Thymus 胸腺

CD45

CD45タンパク質をコードする遺伝子は1q31.3-q32.1 に局在する protein tyrosine phosphatase, receptor type C (HGNCのofficial name) (Full lengthで1304aa=アミノ酸が1304個つながっているという意味)GeneID;5788

  • チロシンフォスファターゼ活性(EC3.1.3.48)をもつ I 型膜貫通蛋白。細胞外領域に多数の糖鎖結合部位をもつ。
  • スプライシングによりN末端側が変化したIsoformが9種類存在し、分子量も180〜220kDと幅があり低分子量のものはT細胞に、高分子量のものはB細胞に比較的多く分布する傾向がある。
  • Leukocyte common antigen(LCA)」とも呼ばれるが、モノクローナル抗体ではcloneにより認識するエピトープに違いがある場合は当然反応が異なることがあり、抗体によっては異なるcloneを混合したCocktail抗体もある。
    DAKOのモノクロナール抗体, clone;CD45RB (PD7/26)-->いむーの

CD45RA

CD45遺伝子の exon4(A),5(B),6(C)が alternative splicingにより欠失してできる variantの内、exon4(A)を有する分子量220kDのものは CD45RA(gp210/220)と呼ばれ、B細胞、単球およびT細胞の一部(ナイーブT細胞は、通常A領域のみを含むCD45RAを発現している.CD45RBも発現することあり.)などに発現する。

CD45RO

CD45遺伝子の選択的スプライシングによって exon4(A),5(B),6(C)の全てを欠く分子量180kDのものは CD45RO(gp180)と呼ばれ(ABO式血液型のO型と同様に本来の意味としてはRO[オー]ではなくR0[ゼロ]になる)、主にmemoryT細胞、単球・マクロファージ・好中球の一部に発現する。ホルマリン固定パラフィン切片でも反応する(実際には反応が弱いこともある)

  • 抗体としてclone:UCHL-1が非常に有名になったため、「UCHL-1」をCD45RO抗原の代名詞的に用いる人もいるが、「UCHL-1」は, まったく別の抗原の略号でも使用されているので注意。

protein tyrosine phosphatase, receptor type C(PTPRC)/ leukocyte common antigen (LCA)

Leukocyte common antigen(LCA); LY5; B220; CD45; L-CA; T200; CD45R; GP180(これはCD45RO)などの別名をもつ.

CD45の構造

Hermiston ML, et al.*1

CD45molecule.jpg

CD45はtypeIの糖タンパクで, 大きな細胞外ドメイン, 単一の膜貫通ドメインおよび, 2つ並列したPTPドメインからなるくさび様構造の細胞質内触媒部分をもつ受容体型タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP). (右図;CD45の構造)

  • PTPドメインは, D1とD2で, D1だけが酵素活性をもつ. C末端には79アミノ酸のtailがある.
  • 細胞外ドメインにはexon4,5,6の3つのexon(タンパクとしては, A,B,C)の異なるスプライシングにより, 多くのisoformが存在する.
  • 異なるスプライシングexonを含む, ほとんどのN末端では多数のO-結合型グリコシル化サイトが認められる. グリコシル化により高分子量のisoformにおいて細胞外ドメインの分子サイズと荷電(チャージ)が劇的に大きくなる. この変化に富むドメインに続いて, cystine-rich globular domainと3つのfibronectin typeIII ドメインがある.
  • cystine-rich globular domainと3つのfibronectin typeIII ドメインは多くのN-結合型グリコシル化サイトをもつ. グリコシル化による分子のサイズ, 荷電, glycanの構成は細胞のglycotransferaseによって変化し, 細胞の系列, 成熟, 活性状態により異なっている.
  • CD45を含め, 細胞表面タンパクの種々のグリコシル化は, レクチンとの多価相互作用や,これらが細胞表面に形成するmicrodomainとの相互作用に影響を与えると推察される. 次いで, 基質との結合を変化させ細胞刺激の応答を変えることになる.
  • 細胞外ドメインとは異なり, CD45の細胞質内部分は,解析された哺乳類間で高度に保存されている. 結晶構造において, 細胞内ドメインからC末端の79アミノ酸部分を引いたサイズは2.9Åになる.
  • phosphatase domainD1, D2の構造は, ほかのphosphataseでもほとんど同じで, αヘリックス構造に挟まれた9つの強くねじれたβシート構造から成る.
  • 近位のD1 PTPドメインのみが酵素活性を持つことが確認されている一方で,in vivoでは2つのPTPドメインがphosphatase機能を果たすために必要である.しかしながらD2ドメインの生理機能はまだよく解明されていない.
  • CD45遺伝子の選択的スプライシングによって exon4(A),5(B),6(C)の全てを欠く分子量180kDの分子は CD45RO(gp180)と呼ばれる. Oは本来null(=ゼロ)の意味.抗体としてUCHL-1が有名でリンパ球ではT細胞(胸線T、活性化Tなど), B細胞の一部に発現する.単球・マクロファージ・好中球にも陽性となるため注意(histiocytic tumorやgranulocytic sarcomaなどの症例)。

