PathologyAtlas
Acute monoblastic/ monocytic leukaemia 急性単芽球性白血病と急性単球性白血病 †
- WHO分類では, Acute monoblastic/ monocytic leukaemia(AMoL)は AML-NOSの一型とされる.
- 急性単芽球性白血病Acute monoblastic leukemiaはFAB分類のM5aに相当する
- 急性単球性白血病Acute monocytic leukemiaはFAB分類M5bに相当する
- WHO2016新分類ではM5aとM5bの形態学的サブグループの分類はおこなっていない
M5a, M5b
いずれも単球系細胞にコミットメント(系統が決定)した前駆細胞レベルの白血病化と考えられる
急性単芽球性白血病と急性単球性白血病の病理 †
Acute monoblastic/monocytic leukaemiaは生物学的に多様な疾患のグループであり以下の白血病を含む
- 11q23関連白血病---> KMT2A;lysine methyltransferase 2A遺伝子の異常(以前の名前は MLL)
- t(8;16)(p11;p13)と顕著な血球貪食像(特に赤血球貪食)を伴なうAcute monocytic leukaemia
- 現在のところは特異的な細胞/分子学的な異常がとらえられていない多くの白血病; AML-NOS FAB-M5a and M5b
FAB分類
myeloblast + monoblast + promonocytesが≧30% を占める
SBB+ / MPO+ の顆粒球系cellsは<20% である
nonspecific esterase positive cells>80%:80%以上の細胞は非特異的エステラーゼが陽性です
monoblast predominate in M5a :単芽球優位なのはM5a
promonocyte predominate in M5b :前単芽球が優位なのはM5bです。末梢血は単球が増加
WHO分類(ICD-O code 9891/3)
白血病細胞の≧80% が単球系の細胞でmonoblast+promonocyte+monocyteから構成される
<20% はneutrophilic lineageが占めてもよい(SBB+/MPO+)
単球系白血病細胞のほとんど(>80%のことが多い)が単芽球であるタイプ
=> acute monoblastic leukaemia
単球系白血病細胞のほとんどがPromonocyte(前単球). 末梢血は単球
=> acute monocytic leukaemia
急性単芽球性白血病(FAB-M5a) †
単芽球の形態(骨髄スメア標本):
やや大型, N/C比は小, 核は類円形あるいは脳回状(convoluted:渦巻き状の,回旋状の,曲がりくねったの意)で細胞質の中央部に位置し核網は繊細, 1-3個の明瞭な核小体が見られる. 細胞質は淡灰青色でゆったりとして豊か. 一部の芽球細胞質に微細なゴミ様のアズール顆粒を見ることがある. 細胞膜が偽足様突起をもつものあり.
Auer小体はきわめてまれ
(クリックで大きな画像が見られます)
前単球 promonocyte; 核は不規則なくびれや脳回様陥入(cleaved )をともなって形状は不整.細胞質は単芽球よりも青みがやや弱く, 多数のアズール顆粒をもつ. 空胞も認められる
M5a
Bone marrow clot section:
この標本では貪食像が顕著でStarry-Sky appearanceを示しています。(May-Giemasa)
Acute monoblastic leukaemia, AML-M5(FAB-M5a) †
Case01 骨髄組織病理 †
IWT case yo male.
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ASD-Giemsa | ASD-Giemsa |
ASDに染まらない, 異常細胞の密な増殖がある. 核クロマチンは繊細. 核小体が1-2個認められる細胞が多い. 類円形/長円形核が見られる他, 切れ込みのある核, 勾玉状, ねじれのある核が認められる.
細胞質は好塩基性, N/C比大の細胞の他, 比較的広い細胞質をもつ細胞も認められる. はっきりした骨髄芽球とは印象の異なる細胞. リンパ腫細胞のようにも見える.
芽球増多の中に結構多くのMgkや, 形質細胞の混在がある. Mgkには小型Mgkや, 低分葉, 分離核Mgkなど異形成を示す細胞があるようです.
phenotype:
単芽球 monoblastsは CD34に染まらない(Mgkが淡く染色されている). CD117(C-KIT)が単芽球にCD34よりも良くそまると記載する教科書もあるが, 本例ではごく少数の芽球細胞が陽性を示すのみであった.
