第2回東京骨髄病理研究会

MDSに認められる染色体異常*1

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WHO 4thEdにMDSに特徴的に認められる染色体異常として記載されている染色体異常。

*を除く染色体異常を示す症例では,
原因不明の持続的血球減少があれば造血細胞異形成の所見が明らかでなくても,MDSの可能性を示す根拠になる。

5q-

5q-はMDSで最も頻度の高い染色体異常。de novo MDSの10-15%, 2次性MDSの約40%に認められる。

5q-が単独異常として認められる病型はRA, RARS, RAEBなどさまざまであるが2008年改訂WHO分類では''MDS associated with isolated del(5q)として独立した疾患単位にあげられた--->MDS associated with isolated del(5q)

 

モノソミー7(-7)/ 7q-

  • モノソミー7, 7q-の頻度は2次性MDS/AMLで30-40%, de novo MDSで10-15%, de novo AMLで5%。
    5q-, 17p-, 12p-などと同時に認められることが多い. IPSSでは予後不良群に分類される。
  • 小児領域では, Fanconi貧血, Kostmann症候群, 神経線維腫症I型がmonosomy7や7q-をしめすMDSにしばしば移行する。
  • 7q-はMDSとAMLに特異的な不均衡転座dic(1;7)(q10;q10)によっても形成され, 同時に1qも部分トリソミーとなる。
  • dic(1;7)(q10;q10)の頻度は2次性MDS/AMLで3-7%, de novo MDSで2%とされ, 易感染性と高ガンマグロブリン血症を示すことが多く, アルキル化剤や放射線治療の関与が推定されている。
  • 7q-ではAML1遺伝子の点突然変異が高頻度に認められTP53やRAS変異の頻度は低いとされる。
  • 7q-で同定されている重要な切断点あるいは欠失領域は7q22および7q32-35である。責任遺伝子はまだ同定されていないが, 7q21.3に同定された微小欠失部分の解析中である
  • 5q-を単独異常とするMDSのレナリマイド治療後に, 5q-を認めない細胞にt(7;11)(q22;q12), t(7;8)(q22;p21)などの7q転座が出現することがある。

トリソミー8 trisomy8

  • MDSにおけるトリソミー8の頻度は約10%で約65%を男性が占める。MDSの各病型で検出され, 急性白血病やMPNに加えてaplastic anemiaでも認められ病型特異性が乏しい。
  • トリソミー8を単独異常とする症例は予後中間群に分類される。しばしばシクロスポリンや抗胸腺細胞グロブリン(ATG: antithymocyte globulin)などの免疫抑制療法に反応する。
  • PNH型血球を検出する症例やHLA-DR15は免疫抑制療法に対する反応性が良好である。
  • トリソミー8のみを示すde novo MDSの67%はATGに反応することが報告されている。
  • aplastic anemiaからMDSに移行する症例ではトリソミー8の頻度が高いとされ, 複雑核型の中にトリソミー8が認められる場合は予後不良である。

20q-

  • 20q-はMDSの4%に認められ各病型で検出される。20q-単独, あるいは複雑核型のなかの一つの異常として認められる場合がある。
  • 真性多血症(polycytemia vera: PV)ではじめて報告され, PVでは8-10%で、AMLで1-2%の頻度で認められる。
  • 20q-単独異常はIPSSで5q-単独についで予後良好群に分類されている。
  • SKY解析では, 20q-も5q-同様に, der(20)t(17;20), der(20)t(20;21)などの不均衡転座により形成されている場合がある。
  • また20q-の同腕染色体であるider(20)(q10)del(20)(q11q13)[i(20q-)]が特異的な異常として報告されている。

トリソミー11

  • 予後不良な異数性異常としてtorisomy11がある。多くは単独異常でありMDSでは0.3%に認められる。
  • 芽球増多を認めRAEB-1/2と診断されることが多く, 約70%は中央値5ヶ月で白血病に移行する。移行に際して付加的異常をともなうことは少ない。
  • IPSSでは中間リスク群の染色体異常とされる。しかし生存中央値が14ヶ月と短いとする報告がある。
  • トリソミー11を認めるAMLと同様にMLL遺伝子の部分的タンデム重複(partial tandem duplication)が50%の頻度でみられる。