CD45の機能

 
CD45-TCRsignaling.jpg

CD45分子は大きな細胞外ドメインよりも細胞質内部のPTPドメインが重要. PTPは、TおよびB細胞抗原受容体シグナル伝達の必須レギュレーターであることが示されている。

CD45による制御は, 抗原受容体複合体の成分との直接的な相互作用を介して、または抗原受容体シグナル伝達に必要な種々のSrcファミリーキナーゼを活性化することによって機能する。

このPTPはまた、JAKキナーゼを抑制し、したがってサイトカイン受容体シグナル伝達の調節因子として機能する

CD45とTCRシグナル伝達

  • MHCによりTCRが刺激されると, CD4/CD8に結合しているLckキナーゼを介してTCR複合体の一部であるCD3ζ鎖に存在する3つのITAMモチーフのリン酸化がおこる.
  • 完全にリン酸化されたζ鎖はシグナルを細胞内へと伝達するシグナル伝達複合体を形成するための結合部位として働く。
  • MHC上ペプチドとTCRとの結合がLck依存性のCD3ζ鎖のリン酸化を引き起こしてTCRを介したシグナル伝達が開始される.
  • CD45を欠損した細胞では, Lckは不活性型のままであり, Lck下流でおこる一連のチロシンリン酸化もおこらない。
  • Lckの活性は通常, 自己抑制機構によって抑えられている. この抑制機構は自身のSH2ドメインとC末端に位置するリン酸化チロシン残基(Y505)との間の分子内結合を介して「閉じたコンフォーメイション」をとることにより起こる.

Lckが活性化されるには, まずCD45による脱リン酸化でキナーゼ活性部位が露出し, 次いで活性化領域(Y394)における自己リン酸化が起き, 完全に活性化したLckがζ鎖のITAMモチーフをリン酸化する.

この反応が効率的におこるには, MHC上の抗原ペプチドとTCRの結合によって,CD4やCD8に結合している活性化可能なLckがCD3のζ鎖の近くにいくことが必要.

CD45はCD4/8と結合している一群のLckを活性化可能ではあるが基質からは離れた待機状態に維持していると推察される.

  • CD45分子を欠損させたT細胞では, IL-2受容体(CD25)を介した刺激には正常に応答するが, T細胞受容体(TCR)を介した刺激には全く活性化されないことが見いだされた.&note{:
  • 細胞表面CD45が完全になくなると, 重症複合免疫不全症(severe combined immunodefeciency disease; SCID)を引き起こす.&note{:
  • CD45に活性型変異をもつトランスジェニックマウスでは, リンパ球増殖や自己抗体産生がおき, 重症腎炎がおこる.&note{:

*1  Hermiston ML,et al. CD45, CD148, and Lyp/Pep: critical phosphatases regulating Src family kinase signaling networks in immune cells. Immunol Rev. 2009 Mar;228(1):288-311.

添付ファイル: fileCD45-TCRsignaling.jpg 1114件 [詳細] fileCD45molecule.jpg 909件 [詳細]

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Last-modified: 2021-01-13 (水) 14:27:20 (14d)