Blimp-1/PRDM1 B-cell 終末分化

MUM1(Muliple Myeloma oncogene1)/ IRF4(interferon regulatory factor4)遺伝子

6p25.3, 9 exons. 蛋白は51.6 kDa NCBI Gene, OMIM601900

Iidaらは, 多発性骨髄腫細胞株11の細胞株のうち2つでt(6;14)(p25; q32)転座を同定し,この転座により、免疫グロブリン重鎖(IGHG1)遺伝子座が、MUM1(多発性骨髄腫発癌遺伝子1)遺伝子に並置することを見出した.*1
MUM1はB細胞の増殖および分化の制御に機能する既知の遺伝子ファミリーのメンバーであるインターフェロン調節因子-4(IRF4)とも呼ばれる.

IGHG1-MUM1/IRF4 fusion geneは機能性タンパク質を産生することはないが, MUM1/IRF4を過剰に発現させてin vitroで発がん活性が確認されている*1. MUM1蛋白はICSAT (Interferon Consensus Sequence binding protein for Activated T cells)、PiP (PU.1 Interaction Partner) 等とも呼ばれる.

IRF4/MUM1の機能

文献*2

IRF4network.jpg

IRF4(interferon regulatory factor4)はIRF familyに属する転写因子. 血球系細胞においては, B細胞をはじめ, T細胞, macrophage, 樹状細胞など種々の細胞において特異的な機能を果たす.

B細胞においてはプレB細胞分化と形質細胞分化において, とくに重要な役割をもつ. IRF4の結合するIRF4結合モチーフがEICE(Ets-IRF composite elements), AICE(AP-1-IRF composite elements)およびISRE(Interferon-stimulated response elements)の少なくとも3種類がしられ, IRF4はこれら各結合モチーフを介して多様な遺伝子ネットワークを起動することができる.

IRF4とタンパク質構造の類似したIRF8のdouble knockoutではマウスにプレB細胞分化障害がおこる. 各々単独のknockoutでは障害がおこらないことからIRF4, IRF8はプレB細胞分化において相補的機能を有していることが報告されている.*3

プレB細胞分化

プレB細胞分化では, IL-7受容体(IL-7R)とプレB細胞受容体(pre-BCR)からのシグナルバランスにより抗体軽鎖遺伝子組み換えがおこる.

IL-7Rシグナルの減弱によりFOXO1タンパク質の核内蓄積が誘導され, FOXO1のポジティブフィードバック機構が起動し自己活性化が進む.

SykおよびBlnkの遺伝子を誘導, その下流のp38キナーゼ活性化によりFOXO1(13q14.11)の転写活性能増強をおこし, さらにほかの標的遺伝子活性化を誘導することになる.(図)

FOXO1の標的遺伝子活性化には, Rag1/Rag2発現誘導や, p27遺伝子発現誘導による細胞周期停止のほか, IRF4遺伝子の発現誘導が含まれ, IRF4は抗体軽鎖遺伝子(Igκ, Igλ)転写誘導と細胞遊走性因子 CXCR4遺伝子発現誘導により, IL-7産生ニッチ細胞からの細胞離脱を促し, IL-7Rシグナルをさらに弱めることに働き軽鎖遺伝子組み換えに機能する.*4

形質細胞分化でのMUM1/IRF4の機能

形質細胞分化過程においてMUM1/IRF4蛋白質は徐々に蓄積(免疫染色で核陽性となる)する. そのタンパク質量に応じて, IRF4は複数種の異なる遺伝子発現ネットワーク制御を行い, クラススイッチや体細胞突然変異などの胚中心反応と, 形質細胞分化の両方を制御している.*5

分化初期には, 低IRF4レベルで, PU.1との結合モチーフEICEを介してBcl-6などB細胞活性化遺伝子群の制御やAP-1ファミリーとの結合モチーフAICEを介してB細胞成熟関連遺伝子群の制御に機能し胚中心反応を促進している.

分化後期の高IRF4レベルでは, homodimerを形成しISREへ結合し, 同結合モチーフを保持するPRDM1, ELL2などの形質細胞分化関連遺伝子を活性化して形質細胞への分化を誘導する.*6*7

プレB細胞での相補的作用とは異なり, 形質細胞分化ではIRF4とIRF8は拮抗する.IRF8はT細胞による抗原特異的胚中心反応を促進してIRF4による形質細胞分化誘導を阻害している. このときIRF4とIRF8は互いに発現を抑制しあうダブルネガティブフィードバック機構を形成することが示されている.*7

