チロシンキナーゼ thyrosine kinase

EGFR(epidermal growth factor receptor 上皮成長因子受容体)

EGFR (epidermal growth factor receptor)

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  • EGFの結合により受容体monomerが二量体化する
  • 活性化ループ内のチロシン(Y845)が自己リン酸化されフルに活性化, 次いでC末端領域のチロシン残基(Y1068/1086)などがさらにリン酸化される。
 
EGFR-RAS.jpg
  • リン酸化された部位にSH2ドメインとSH3ドメインからなるアダプタータンパク質GRB2が結合する(=リクルートされる).
  • GRB2にはSOSというGTP/GDP交換因子(GEF)が結合しており、細胞質に存在するGrb2-SOSを細胞膜に移動させることで低分子量Gタンパク質RASを活性化させMAPキナーゼ経路を介するシグナルが伝達される。

    GRB2はRASへのEGFRシグナルに必須であり, そのSH2 (Src Homology-2)ドメインが直接、活性型EGFRの1068と1086リン酸化チロシンへ結合するかチロシン-リン酸化アダプター蛋白SHCを介して間接的に結合する。
    GRB2のSH3ドメインはRAS GTPaseの転換因子SOS(Son of Sevenless)と構成的に結合する。
    SOSとの結合の他, GRB2のSH3ドメインは Dynamin およびCbl (c-Cbl, Cbl-b, and Cbl-3)などいくつかの蛋白質と結合する。両者ともEGFRのエンドサイトーシスを制御する蛋白である。
    EGFRに結合したGRB2とSOS複合体はRasの近傍にSOSを配置することになり, RasのGTP付加とRasエフェクターである, Rafキナーゼ, PI3K(phosphatidyl inositol 3-kinase)の活性化が続いておこる。
    RafはMEKs (MAPK/ERK Kinases) とERKs (Extracellular Signal-Regulated Kinases)のリン酸化、活性化を含むリン酸化カスケード反応を開始する。--->RAS signaling pathwayのページを参照。

  • また, PI3Kを活性化してAkt経路のシグナルを活性化しアポトーシス制御mTOR経路を介してタンパク質合成を制御するといった種々の下流経路へシグナルを伝えることになる。

    EGFは結合蛋白GAB1(GRB2-Associated Binder-1)によってもPI3Kを刺激する。結合蛋白GAB1はPI3K、その他多くの受容体型チロシンキナーゼ活性化反応に関与するエフェクター蛋白を動員する。いったん活性化されたPI3Kは, 膜結合PIP2(Phosphatidylinositol (4,5)-bisphosphate)をリン酸化してPIP3 (Phosphatidylinositol-3,4,5-trisphosphate)を生成する。PIP3がPHドメインに結合するとAktは細胞膜に繋留され, PDK1(Phosphoinositide-Dependent Kinase-1)によるリン酸化と活性化を受けるようになる。次いでAktはいくつかの基質をリン酸化して細胞生存に関与する。 *1*2

 

肺癌でのEGFR mutation

EGFRmutationExon18-21.jpg

gefinitib(商品名イレッサ [Iressa])低分子量EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI).

手術不能または再発非小細胞肺癌の治療に開発され2002年に日本で承認をうけた。2003-2004年, 無作為比較臨床試験(ISEL試験*3)でプラセボとくらべ生存期間が延長できなかった。2005年FDAは本薬剤新規使用を禁止。2009年には欧州医薬品局は2つの無作為化第III相臨床試験, INTEREST試験とIPASS試験の結果をもとに成人EGFR遺伝子変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞癌を対象にイレッサの販売承認をおこなっている。

gefinitibの腫瘍縮小効果はEGFR遺伝子の体細胞変異の有無と強く相関することが2つのグループから報告されている。*4*5

EGFRm01.jpg EGFRmutation-distribution.jpg

 
  • EGFR変異は, 活性化型遺伝子変異で, L858R, exon19インフレーム遺伝子欠損が80-90%以上を占める。(2つのhot spotがある)
  • 遺伝子変異の違いにより悪性転換能力が異なり, それが治療効果にも影響しているとする報告がある
  • 肺癌特異的な変異で, 他臓器のチロシンキナーゼ領域の変異はまれ。肺以外にhot spot変異を示す他臓器腫瘍の報告はほとんどない.
  • Kras遺伝子変異とは排他的. EGFR,Krasを同時に持つ腫瘍は臓器をとわず報告はない。
  • 同経路の遺伝子BRAF, HER2遺伝子変異も報告されているが, EGFRとは相互排他的関係である。
  • 胚細胞にEGFR変異をもつ家族性肺癌症候群が報告されている。この家系は高率に肺気管支肺胞上皮癌もしくはその特徴をもつ腺癌を発症する。
  • EGFR変異には人種差がみられる. 東洋人では頻度が高く日本人肺癌の30%, 腺癌の40%程度に認められる。白人は10-15%
     

EGFR-thyrosin kinase inhibitor耐性*6

1. 二次性遺伝子変異

T790M変異 50-60%を占める 出現するとイマチニブ(イレッサ), エロルチニブ(タルセバ)の継続投与は無効.
D761Y変異 <1%
T854A変異 <1%

2. MET経路活性化

遺伝子増幅 10-20%
HGF発現 ?%

3. PTEN不活化 <3%

4. 小細胞癌への組織転化 <1%


*1  Immervoll H, et al. Molecular analysis of the EGFR-RAS-RAF pathway in pancreatic ductal adenocarcinomas: lack of mutations in the BRAF and EGFR genes. Virchows Arch. 2006 Apr 6
*2  Meng S, et al. Participation of both Gab1 and Gab2 in the activation of the ERK/MAPK pathway by epidermal growth factor. Biochem J. 2005 Oct 1;391(Pt 1):143-51.
*3  Thatcher N, et al.Gefitinib plus best supportive care in previously treated patients with refractory advanced non-small-cell lung cancer (Iressa Survival Evaluation in Lung Cancer; ISEL). Lancet 2005; 366: 1527-1537.
*4  Lynch TJ, et al. Activating mutations in the epidermal growth factor receptor underlying responsiveness of non-small-cell lung cancer to gefitinib. N Engl J Med. 2004 May 20;350(21):2129-39. Epub 2004 Apr 29. PMID:15118073
*5  Paez JG, et al. EGFR mutations in lung cancer: correlation with clinical response to gefitinib therapy. Science. 2004 Jun 4;304(5676):1497-500. Epub 2004 Apr 29. PMID:15118125 free full text.
*6  Yatabe Y EGFR tyrosine kinase mutation in lung cancers 最新医学 2012; 67(3): 380-385

添付ファイル: fileEGFRmutation-distribution.jpg 1192件 [詳細] fileEGFRm01.jpg 1726件 [詳細] fileEGFRautophospho.jpg 1400件 [詳細] fileEGFR.jpg 1627件 [詳細] fileEGFR-RAS.jpg 1727件 [詳細] fileEGFRmutationExon18-21.jpg 1023件 [詳細]

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Last-modified: 2016-06-21 (火) 16:20:00 (904d)