TET2 mutation

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高齢者におけるクローン性造血の発見と変異遺伝子

 

加齢関連性クローン造血(ARCH; age related clonal hematopoiesis)

  • 1980年ごろから, 女性X染色体の父親由来, 母親由来の2本のアレルは1:1ではなく, 不均一に不活化されており偏りが見られることが認識されていた.(X inactivation skewing(XIS)とよばれる).
    Busqueらは, XISが, 健常者にも存在する弱い選択圧をうけ, 緩徐に拡大するクローンを観察したものであり加齢にともなう造血器腫瘍の発生と関連するのではないかと考え,
    加齢関連性クローン造血(ARCH; age related clonal hematopoiesis)と呼ぶことを提唱した*1
     
  • 2012年には, XISの認められた健常人クローン造血を含む検体の解析から, TET2の変異が高率に検出された*2. TET2はMDSのドライバー変異の一つとして知られている.
     
    次いで加齢に伴うクローン性造血と体細胞性変異についての大規模な解析がWashington大学のWelch*3や(2012), 同じくXie*4ら(2014)により行われ,
  • 加齢に伴い健常人集団においてもクローン性造血が認められる個体が認められた.
     
  • 加齢に伴うクローン性造血はDNMT3A, TET2, ASXL1, SF3B1などMDSのドライバー変異標的遺伝子に変異が出現することを明らかにした.

CHIP(clonal hematopoiesis of indeterminate potential)

  • 高齢者(>65-70歳以上)の約10%においては主にDNMT3A, ASXL1, TET2遺伝子体細胞変異が存在し, MDS/AML発症と強く関連している(2014年 Harvard Uni.の2つの論文)

1. 血液疾患,がんいずれにも罹患していない12,380例の末梢血DNAを全エクソームシークエンシング. 体細胞遺伝子変異をもつ片側アレルに変異を有する分画を検出, その読み(read)から定量化.(Genovese et al.)*5

  • 65歳以上の集団では10%以上のヒトが体細胞突然変異をもつ微量ないし少量のクローンを保有していた.一方50歳以下の集団ではその割合は, 1%未満であった。
     
  • 検出可能な変異片アレル分画をもつヒトに, 最も高率に見られた以上はDNMT3A, ASXL1, TET2であった.
     
  • 高齢者集団に存在する, このようなクローン分画は, その後の造血器腫瘍の発症と強く関与している.(ハザード比12.9, 95%信頼区間5.8-28.7). 変異片アレルをもつヒトはおおむね42%の確立で造血器腫瘍の発症にいたる。
     
  • このような変異クローン分画はMDS/AMLの準備状態にあり, DNMT3A, ASXL1, TET2の変異が造血器腫瘍発生のもっとも初期におこる現象で, initial driver mutationと考えられる.
     

2. 加齢とともに増加する造血器腫瘍に検出される特定遺伝子の反復性(recurrent)体細胞変異は, まだ血液腫瘍を発症していない一般集団においても見出されるのではないか?(Jaiswal et al.)*6

  • 17,182例の末梢血DNAの全エクソームシークエンス, COSMICの骨髄系, リンパ系腫瘍データで過去にSNP(single nucleotid variant)異常, 挿入, 欠失の知られた160の遺伝子を調査.
     
  • 40歳以下の集団は体細胞変異をもつクローン検出率はきわめて低かった.
     
  • 年齢とともに検出率は上昇し, 70-79歳(9.5%: 219/2,300), 80-89歳(11.7%: 37/317), 90-108歳(18.4%: 19/103)であった。
     
  • クローン性変異の大部分はDNMT3A, ASXL1, TET2の3遺伝子変異に集中していた.
     
  • クローン性変異をもつ集団はハザード比11.1(95%信頼区間1.4-4.8)でMDS/AMLを発症した。
     
    加齢に相関した異常クローン性造血は通常の現象であり, 造血器腫瘍および全死因死亡率とも関連している.
     

3. 論文1,2の先駆的論文

  • X染色体賦活化によりクローン性造血が観察できた骨髄性腫瘍のない高齢者においてTET2変異が特異的に見出され, DNAメチル化に関与していた.(Moran-Crusio M et al.)*7
     

加齢によるクローン性造血(ARCH/CHIP)における変異と造血器腫瘍の体細胞変異には顕著な重複があり, これらの関連を強く示唆しているが,
各年代の造血器腫瘍発症率はクローン性造血の頻度よりはるかに少なく, クローン性造血を示す個体がすべて実際の腫瘍を発症するわけではない.

