージや樹状細胞は異物を貪食・破壊する以外にTリンパ球に異物の存在を伝える働きをします。またサイトカインとよばれる物質を分泌してTリンパ球の増殖活性化をおこないます。Tリンパ球はBリンパ球にはたらき抗体や補体タンパクという物質をつくらせます。これらの物質は細胞中ではなく、血液の液体成分である血漿のような体液に溶けこんで細胞外の異物を攻撃し破壊します。T細胞には食細胞の働きを助けたり、感染した細胞を壊す働きもあります。獲得免疫は感染数日後から働きはじめます。これはある異物専門に作用するリンパ球の増殖に時間がかかるためです。しかし免疫反応が終了し残ったリンパ球は記憶細胞として長く体内で生き続けるため再度の異物侵入にはすばやく対処ができるようになります。こうして獲得免疫が成立します。獲得免疫と自然免疫の大きな違いは獲得免疫がある異物に対して「その異物のみを相手にはたらく=特異的」ということです。

B. 免疫の病理

B-1. 予防接種の受動免疫と能動免疫とはなんですか

予防接種は、病気を起こす細菌やウイルスに対する抵抗力を高め病気を防ぐために行う。 予防接種には、

  • 能動免疫と
  • 受動免疫の
    2種類の方法があります。

能動免疫とは、ワクチンを使って獲得免疫を成立させて、感染を予防する方法です。ワクチンとは、感染力をもたない細菌やウイルスの断片、または感染を起こさないように弱毒化した細菌やウイルスがそのまま入っている製剤

ワクチンを接種すると、体の免疫システムはワクチンに含まれている細菌やウイルスまたはその成分を識別して攻撃する抗体や免疫記憶リンパ球をつくる。一度つくられた抗体や免疫記憶リンパ球は、次に同じ細菌やウイルスが体内に入ってくると、短時間のうちに増加して感染を防ぎます。ワクチンを接種することを免疫化と呼ぶこともある。積極的に免疫反応をおこさせることから能動免疫と呼ぶ。

受動免疫は、特定の感染性生物に対する抗体を直接注射する方法です。

  • 感染に対して免疫システムがうまく働かない人や、ワクチン接種前に感染してしまった場合(たとえば、狂犬病ウイルスが体内に入ってしまったとき)などに行われる。
  • 肝炎の汚染地域を旅行する前にガンマグロブリン(抗体製剤)を接種する場合のように、感染する可能性があるが一連の予防接種を受ける時間がない場合に行うこともある。
  • 受動免疫の効力が持続するのは数日から長くても数週間で、注入した抗体はやがて人体から排除される。
  • マムシ毒にたいする抗血清投与も受動免疫法です(馬の血清中の免疫グロブリンを投与する)

ワクチンにはさまざまな種類があります。10年に1度の追加接種が勧められている破傷風トキソイドや、小児の定期予防接種など一律に接種が行われるワクチン、アフリカや南アメリカの特定の地域を旅行する場合だけ接種する黄熱病ワクチンのような特殊なワクチン、犬にかまれたときに接種する狂犬病ワクチンのように感染のおそれがある場合だけに使うワクチンなどがあります。現在使われているワクチンは信頼性が高く、問題が起こることはほとんどありません。しかし、だれにでも必ず効果があるわけではなく、まれに副作用が起こることもあります。

B-2. 免疫システムの異常によりどんな病気がおこるのですか

免疫システムに異常が生じると、免疫不全、自己免疫、アレルギーなどの体に不利な現象をおこしてしまいます。

  1. 免疫不全:微生物などの侵入に対し適切な免疫反応を示すことができない
  2. 自己免疫疾患:自分自身に対し免疫反応を引き起こし組織を破壊してしまう。
  3. アレルギー反応:異物の抗原への正常な免疫反応が、自分の正常組織をも傷つけてしてしまう

「炎症」という反応もサイトカインなどの分泌により免疫反応が強くおこり組織が傷害された状態です。細菌などから身をまもるために免疫反応は大変必重要ですが、人の体にとっては「両刃の剣」となります。肺炎はいまでも高齢者死因の大きな原因です。

