Diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) WHO 4th revised
High grade B-cell lymphoma (HGBCL) WHO 4th revised. 高悪性度B細胞リンパ腫 †
WHO 4th revisedには2つの疾患カテゴリ-が記載されている.
1. high-rade B-cell lymphoma with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangements
2. high-grade B-cell lymphoma, NOS---現場ではほとんど使われない疾患名(東海大 中村直哉先生*1)
どのような経緯で, この疾患単位が必要になったのか?
- 2006年, Kanungoらが MYC遺伝子異常とBCL2転座[t(14;18)]が同時に認められるリンパ腫の予後不良なことを報告した.*2
- 2012年. デンマークのグループがstandard R-CHOPにより治療されたDLBCLの193症例についてホルマリン固定パラフィン包埋組織の免疫染色でMYC タンパク質発現を調べた.
29%がMYC、BCL2を同時に高発現していた. International Prognostic Index および cell-of-origin subtype(GCB, non-GCB genotype)をコントロールした多変量解析でOS, PFSが有意に不良であった(OS, P < .001; PFS, P < .001).*3
- 同様のセッティングでBritish Columbiaのグループが免疫染色でMYC, BCL2の発現を評価した. MYC,BCL2の同時高発現(MYCは≧40%)は21%の症例に認められた.
BCL2の高発現を伴う, MYCタンパク質の発現増加が, R-CHOP治療における唯一の予後不良因子であり, 臨床および分子学的ハイリスク因子をコントロールしたindependent cohortにおいても同じく有用であった.*4
- R-CHOP consortium groupは893例のR-CHOPで治療されたDLBCLについて網羅的遺伝子発現を調べた. Double expressor DLBCLは, GCB, ABC type の両方に認められ, 同じく予後不良であった. ABC typeの予後不良はMYC発現の有無に大きく影響されていた.
MYCは細胞外マトリックスタンパクをコードする遺伝子を下方制御している. マトリックスタンパク質はマトリックスの沈着/再構築を行い, 細胞接着に関与している. またMYCは増殖に関与する遺伝子を上方制御している*5
- 最近のドイツで行われた2つの前向き無作為化試験では, DLBCLのcell-of-riginを決定することでは, 予後サブグループをわけることはできなかった. 一方, MYCとBCL2が同時発現例は, 生存率が明らかに低かった.*6
いくつかの後ろ向き研究では, c-mycの転座をもつDLBCLは少数だが, この転座があると, 特に予後が不良であることが示されている.
- Barransらは, 標準的なR-CHOP療法を行った303例の治療歴のないde novo DLBCLをレビューした. 14%の患者さんはMYC再構成を示し, 2年の全生存率(OS)は35%と, MYC再構成がない患者さん61%に対して 不良であった. *7
- British Columbia Cancer AgencyはR-CHOPで治療した195例のDLBCLで, MYC再構成なしでは, 5生率75%に対し, MYC再構成ありでは33%と不良であった. *8
- タンパク発現研究で得られた結果と同じく, myc再構成の症例に, bcl-2の再構成が併存すると予後に顕著な影響をあたえる.*9これらの転座が同時におこると, 特に予後が悪かった.*10*11
- エトポシドを含む, より強度な化学療法, R-MegaCHOEP(rituximub, 高用量cyclophosphamide, doxorubisin, vincristin, predonisolone)において, myc再構成の悪影響が確認された.
しかし, bcl-2再構成単独の存在も短い全生存期間と関連した新規予後マーカーとして浮上してきた.*12
- myc転座とbcl-6転座の同時発現がR-CHOPで治療されたDLBCLの予後不良をきたすと考えられた.*13
以上, 免疫染色によるMYC, BCL2タンパク質同時発現(Double expressor lymphoma), および分子遺伝学的にmyc再構成の存在, mycとbcl-2 and/or bcl-6再構成の存在するDLBCL(Double-hit/ Triple-hit lymphoma)は
標準的なR-CHOP療法では、予後が明らかに不良であることが明らかになってきた.
これらのデータを考慮し, WHO 4th revisedではhigh-rade B-cell lymphoma with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangementsと呼ぶ新しい疾患カテゴリーを設けDLBCLと区別した.2016-17年.
WHO 4th revised以前のDouble-hit lymphomaはFLにmyc, bcl-2転座がある症例などを含む.
新カテゴリーはより厳格に規定されている.(以下の項目)
high-grade B-cell lymphoma with MYC and BCL2 and/or BCL6 rearrangements †
MYC遺伝子転座を必須として, BCL2遺伝子とBCL6遺伝子の一方あるいは両方の転座再構成をともなう agressive B-cell lymphoma 高侵襲性B細胞リンパ腫
- 高侵襲性B細胞リンパ腫の組織細胞形態にかかわらず遺伝子異常の有無により規定される疾患.→ 確定診断には遺伝子検査(FISHや核型)が必須となる.
- 2008WHO分類ではDLBCLとBLの中間型リンパ腫として, もともと遺伝子異常から規定された疾患概念で多彩な組織像を含む群なのに
「組織像」から定義したためあいまいで現場では役にたたないと思われた.(東海大中村直哉先生*14)
- Double-hit lymphoma(MYC再構成+BCL2再構成/ MYC再構成+BCL6再構成), Triple-hit lymphoma(MYC, BCL2, BCL6すべての再構成を認める).
- de novoの高侵襲B細胞リンパ腫であり, FLなど低悪性度B細胞リンパ腫に遺伝子再構成が見られてもこの疾患群には含めない.
- TdT陽性リンパ芽球性リンパ腫にdouble/ triple-hitが認められる場合がある.現在はこの疾患群に含めないが, 予後は不良であり今後の検討課題である.
- transformed FLなど低悪性度B細胞リンパ腫から転化した症例は含まないが, blastoidな形態を示す場合, DLBCLとFL grade3Bが共存する場合はこの範疇に入る(んっ?)
- MYC再構成の相手が CCND1, BCL1(cyclinD1)の場合は, mantle cell lymphoma, blastoid type( aggressive MCL)として扱う.
病理組織所見
中〜大型リンパ球のびまん性増殖. 組織像は下記のいずれのパターンも出現しうる.
組織像のみでは確定できない.
- 1. DLBCL, centroblastic type, immunoblastic typeの組織像
- 2. Burkitt-like, DLBCLとBLの中間型を示す組織像
- 3. リンパ芽球型リンパ腫(lymphoblastic lymphoma)の組織像
小型細胞の増殖でなければ組織像に制限はなく, starry-sky appearanceが見られることが多く, 線維化を伴うこともある.
どのリンパ腫でdouble-hitを評価しなければならないのか †
文献*15
最近の研究:
Cell of origin(COO), DE(dual expressor), およびDH(double-hit)は, stageに関係なく, DLBCLの予後に影響する重要な生物学的因子とされているが,
211名のDLBCLのコホート研究をおこなったところ, ~PET-CTによりstage I/IIとされた患者さんでR-CHOPおよびその変法(放射線治療はうけたり受けなかったりした例が含まれる)により治療された患者さんの
PFS, OSの良し悪しにはまったく関連がなかった. Blood advances 2019; 3(13): 2013-2021*16