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CD34 | CD117 |
CD34, C-KIT いずれも腫瘍細胞は陰性を呈する. MPO(Naphtol-ASD-CAE染色で代用可)とlysozymeを染色し, 陽性陰性細胞を比べ, MPO+ << lysozyme+ が参考になる.
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CD33 | CD163 | CD68, PG-M1 | CD68 KP-1 |
CD33はびまん性に陽性. CD163, CD68 クローンPG-M1, KP-1が多くの細胞に陽性を示している. MPOは陰性であった.
骨髄細胞所見/ 末梢血細胞所見
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BM smear, May-Giemsa | BM smear, May-Giemsa | 末梢血 smear, May-Giemsa |
Case02 骨髄組織病理 †
IWT case yo male
Acute monocytic leukaemia, AML-NOS M5 (FAB-M5b) †
Case03 骨髄病理組織 †
IWT case 40歳代後半 female
37℃台の発熱, 上肢の掻痒感がある紅斑が出現. 近医を受診し投薬を受けたが, 倦怠感が持続し食欲がなく1週間で体重が7kg減少した. 2週間後に歯肉腫脹が出現する. ふらつきが強くなり再受診. 汎血球減少あり紹介受診となる.
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HE | HE | HE | Naphtol-ASD-CAE-Giemsa |
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BM smear x60 | BM smear x60 | BM smear x60 |
細胞化学染色Cytochemical Stains===>細胞化学技術についての解説
非特異的エステラーゼ染色 †
非特異的エステラーゼ染色 スメア標本にのみ有効で, 骨髄組織には適応できない.
- alpha-Naphtyl-acetate esterase (ANAE)
単球と巨核球が種々の程度に強く染色される. 単球はびまん性に,巨核球は点状に染まる
顆粒球系細胞にも染まることがあるが,ごく弱く染まるだけ
- alpha-Naphtyl-butylate esterase (ANBE)
フッ化ナトリウム(NaF)は単球エステラーゼの染色性をほぼ消失させる
単球系細胞はNaF-inhibitedである.
臨床的特徴 †
M5a(単芽球性白血病)
- 全AMLの5-8%を占め全年齢層に発生するが若年者の発症が多い
- 小児M5aは11q23の異常を伴い著明な白血球増加を示すことが多く予後不良因子である
M5b(単球性白血病)
- 全AMLの3-6%を占め成人に多く(中央値49歳), 男女比は1.8:1と男性に多い
臨床症状
- AML-M5aもM5bもいずれも通常急激な臨床経過をとる. M5では出血傾向を訴える患者さんが多い
- M5ではt(8;16)の症例だけでなく, 凝固線溶異常を伴うことが多く寛解導入時に出血,血栓症状の有無や凝固線溶パラメータを十分に評価して支持療法をおこなう必要がある
- 単球系細胞には多くの凝固線溶に関与する物質が知られておりDICのみでなく一次線溶亢進がおこっている可能性もある
- 歯肉腫脹, 皮疹, 肝脾腫が比較的多くM5腫瘍細胞の組織浸潤力が強いことが原因と考えられる. 髄外腫瘤の形成も高頻度におこる
- 小児 M5は11q23の異常を伴い著明な白血球増加を示すことが多くM5と診断されること自体がもっとも予後不良因子となる. 成人M5でも白血球増加を伴なっていることが多い
- 血中,尿中リゾチーム活性はM4と同様に高値をしめす. 特にM5bはリゾチーム高値となる
t(9;11)(p22;q23): MLLT3-MLLを伴う急性白血病
- どの年齢にもおこるが, 小児に多く小児AMLの約10%を占める. 成人の白血病としてはごく一部でまれ.
- FAB分類では, AML-M4またはM5の形態をとることが多い.
- DICを起こしやすく, 髄外性腫瘤形成や皮膚, 歯肉浸潤を伴うことも多い.