B-3. 免疫不全症とはどのような病気ですか

  • 免疫不全疾患では、免疫システムが正常に働かないことにより、感染症が起こったり、何度も再発したり、症状が重くなったり長びいたりします。
  • 免疫不全疾患にかかると、細菌、ウイルス、真菌のような外敵による侵襲や、癌(がん)細胞のような異常細胞の攻撃から体を守る免疫システムの能力が損なわれます。その結果、免疫機能が正常であればかからないような細菌、ウイルス、真菌による感染症や癌が発症します。
  • 免疫不全疾患には、出生時にすでに罹患しているもの(先天性、原発性)と、後年何らかの病気の結果などによって発症するもの(後天性、続発性)とがあります。
  • 先天性免疫不全疾患は、通常は遺伝性のもので、乳児期か小児期に罹患していることが明らかになります。
  • 先天性免疫不全疾患は70種類以上ありますが、いずれも比較的まれな病気です。むしろ後天性免疫不全疾患の方がはるかに一般的です。
  • 免疫不全疾患には、寿命が短くなるような病気もありますが、一生完治はしなくても生命には別状のないものもあります。治療により症状がみられなくなることもあれば、治療なしで消失することもあります。

B-3-1. 先天性(原発性)免疫不全症
免疫のシステムのひとつあるいは複数の要素が生まれつき欠けていたり、うまく働かないときに起こる病気です。- 特異免疫不全症ではTリンパ球あるいはBリンパ球に異常があります。

  • 非特異免疫不全症では免疫で非特異的に働く補体や食細胞の異常が見られます。 これらの患者さんは感染症にかかりやすく何度も感染を繰り返すことになります。
  • 免疫グロブリン、補体、食細胞の働きが悪い場合はある種の細菌におかされやすく化膿性感染をおこす
  • T細胞に欠陥のある場合は日和見感染(=環境中どこにでも存在し、正常の人にはすぐに抵抗力のできる微生物に感染して死亡する。真菌や水痘ウイルスなど)を容易におこしてしまいます。

B-3-2. 続発性免疫不全症
生まれたあと薬物、栄養障害、ウイルス感染などいろいろな原因によって免疫の働きがうまくいかなくなる病気です。HIVウイルスの感染によるエイズは主にCD4を発現するT細胞に感染しこれを壊してしまいます。

B-4. エイズ(後天性免疫不全症)はどんな病気ですか

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は、HIV-1とHIV-2という2種類のウイルスのいずれかによって起こります。HIVは白血球の1種であるCD4+ Tリンパ球を進行性に破壊します。リンパ球が破壊されると、体はさまざまな感染性生物の攻撃を受けやすくなります。死にも至るHIV感染症の合併症の多くは、HIV感染症自体によるものではなく、たいていの場合、こうしたさまざまな他の感染症によるものです。体内に発生する腫瘍細胞の除去もうまくいかなくなってカポジ肉腫などの悪性腫瘍をおこしやすくなります。 エイズAIDSと呼ばれる後天性免疫不全症候群は、HIV感染症の最も重い型です。HIVに感染していて、合併症が少なくとも1つ現れるか、CD4+リンパ球数の減少により感染に対する抵抗力が明らかに低下した場合には、エイズを発症したとみなされます。

HIVの感染経路には以下のものがあります。

  • 感染者との無防備な性的接触で、口、腟、陰茎、直腸の粘膜が汚染体液と接触した場合。
  • 輸血、注射針の回し打ち、HIVで汚染された注射針を誤って刺してしまうことなどによる汚染血液の注射、注入
  • 出産前、出産中、あるいは産後に母乳を通じて、感染した母親から子にウイルスが感染。
  • 医療従事者がHIVに汚染された注射針を誤って刺した場合、感染する確率はおよそ300回に1回です。
  • 針を深く刺した場合や、汚染血液を注射してしまった場合はリスクが高くなります。
  • 汚染体液が口や眼に入った場合の感染率は1000回に1回以下です。

