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ケモカイン chemokine (chemotactic cytokineの略)

ケモカインは内因性の白血球走化性・活性化作用を有する8-14kDaほど, 100個以下のアミノ酸からなる塩基性(若干の例外がある)でヘパリン結合性の強い蛋白質群。
chemotactic cytokineからの造語で白血球の活性化と遊走を誘導するCytokineサイトカインの一群の総称.

ヒトでは現在約50種類ほどのケモカインが同定されケモカインファミリを形成、細胞遊走に関与する受容体20種類(CCR1-10, CX3CR1, XCR1, etc )ほどが見出されている*1

chemokine familyの分類と細胞特異性---> filechemokineOKg.pdf *2 クリックで, PDFファイルが開きます.

  • 感染最初期に感染組織に分泌されるサイトカインの中にケモカイン chemokineとして知られる走化性因子のファミリーが存在する. これらの小分子は最近になり発見されたもので, 近傍にいる反応細胞に走化性を誘導している。
     
  • ケモカインは最初サイトカインアッセイにより発見され, 当初はインターロイキンinterleukin (IL)に含まれていた. インターロイキン8は最初に遺伝子が単離, 解析されたケモカインでこのファミリーの代表格. 現在はCXCL8として知られる.
     
  • 炎症をおこす特異的白血球浸潤の機序は長く不明であったが, 細胞接着因子(セレクチンやインテグリン etc)と白血球遊走活性化サイトカイン・ケモカインの発見, 研究の進展によりその機序が説明可能となった.*3 *4
     
  • 共通して7回膜貫通レセプタ-に結合して作用する
     
  • 1987年にIL-8/CXCL8が初めて好中球遊走因子として報告された
     
  • 1989年MCP-1/CCL2が単球遊走因子として発見される

ケモカインの機能

ケモカイン産生は上皮系細胞, 間質細胞, 血管内皮細胞など種々の組織細胞でみられ, さらに標的細胞である白血球やリンパ球からも産生される。これは組織に浸潤した白血球やリンパ球がさらに仲間をよぶpositive feedback機構と考えられる。

恒常性ケモカイン:一部のケモカインは特定の組織細胞で構成的に産生され, リンパ系組織の形成と維持に必須である。

  • 急性, 慢性炎症での好中球や単球の組織浸潤
  • アレルギー疾患での好酸球浸潤
  • 成熟リンパ球の生理的再循環
  • エフェクターリンパ球の標的組織への浸潤
  • 樹状細胞の末梢組織への分布, 二次リンパ組織へのホーミング
  • 発生における細胞移動, 組織形成
  • N末端システイン残基の直前にERL(Glu-Leu-Arg)モチーフをもつCXCケモカインには血管新生作用があり, 非ERLモチーフ型のCXCケモカインには血管新生抑制作用がある。
  • がん支持組織の形成・転移
  • HIVやヘルペスウイルスなどのウイルス感染機構への関与:R5型HIV感染ではCCR5が共レセプターになり, X4型HIV感染ではCXCR4が共レセプターとなる。

ケモカインの名称・分類

ケモカインは一般的にN末端側の最初の2つのシステイン(Cys)残基の数と位置によりCXC, CC, C, CX3C(=CXXXC)の4サブファミリーに分類される。

1. N末端に2つのシステイン, CCをもつCCケモカイン CCL1〜28. 6, 9, 12はマウスのみ. 10は欠番. CCL3はCCL3とCCL3L1がある. CCL14には14a, 14bがある.

2. N末端CCの間に他のアミノ酸が入り込んだCXCケモカイン CXCL1〜CXCL16

3. Cケモカイン;XCL1(lymphotactin)とXCL2(SCM-1β)の2種類

4. CX3Cケモカイン; CX3CL1(fractalkine)の1種類

  • ケモカインの多くは70数個のアミノ酸からなり塩基性でヘパリン結合性をもち生体内ではプロテオグリカン上のヘパラン硫酸に結合する.
     
  • CCケモカインはCCケモカインレセプター(現在9つが知られ, CCR1〜9)に, CXCケモカインはCXCレセプター, (現在6つ, CXCR1〜6)に結合する. いくつかのケモカインは重複して同じレセプターに結合する.
     