  • 健常人集団では, DNMT3A, TET2, ASXL1, SF3B1などの変異が高率に認められる一方, IDH1, NRAS, RUNX1, NPM1, GATA2, STAG2, WT1などの変異は非常にまれにしか発現しないことが確認された.
     

原因不明の血球減少を示す症例で40個の遺伝子をシークエンスしMDSと診断された症例で陽性になった変異を確認する(Malcovati, et al)*8と,

  • 変異をもつ細胞のクローンサイズが ≧ 20%, 複数の変異をもつ場合はMDSと診断される陽性的中率が高い(≧0.86)
     
  • スプライス因子の変異あるいは, TET2, DNMT3A, ASXL1がもう一つ別の変異を合併すると的中率が高い(0.86-1.0)
     
    これから, 加齢に伴うクローン性造血がさらにドライバー変異を獲得するとMDSへ進展することが推察された.

白血病進展と関連するクローン性造血

MDSが高率にsecondary AMLへ進展する原因を調べるために, 病期進展に関わるクローン性造血の進化や責任遺伝子変異はどうなっているのか?*9

  • 多数例の集積とそれぞれの病期におけるドライバー変異の頻度が比較され, sAML進展に重要な役割を果たす遺伝子を抽出, 122例で複数の時系列の検体を用いて各ドライバー変異の臨床的意義を調査
  • 病期の進行にしたがいクローン性造血に蓄積する変異遺伝子の多様性が増加, そのクローンサイズも増大した.

病型が進行する際にどの遺伝子が重要となるのか?2250例のMDS, sAML症例の標的遺伝子シークエンス結果を過去の症例を含めて解析*9

  • sAMLではFLT3, PTPN11, WT1, IDH1, NPM1, IDH2, NRASの変異が有意に高頻度に認められた.(type1変異と定義されている)
  • これらtype1変異がsAMLへの進展に最も関与していることが示唆された.
  • low-grade MDSとhigh-grade MDSを比較するとtype1変異のIDH1とNRASに加えて, GATA2, KRAS, TP53, RUNX1, STAG2, ASXL1, ZRSR2, TET2, についてhigh-grade MDSにおいて変異が有意に高くみられた.(p53は免疫染色で検出できている)
  • high-grade MDSへの進展に関わる8遺伝子をtype2変異と定義されている.
  • type1変異はすべての症例の時系列解析において, クローンサイズが最も著明に増加し, 変異が消失することは非常にまれ.
  • 2回目のサンプリングでhigh-grade MDSであった症例では90%にtype2変異の獲得とクローンサイズ増加が認められた.

type1変異はsAMLへの進展の際に獲得される. type2変異陽性クローンはsAMLへの進展前にすでに獲得され進展後にも保持され続けている.

  • type1変異+の症例は, type1変異-, type2変異+の症例に比較してsAMLへの進展期間が有意に短い
  • type1変異-, type2変異+の症例はいずれの変異も陰性症例にくらべ, sAMLへの進展期間が有意に短かった.

*1  Busque L, et al. Nonrandom X-inactivation patterns in normal females: lyonization ratios vary with age. Blood. 1996 Jul 1;88(1):59-65.PMID:8704202.
*2  Busque L, et al. Recurrent somatic TET2 mutations in normal elderly individuals with clonal hematopoiesis.Nat Genet. 2012 Nov;44(11):1179-81. PMID:23001125
*3  Welch JS, et al. The origin and evolution of mutations in acute myeloid leukemia. Cell. 2012 Jul 20;150(2):264-78.PMID:22817890
*4  Xie M, et al. Age-related mutations associated with clonal hematopoietic expansion and malignancies. Nat Med. 2014 Dec;20(12):1472-8.PMID:25326804
*5  Genovese G, et al., Clonal hematopoiesis and blood-cancer risk inferred from blood DNA sequence. N Engl J Med. 2014 Dec 25;371(26):2477-87.
*6  Jaiswal S, et al., Age-related clonal hematopoiesis associated with adverse outcomes.N Engl J Med. 2014 Dec 25;371(26):2488-98.
*7  Moran-Crusio K et al., Tet2 loss leads to increased hematopoietic stem cell self-renewal and myeloid transformation.Cancer Cell. 2011 Jul 12;20(1):11-24.
*8  Malcovati L, et al Clinical significance of somatic mutation in unexplained blood cytopenia. Blood. 2017 Jun 22;129(25):3371-3378. PMID:28424163
*9  Makishima H, et al. Dynamics of clonal evolution in myelodysplastic syndromes. Nat Genet. 2017 Feb;49(2):204-212.PMID:27992414

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Last-modified: 2019-05-16 (木) 13:53:06 (64d)