T細胞

CD44

CD44は細胞-細胞, 細胞-細胞間基質(ECM;extra cellular matrix)を接着させる接着分子のひとつで他に類縁のない特殊な分子である.

多様性に富む分子

  • 20のexonから選択的スプライシングにより多種類の産物ができる多様性の著しい分子である
  • CD44と,その変異群であるCD44R(=CD44v, etc)とに大別できる
  • CD44のstandard formは341aa(amino acid)からなる37kDa分子に糖鎖が加わって分子量80-95kDaとなる
  • CD44はCD44S(standard form),CD44H(hematopoietic form),gp90-Hermes, Pgp-1, H-CAM, ECMRなどのsynonimがあるが,No5 CD workshopでCD44に決めた.
  • 糖鎖に富みヒアルロン酸に結合するLinkファミリータンパク質に属する(このファミリーの代表は骨のプロテオグリカンLinkタンパク)
  • CD44細胞外248aaのN末端92aaはLinkスーパーファミリーと呼ばれる
  • Linkスーパーファミリはラット軟骨のプロテオグリカンLinkタンパク質や軟骨特異的プロテオグリカンコア蛋白質などと30%のホモロジーがあり機能上もヒアルロン酸に結合する共通性がある

CD44の構造

CD44structure01.jpg
  • CD44の遺伝子は20のエキソンからなる(初期文献では19 exonsであるが、エキソン6aと6bはexon 6と7に再分類され、全部で20 exonsとなった)。;NCBI:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/960では, exon count 21とされている(2017,March現在)
  • ヒト第11染色体の短腕(11p13)上にCD44をコードする単一遺伝子が存在し、20 exonsのうち12の選択的スプライシングから多数のmRNA転写産物が同定されている。
  • 標準的で最も広範に存在するCD44(CD44sと名付けられている)はexon1-5、16-18、と20によってコードされるタンパク質からなる。この型はまた造血細胞で主要な型なので、CD44s(standard)はまたCD44Hとしても知られている。
  • CD44sは細胞外ドメイン(exon 1-5と16)、高度に保存された膜貫通ドメイン(exon 18)と細胞質ドメイン(exon 20)からなる。
  • ヒトCD44sのmRNAの1482bpの読み枠は〜37kDaのポリペプチド鎖の翻訳産物となる。N結合型とO結合型糖鎖の翻訳後修飾により最終のCD44タンパク質はSDS-PAGEで〜85kDaの分子量になる。
  • CD44分子にはN結合糖鎖部位,O結合糖鎖部位,それにコンドロイチン硫酸結合部位が複数あり糖鎖に富む構造をしめす. 膜貫通部に続く細胞内部分にはリン酸化されるセリンがあり,またアンキリンを介してアクチンと結合,細胞の運動(癌細胞の転移)に関与している

異なったエクソンの異なる組み合わせによって、無数のCD44アイソフォームが形成される可能性がある。

  • 細胞外ドメインにはヒアルロン酸との結合で主要な役割を果たす領域とエクソンの選択に使われる領域がある。
     
  • 膜貫通ドメインはよく保存されており、細胞内ドメイン(エクソン20)には、細胞骨格およびシグナリングタンパク質と相互作用する能力のあるタンパク質モチーフを持つ。
     
  • 他の膜貫通型糖タンパク質と同様に、CD44アイソフォームはグリコシル化やリン酸化などの多くの翻訳後修飾を受ける。CD44は、ヒアルロン酸レセプターである時もあれば、シグナリングに関与する時もあり、アクチン細胞骨格の再構成に関わることもある。つまり、CD44はドッキングタンパク質や補助レセプターとしてだけでなく、核内転写因子としても機能することができる*1

局在

  • CD44は赤血球をふくむ血液細胞,消化管,筋肉,皮膚,神経系など広範に発現する.どこにでも発現しているといってよいが発現量に差がある
  • T細胞や血液幹細胞では機能により発現量が変化している
  • 膵液を分泌する膵腺房および, 副腎,卵巣には発現していない

CD44の機能

1.T細胞のホーミング

  • High endothelial venules(HEV)にT細胞がとりこまれるには活性化T細胞でなければ取り込まれない
  • リンパ節HEVに発現したCD44にヒアルロン酸が結合,これにT細胞のCD44が結合すると内皮細胞側のCD44細胞内部分が活性化されてT細胞を取り込むとされる
  • CD44はホーミングの一部を受け持っている.
  • ホーミングに関係する分子(ホーミングレセプターと呼ばれる)は
    • T細胞側---CD62L, CD11a/CD18, CD49d/CD28, integlinα4β7など
    • HEV内皮細胞側リガンド---CD34, CD54(ICAM-1), CD106(VCAM-1), フィブロネクチン