  • これらのreceptorsは異なったタイプの細胞に発現しており, その結果, これらのreceptorを発現する細胞は異なるケモカインにより誘因される. (多数のケモカインが存在することは, 細胞を正しい場所に配置することは生体にとり非常に重要であることを示しているのかもしれない)

最初のシステインの直前に, Glu-Leu-Arg (ELR)のトリペプチドをもつCXCケモカインは好中球の遊走を促進する.
CXCL8はこの種類のケモカインのひとつ(好中球遊走因子)

CXCL13のようなELRモチーフを欠く他のCXCケモカインは 脾臓, リンパ節や腸管のB細胞領域など適切な場所にリンパ球を誘導している.

CCケモカインは単球や他の細胞の遊走を促進する. CCL2は単球を血流から組織へ移動させて組織マクロファージになる.
CCL5はeffector T細胞を含むある種の白血球を組織に浸潤するよう誘導する. 個々のケモカインは異なる細胞亜群の細胞に作用している.

一つのシステインをもつCケモカインはXCL1として知られ, T細胞前駆体はXCR1と結合することで胸腺に誘導されると考えられている. XCR1はCD141(BDCA-3, thrombomodulin)陽性DCsに高発現している.

fractalkineとよばれるケモカイン分子はシステイン間に3つのアミノ酸残基のあるCX3CLケモカインで, 2つの型をもち, 一つは内皮細胞や上皮細胞膜上に発現して接着因子として機能し, もう一つの型は細胞表面から可溶性分子として分泌され他のケモカイン同様に化学走性として働く.

  • 2大ファミリーはシステイン残基が隣接しているCCケモカインとCys残基のあいだに1個のアミノ酸が介在するCXCケモカイン. Cケモカインは1個のシステイン残基のみでアミノ酸の介在なし、CX3Cケモカインでは3種類のアミノ酸が介在している。
  • ELR(Glu-Leu-Arg)モチーフをもつCXCケモカインのIL-8, Groα-γ,NAP-2,ENA78,GCP-2は血管新生作用をもつ
  • CXCケモカインは主に好中球を遊走させヒト第4染色体(4q12-21)にクラスタを形成
  • CCケモカインは主に単球を遊走させヒト第17染色体にクラスタを形成
  • 炎症に伴って誘導されるケモカインと組織で構成的に発現しているケモカインに分類される
  • SDF-1/PBSF(Stromal cell derived factor-1/pre-B cell stimulatory factor)は骨髄・脾臓・胸腺・リンパ節などの造血リンパ節組織で構造的に発現するケモカインの例で10q11.1にマップされる.

ケモカイン受容体

  • ケモカインの活性は標的細胞上の受容体に結合することで発揮される
  • 1991年IL-8Rがクローニングされ7回膜貫通Gタンパク質共役型受容体遺伝子のファミリに属することが発見された.
  • 18種類の機能的ケモカインレセプターが同定されている
  • CCR5/CXCR4はHIVウイルスの細胞表面受容体として利用されている
  • ケモカインレセプタは細胞の表面マーカとしても利用される

7回膜貫通型受容体

自然界で最も大きなタンパク質ファミリーを形成し哺乳類遺伝子の約1-2%はこのタイプの受容体であるといわれる

  • 神経伝達物質の受容体
     
  • ニューロペプチドの受容体
     
  • ホルモンの受容体
     
  • プロスタグランジン類の受容体
     
  • ヌクレオチドの受容体
     
  • 光,疼痛物質,味覚物質,匂い物質など体外からの物質の受容体でもある
     
  • (増殖因子の受容体には少ない)

受容体の特徴

  • α,β,γの三量体からなる三量体型Gタンパク質に共役してシグナルを伝える
  • Gタンパク質はグアニンヌクレオチドが結合して機能するタンパク質で
  • GTPが結合すると活性型
  • GDPが結合すると不活性型となる

リンパ球特異的ケモカイン

文献*5

生体内では炎症は局所的にみられ, リンパ球の分化, 成熟などはある特定の部位でおこなわれる。よって細胞の移動は細胞の分化, 増殖, 死に加え, 免疫にとって不可欠な現象である。

ケモカインの発見となったIL-8および MCAF/MPC-1が炎症時の好中球、単球の重要な走化因子であるように, リンパ球の炎症部位への浸潤, リンパ組織へのホーミング, リンパ組織内での移動にもリンパ球特異的ケモカイン, ケモカイン受容体が重要な役割をはたしている.