こういった事故が起きたら、ただちに抗レトロウイルス薬の併用投与を行うことが勧められる。 感染のリスクを完全になくすことはできなくても、減らせることが可能。

HIVは職場、学校、家庭での軽い接触ではうつらないし、密接な接触でも性的な接触でなければ感染しません。感染者のせきやくしゃみから、あるいは蚊に刺されてHIVに感染した例は報告されていない。
感染した医師や歯科医から患者が感染するケースもきわめてまれです。

B-5. 自己免疫疾患とはどのような病気ですか

自己免疫疾患とは、免疫システムの機能が不良となって、体が自分の組織を攻撃してしまう病気です。 (自分の細胞は攻撃の的にしてはいけないのに攻撃してしまう状態) 正常な免疫システムは、自己と、非自己すなわち異物とを区別することができ、抗原と呼ばれる異物に対して反応します。細菌、ウイルス、その他の微生物、癌(がん)細胞などは、その細胞の中あるいは表面に抗原をもっています。花粉や食物の分子のように、それ自体に抗原性があるものもあります。しかし、免疫システムが機能不全を起こすと、自身の組織を異物と認識して、自己抗体と呼ばれる異常な抗体や免疫細胞をつくり、体内の特定の細胞や組織を標的にして攻撃してしまいます。この反応は自己免疫反応といい、炎症や組織の損傷を招きます。自己免疫疾患は種々あり、さまざまな細胞や組織が攻撃の対象になります。自己免疫疾患には遺伝するものもあります。病気そのものが遺伝するのではなく、自己免疫疾患に対する感受性(かかりやすさ)が遺伝します。感受性の強い人では、ウイルス感染や組織損傷のようなものが引き金となって疾患を発症します。多くの自己免疫疾患が女性に多くみられることから、ホルモンも関与していると考えられています。

主な自己免疫疾患 (→の細胞,組織を攻撃する自己抗体が出現する)
自己免疫性溶血性貧血 → 赤血球

水疱性類天疱瘡,天疱瘡→ 皮膚

グレーヴス病(バセドウ病),橋本甲状腺炎→ 甲状腺

1型糖尿病 → 膵臓のベータ細胞(インスリンをつくる細胞)

全身性エリテマトーデス(SLE) → 関節、腎臓、皮膚、肺、心臓、脳

重症筋無力症 → 神経と筋肉の結合部(神経筋接合部)

悪性貧血→ 胃粘膜の細胞、赤血球、白血球

B-6. アレルギーとはどういう病気ですか、免疫と関係ありますか?

アレルギー反応(過敏性反応)とは、通常は無害な物質に対する異常な免疫応答です。 正常な免疫システムは、抗体、白血球、肥満細胞、補体タンパクなどからなり、抗原と呼ばれる異物から体を守っています。しかし敏感な人の免疫システムは、多くの人にとって無害である抗原に対しても過剰に反応します。これがアレルギー反応です。ある1つの物質のみにアレルギーを起こす人もいれば、いくつもの物質に対して発症する人もいます。 アレルギー誘発物質(「アレルゲン」と呼びます)が皮膚や眼に付着したり、吸いこまれたり、食べものとして摂取されたり、注射されたりすると、アレルギー反応が起きます。干し草やブタクサ花粉のような物質に接することで引き起こされる花粉症のような季節性アレルギーもあります。薬やある種の食物の摂取、ほこりや動物のフケなどの吸引がきっかけで引き起こされるアレルギーもあります。