2.Th1, Th2細胞, CTL, NK細胞を活性化する

3.幹細胞の増殖と分化;ヒアルロン酸をもつ骨髄・胸腺ストローマ細胞とCD44をもつ幹細胞が接着すると活性化され増殖分化する

4.組織の形成にかかわる

CD44R

  • CD44cDNAの19exon中10exonが選択的スプライシングをする.理論的には2*10=1024通りがあるが実際16種類のイソフォームが発見されている
  • CD44RにはCD44v(variant),CD44E(epithelium),CD44R1, CD44isoformなどの別名があるが,CD44v4-7やCD44v3v8-v10などのようにスプライシングパターンでの表記が推奨される
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  • CD44の複数のisoformは、その大きさが80〜250kDaにおよび、それらはCD44の細胞外ドメインのいわゆる"可変"exonの選択的スプライシングによりおきる
  • v1- v10と名付けられた可変exonであるexon 6-15の選択的スプライシングにより、発現されたレセプターは大きくなり、それによっておそらく, 機能のいくつかが調節されるのであろう。たとえば、CD44 v 6-7を発現する遺伝子導入株はヒアルロン酸と同様コンドロイチン硫酸に結合するようになる。
  • 可変アイソフォームの命名は, ある研究の特別な領域ではエピカン, 記述的な名前であるgp116(内皮細胞で見つかったCD44v10)など使用者になじんだ名前を持っているが、可変ナンバーが表記された名前であるCD44v(この場合、"n"はたとえばCD44v7-9などのように可変エキソンが挿入されていることに相当する)のような表記が推奨されている。
  • CD44v3(エピカン)のようにCD44の可変アイソフォームのいくつかは、コンドロイチン硫酸またはヘパラン硫酸グリコサミノグリカン鎖を受容するセリン/グリシン配列をもちCD44をプロテオグリカンへと変換する。グリコサミノグリカン合成が開始される可能性のあるセリン/グリシン配列は他にもCD44HとCD44v10にもあるが、exon 8(variant exon3)の配列にのみGAG鎖が見つかっている。
  • CD44のもう一つの選択的スプライシングは細胞内ドメインに存在する.
    エキソン19または20はともに選択的スプライシングにより異なる発現をし、分子の細胞内の"しっぽ"に2種の変異体を生み出す.
  • エキソン19の5’末端はエキソン20と1塩基対のみの違いがあるが、この違いによりポリペプチド鎖合成の終止コドンが出現し、細胞内ドメインが4アミノ酸に切りつめられた分子が発現される. このように、エキソン20の代わりにエキソン19を含む選択的スプライシングを受けたmRNAは”しっぽの短い”CD44タンパク質を生み出す.
  • このCD44アイソフォームは細胞内シグナル伝達モチーフと細胞内骨格系分子との相互作用に必要なタンパク質ドメインを欠いていることから、その役割に関していろいろなことが考えられる。ほとんどの細胞でexon 19の発現は比較的まれであるが, CD44exon19のmRNA転写産物がCD44s(CD44exon20)の転写産物も同時にヒト軟骨細胞に発現されていることが見いだされている.

リガンド

  • CD44はヒアルロン酸と結合する
  • CD44Rはヒアルロン酸との結合性は失われV3のヘパラン硫酸付着配列SGSGを介してbFGFやEGFなどのサイトカインが結合する
  • V6には血液型H抗原がある.H抗原はA,B型抗原から非還元末端糖を除いたO型抗原と同じもので腫瘍細胞では増加する

局在

  • 上皮系--基底層と皮膚腺にV-9あり,V-4,V-6はない
  • CD44v8-v10は皮膚型CD44といわれ皮膚に出現する
  • マイトーゲン,TNF-α, IFN-γなどで刺激したT細胞には一時的にV-4,V-6が発現することあり

CD44RアイソフォームははECMに対する接着にかかわるのでがん細胞の転移と無関係とはいえない

癌細胞のCD44

  • 乳癌,大腸癌では正常組織にくらべてCD44R(V5-V10)が増加している(原発巣と転移巣に差はない)
  • 乳癌ではV6の発現は予後が悪いという報告あり
  • Non-Hodgkin's lymphomaでCD44Sの発現量は腫瘍の悪性度と比例するといわれている
  • ヒトmelanomaではヒアルロン酸を結合するCD44を発現する群が結合しないCD44Rを発現する群より急速に進展した
  • 最終的にCD44Rはさまざまな細胞にさまざまな形で発現し細胞により糖のつき方も変化している.正常細胞にも癌細胞にも分布し転移しやすい特性に該当する組み合わせは同定できなかった

リンク

GlycoforumのCD44についての詳しい解説--->1.Glycoforum 2.updateの解説

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*1  http://www.glycoforum.gr.jp/science/hyaluronan/HA10a/HA10aJ.html#top

添付ファイル: fileCD44structure01.jpg 643件 [詳細] fileCD44splicing.png 2447件 [詳細]

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Last-modified: 2017-03-18 (土) 09:41:52 (797d)