リンパ球系細胞は1次リンパ組織での成熟分化に加えて末梢リンパ組織において種々の機能分化をおこなう. この過程においてリンパ球ではケモカイン受容体発現のダイナミックな変化がおこる。

特定のケモカイン受容体発現は特定のケモカインに対する反応性を付与し, 細胞移動や組織内での特定の部位への局在を可能としている。

リンパ系細胞由来腫瘍でのケモカイン受容体発現パターンは, ほぼその由来する正常細胞(normal counterparts)の形質を反映している。腫瘍細胞ケモカイン受容体は特定のケモカインとの反応を可能とし腫瘍細胞の遊走や組織浸潤を誘導する。 またケモカイン受容体からのシグナル伝達は直接または間接的に細胞のアポトーシス抑制や増殖促進に関与することがある。

Tリンパ球サブセットとケモカインレセプタ-

系統,分化成熟レベル,機能などからTリンパ球はさまざまなサブセットに分類される

  • それぞれのサブセットには各々特有の体内移動パターンがあり,そのパターンは特定のケモカインレセプタ−セットを発現するためであることが明らかになってきた。
  • ケモカインレセプタは様々なTリンパ球サブセットの機能発現にかかわると同時にそのサブセットのよい表面マーカである.

T細胞の分化--->T細胞のページ

T細胞では胸腺内での成熟分化や2次リンパ組織での機能分化にともないケモカイン受容体の発現が大きく変化する。T細胞の分化が厳密な細胞移動や組織内局在に依存しているためと考えられる。

chemokine01.JPG

胸腺内T細胞

CXCR4---> DNからDPの段階で発現する。

CCR9---> DPからSPの段階で発現する。

CCR4---> DPからSPの段階で発現する。

CCR7--->SPの段階で強く発現する。

ナイーブT細胞

  • ナイーブT細胞--CCR7を強く発現し, そのリガンドCCL19やCCL21により再循環過程で2次リンパ組織T細胞領域に選択的にホーミング(帰巣)する。ここで抗原刺激をうけるとエフェクター/メモリーT細胞に分化する。

メモリー/エフェクターT細胞

  • セントラルメモリーT細胞(TCM)---CCR7(+)---2次リンパ組織にホーミング(帰巣)する
  • エフェクターメモリーT細胞(TEM)---CCR7(−)---ホーミングせず標的末梢組織に移動する
  • Th1細胞(メモリー/エフェクターT細胞から分化)
    • IL-2,IFN-γを産生,細胞性免疫や臓器障害にかかわる
    • CXCR3, CCR5を発現
  • Th2細胞(メモリー/エフェクターT細胞から分化)
    • IL-4,IL-5,IL-13などを産生して液性免疫やアレルギー反応にかかわる
    • CCR3, CCR4, CCR8を発現する
  • CD4+CD25+制御性T細胞(TREG)は免疫を抑制的に制御する---CCR4とCCR8を発現する
  • α4β7+腸管指向性T細胞---CCR6を発現
  • CLA+皮膚指向性T細胞---CCR4を発現する
  • 濾胞ヘルパーT細胞(TFH)--2次リンパ組織のB細胞領域(濾胞)に移動する---CXCR5を発現しし, 2次リンパ組織のB細胞領域へ移動
  • NK細胞やCD8陽性キラーT細胞---CX3CR1を発現する

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chemokine familyの分類と細胞特異性--->filechemokineOKg.pdf *22010年までのデータ


*1  Yoshie O et al. Chemokines in immunity Adv Immunol 78; 57-110: 2011
*2  松島綱治 注目されるケモカイン, ケモカイン受容体とその応用 臨床検査2010; 54(6): 637-643
*3  Yoshimura T, et al. Purification of a human monocyte-derived neutrophil chemotactic factor that has peptide sequence similarity to other host defense cytokines. Proc Natl Acad Sci U S A. 1987 Dec;84(24):9233-7.
*4  Matsushima K, et al. Molecular cloning of a human monocyte-derived neutrophil chemotactic factor (MDNCF) and the induction of MDNCF mRNA by interleukin 1 and tumor necrosis factor. J Exp Med. 1988 Jun 1;167(6):1883-93.
*5  義江 修 リンパ系腫瘍とケモカイン受容体 炎症と免疫 19(5); 468-474: 2011

添付ファイル: filechemokineOKg.pdf 243件 [詳細] filechemokine01.JPG 764件 [詳細]

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Last-modified: 2017-07-28 (金) 22:03:59 (753d)