B-7. アレルギー(過敏反応)にはどんな種類がありますか

過敏反応は一般的に4つの型に分類されます。頻度はI 型とIV 型が多い。

I 型は,抗原(アレルゲン)が,組織の肥満細胞と血中の好塩基球と呼ばれる白血球の1種の膜に結合した特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体に結合する反応です。ほとんどのアレルギー反応では、免疫システムが最初にアレルゲンに接したときにIgE抗体がつくられ、好塩基球と肥満細胞とに結合します。最初の接触によりアレルゲンに感作されて過敏になりますが、この段階ではアレルギー症状は起こりません。その後、再度アレルゲンに接すると、表面にIgEをもつ細胞はヒスタミン、プロスタグランジン、ロイコトリエンのような物質を放出し、血管拡張,毛細管透過性の増加,腺の過分泌,平滑筋けいれん,好酸球とその他の炎症性細胞による組織の炎症を起こします。これらの物質は反応の連鎖を引き起こし、組織を刺激し続けて傷つけます。この反応の程度は軽度から重度までさまざまです。I型アレルギーは抗原と接触後約5〜15分で反応を生じるために即時型アレルギー反応ともいいます。 I 型アレルギーに含まれる病気は,アトピー性疾患(アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎,アトピー性皮膚炎,およびアレルギー性[外因性]喘息)と、じんま疹と胃腸管の食物反応のいくつか,そして全身性アナフィラキシーです。

II 型は抗体が細胞または組織の抗原成分と,あるいは細胞または組織に結合した抗原と反応して細胞を傷害する反応です。抗原抗体の反応は細胞傷害性T細胞またはマクロファージを活性化し,抗体に依存した細胞介在性傷害をおこします。 II 型アレルギーの病気にはクームス陽性の溶血性貧血,抗体誘導性の血小板減少性紫斑病,白血球減少症,天疱瘡,類天疱瘡,グッドパスチャー症候群,悪性貧血。不適合輸血を受けた患者,新生児の溶血性疾患,および新生児の血小板減少症や複合性の過敏性疾患(例,SLE)にもII 型アレルギーがかかわっています。

III 型は脈管または組織内の可溶性の抗体抗原複合体が組織に沈着することによっておこる免疫複合体反応です。ICは補体を活性化し急性炎症を誘発します。III 型アレルギーは 血清,薬物,またはウイルス肝炎抗原による血清病,SLE,RA,多発性動脈炎,クリオグロブリン血症,過敏性肺炎,気管支肺アスペルギルス症,いくつかの糸球体腎炎にかかわっています。

IV 型は,細胞性,細胞媒介性,遅延型,またはツベルクリン型の過敏反応で,特異的抗原との接触後感作したTリンパ球によって引き起こされます。循環する抗体は関与しません。 抗原と反応後12時間以後から症状が出現するために遅延型アレルギー反応とも言われます。IV 型反応は,接触性皮膚炎,過敏性肺炎,同種移植片の拒絶,細胞内寄生細菌による肉芽腫,ある種の薬物感受性,甲状腺炎,および狂犬病予防接種後の脳脊髄炎に関与していると考えられています。

B-8. アナフィラキシー反応とはなんですか

アナフィラキシー反応は、生命を脅かすほど重症化することがある、急性で広範囲にわたる即時型過敏アレルギー反応です。 アナフィラキシー反応の最も一般的な原因は

  • ペニシリンなどの薬
  • 虫刺され
  • ある種の食品
  • アレルゲン免疫療法(減感作療法)でのアレルギー注射など

しかし、原因となる可能性はあらゆるアレルゲン(アレルギー反応の原因となる抗原をとくにアレルゲンという)にあります。他のアレルギー反応と同じくアナフィラキシー反応は初めてアレルゲンと接触したときには発症せず、2度目の接触で発症します。しかし、多くの人は最初の接触を覚えていません。1度アナフィラキシー反応を起こしたアレルゲンは、予防策を講じておかないと、2度目以降の接触で再びアナフィラキシー反応を起こしてしまいます。アナフィラキシー反応の進行は速く、虚脱、呼吸停止、けいれん、意識消失が1−2分以内に起こります。ただちに救急処置が施されないと死亡します。

予防と治療
アナフィラキシー反応が生じたらただちにエピネフリンを注射します。過去にアナフィラキシー反応を起こしたことがある人は、いつでもすぐに処置できるように、常にエピネフリン自己注射用キットと抗ヒスタミン薬の錠剤を携行します。通常は、この処置で反応は治まります。それでも、重症のアレルギー反応だった場合には、病院の救急外来を受診して必要な精密検査と治療を受ける必要があります。完全に避けることのできないアレルゲン(虫刺されなど)にアレルギーを起こす人では、長期の減感作療法をおこないます。