IRF4とIRF8は両因子の結合モチーフが類似しているのに標的遺伝子はまったく異なっている. この違いは結合モチーフ近傍に存在する他の転写因子結合モチーフの有無によると考えられている. IRF4結合モチーフの近傍には転写抑制因子 Bach2結合モチーフが高頻度に検出され, Bach2は形質細胞分化抑制機能により胚中心反応を促進する働きをしている. --->Bach2の詳細をみる

病理, 免疫染色

IRF4遺伝子によってコードされるタンパク質は、ユニークなトリプトファン五量体反復DNA結合ドメインを特徴とする転写因子のIRF:インターフェロン調節因子ファミリーに属する。

  • IRFは、ウイルスの感染およびインターフェロン誘発性遺伝子の調節に応答するインターフェロンの調節において重要.
  • IRFファミリーメンバーは、リンパ球特異的であり、自然免疫および適応免疫系の活性化の中心であるToll様受容体(TLR)シグナル伝達を負に調節する。t(6;14)(p25;q32)は IRF4遺伝子とIgH遺伝子の融合をきたし, 多発性骨髄腫の原因となりうる. あるいは, スプライスされた転写変異体がこの遺伝子について見出されている。

MUM1蛋白は主に胚中心細胞から形質芽細胞の段階において発現しており、 bcl-6 陽性細胞(胚中心B細胞)から CD138発現細胞(免疫芽細胞, 形質細胞)への分化段階を同定するマーカーとなる。一部のT細胞やHodgkin 病の Reed-Sternberg 細胞にも発現が認められている。免疫染色では核に陽性となる.*8

 

t(6;14)(p25; q32)転座

参照*9

  • t(2;6)(p12;p25) IRF4/IGK
  • t(6;14)(p25;q32) IRF4/IGH
  • t(6;22)(p25;q11) IRF4/IGL

免疫グロブリン重鎖遺伝子をIRF4遺伝子に並置するt(6;14)転座は, 多発性骨髄腫および成熟B細胞リンパ腫のサブタイプにおいて転写因子MUM1/ IRF4を活性化することが示されている.
この転座は, MUM1/ IRF4遺伝子の過剰発現を導く。*1 *10

多発性骨髄腫では, IRF4はIG遺伝子座への不正なIGスイッチ組換えによって同様に並置される.さらに、多発性骨髄腫において、IRF4の発現は,この転座を欠く症例の腫瘍細胞生存にも必須である*11

IGH/ IRF4およびそのvariantである軽鎖遺伝子/IRF4融合体は、GC B細胞リンパ腫のサブグループ, 濾胞性リンパ腫グレード3あるいはcentroblastic type DLBCLに関連している.

centroblastic type DLBCLMUM1とBCL6を共発現しPRDM1/Blimp1陰性, 特殊な遺伝子発現プロファイルをもつこと, および小児あるいは若年成人に多く発症する特徴がある. *10


*1  Iida, S, et al R. Deregulation of MUM1/IRF4 by chromosomal translocation in multiple myeloma. Nature Genet. 17: 226-230, 1997.
*2  落合恭子 IRF4によるB細胞分化制御 B細胞内のシグナル伝達機構 炎症と免疫 2016; 24(3): 79-82
*3  Lu R, et al IRF−4, 8 orchestrate the pre-B-to-B transition in lymphocyte development Genes Dev 2003;17:1703-1708
*4  Johnson K, et al. Regulation of immunoglobulin light-chain recombination by the transcription factor IRF−4 and the attenuation of interleukin-7 signaling. Immunity 2008; 28:335−345
*5  Sciammas R, et al. Graded expression of interferon regulatory factor-4 coordinates isotype switching with plasma cell differentiation. Immunity. 2006 Aug;25(2):225-36.
*6  Ochiai K, et al. Transcriptional regulation of germinal center B and plasma cell fates by dynamical control of IRF4.Immunity. 2013 May 23;38(5):918-29.
*7  Xu H, et al. Regulation of bifurcating B cell trajectories by mutual antagonism between transcription factors IRF4 and IRF8. Nat Immunol. 2015 Dec;16(12):1274-81.
*8  いむーの MUM1-免疫組織データベース
*9  http://atlasgeneticsoncology.org//Anomalies/t614p25q32IRF4IGHID1175.html
*10  Salaverria I, et al; German High-Grade Lymphoma Study Group; Berlin-Frankfurt-Munster-NHL trial group. Translocations activating IRF4 identify a subtype of germinal center-derived B-cell lymphoma affecting predominantly children and young adults. Blood. 2011 Jul 7;118(1):139-47.
*11  Shaffer AL, et al. IRF4 addiction in multiple myeloma. Nature. 2008 Jul 10;454(7201):226-31.

添付ファイル: fileIRF4network.jpg 74件 [詳細]

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Last-modified: 2018-02-03 (土) 11:34:49 (233d)