エピペンTM http://www.epipen.jp/index.html (エピネフリン自己注射用キット)

B-9. 移植に免疫はどのようにかかわりますか

移植とは、生きている細胞や組織や臓器を人から人へ、または体の一部分をある部位から別の部位へ移し替える方法です。 移植の代表的なものが輸血で毎年、何百万人もの患者の治療に用いられています。また、臓器や組織も移植されます。組織や臓器の提供者をドナーといいます。ドナーは、生きている人の場合もあれば死んだばかりの人の場合もあります。生きているドナーによって提供されることが最も多い組織は、腎臓と、骨髄や血液から得られる幹細胞です。

ドナーの組織はレシピエント(=細胞, 組織を受け取る人)の組織と適合していることが望ましいといえます。適合していなければ、免疫システムが移植組織を異物として攻撃してしまうからです。この反応が拒絶反応です。医師はできる限りレシピエントの組織型に合う組織型のドナーを見つける努力をします。適合性が高ければ拒絶反応は軽減し、レシピエントの長期治療成績も向上します。

組織型は、細胞の表面にあるヒト白血球抗原(HLA)あるいは主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と呼ばれる分子によって決まります。人は1人ひとり固有のHLAをもっています。臓器の移植を受けると、レシピエントのT細胞は移植臓器の細胞のHLAが自己と異なることを認識し組織が異物であるというシグナルを発し免疫システムを刺激します。

輸血の場合は比較的簡単です。赤血球にはHLA分子が存在しません。赤血球の適合にかかわる抗原は赤血球表面のA、B、Rhという3種類の抗原にすぎないからです。一方、臓器移植では多数の抗原が関係してきます。
事前にドナーの組織に対し不適合な抗体がないか、レシピエントの血液を調べます。レシピエントの体は輸血、過去の移植、妊娠などの経験に応じて抗体をつくります。もしこれらの抗体があった場合には、重症の拒絶反応が即座に起こるので通常移植は行いません。

B-10. GVHD(移植片対宿主病)とはどのような病気ですか

輸血した血液製剤中のリンパ球が、拒絶されることなく受血者(レシピエント)の体内で増殖し受血者の諸臓器を非自己と見なして攻撃するために起こる病態をいいます。

  • 通常供血者のリンパ球は、受血者の体内で拒絶反応により増殖することはないが、特殊な条件のもとでは拒絶されずに生着してしまうことがあります。
  • 特に受血者が免疫不全状態の場合や
  • 受血者の供血者のHLAが非常に近似している場合(近親者など)は拒絶されず増殖して臓器障害をおこします。
  • 重症の輸血副作用の一つで、輸血後約2週間程度の経過の後に、発熱,汎血球減少,肝機能障害,紅皮症,下痢等の重篤な症状を来して大部分は早期に死亡してしまう

GVHDの防止策 

  • 近親者間の輸血を避ける(今は近親者間の輸血はほとんど無い)
  • 新鮮血(採取4日)を避ける(今では日赤の4日以内の供給血はない)
  • 輸血前に、リンパ球を放射線照射(15Gy〜)して不活性化させる
  • 全血輸血より成分輸血がのぞましい
  • 頻回輸血・大量輸血時には、白血球除去フィルターの使用がのぞましい

白血病など悪性腫瘍患者さんに行う造血幹細胞移植(骨髄移植)の場合,とくにHLAを適合させるためGVHDは発症することが多いのです。

  • ただし白血病をはじめ悪性腫瘍の場合はGVHDが生じることで、ドナーの白血球が体に残っている腫瘍細胞を攻撃してくれるという効果も知られています。

拒絶反応とGVHD(移植片対宿主病)の違い

拒絶反応入れられた白血球が受血者(レシピエント=宿主)に破壊される 

GVHD−入れられた白血球が受血者(レシピエント)を乗っ取り破壊する(逆拒絶といえます。)


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Last-modified: 2014-08-29 (金) 12:41:21 (2647d)