均衡型転座

  • MDSで均衡型転座を示すものは非常にまれで, 欠失型の異常を示す症例とはあきらかに病態が異なり, 現在ではMPNに分類されることが多い。
  • 3q26転座とt(5;12)(q33;p13)で詳細な分子遺伝学的解析がおこなわれた*2
  • inv(3)(q21;q26), t(3;3)(q21;q26)の再構成によりEVI1遺伝子(3q26)が過剰発現する。
  • 3q26転座のMDSは血小板数増多と異常巨核球の増加を特徴とし, AML-M7へ移行する傾向がある。
  • t(5;12)(q33;p13)は現在ではMPNに分類されているCMMLで認められる。切断点領域のTEL遺伝子とPDGFRbeta遺伝子の再構成が検出され, イマチニブが有効である。
  • 11q23(MLL)転座や21q22(AML1, RUNX1)転座を示す症例も報告されており治療関連性のものに多い。 AML1は点突然変異の面からも研究がおこなわれている。
 

頻発する染色体異常ほとんど二次的な遺伝的事象でありMDSの診断,予後判定に臨床的有用性が確立されている。*3

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頻発する染色体異常はMDSの診断, 予後予測に大切である。末梢血血球減少や骨髄の異形成のある患者さんにおいて頻発染色体異常を示すことはクロナール増殖の重要なマーカとなる。対照的に正常染色体や典型的でない細胞遺伝学的異常ではMDSの診断は困難となる。*4

頻発染色体異常はMDS症例の約1/2に認められる。*5最も多い, 単一細胞遺伝学的異常は, del(5q), trisomy8, del(20q)とmonosomy7およびdel(7q)である。*6*7

染色体異常は基本的遺伝子変異により遺伝子不安定性がひきおこされた結果おこった二次的な遺伝的事象と考えられる。*8このルールの唯一の例外は5q-症候群に認められる isolated del(5q)である。 実際に, 欠損部位にマップされるRPS14とmiR-145のhaploinsufficiencyは, このMDSサブタイプの病態生理のもととなっている。*9 *10*11

International Prognostic Scoring System(IPSS-R)による7012人のMDSデータベースからみたMDS予後と頻発染色体異常の関連*12によるとmedian survivalとAMLへの進展において細胞遺伝学異常はVery good, Good, Intermediate, High, Very Highの5つのサブグループに分類される。

この5-group cytogenetic risk 分類は近年 allogenic 血液幹細胞移植をおこなったMDS患者さんの予後推定に使われている。 特にcomplex karyotypeをもつ患者さんの移植後の予後は大変不良very poorである。2つ以上の常染色体モノソミーあるいはモノソミー1つとその他の構造異常を一緒に有するmonosomal karyotype患者さんではほぼ真実になる。*13

myelodysplasiaの病態生理について現在の理解をまとめる。*14

1. 基本的 driver mutationがself-renewalの可能な未熟造血幹細胞におこる。これらの変異, 典型的にはRNA splisingまたはDNAメチル化にかかわる遺伝子の変異は選択優越性(selective advantage)を得て局所でクローナルな増殖を決定する。

2. このクローン優位性のため, 変異した造血幹細胞は移動経路(migratory pathway)を積極的にたどり, そのほかの骨髄区域に徐々に定住して最終的には身体でのクローン優位性を得る。クローナルな細胞は、クローン増殖開始時に多数の背景的な, あるいはpassenger mutationを得る。最後には, ほぼすべての骨髄細胞がクローナル細胞由来となり基本的 driver mutationと付加的なpassenger mutationの両者をきたしている。

3. 明瞭な臨床症状の発現には遺伝子変異の協同を必要とする場合も、しない場合もあり, クロナールな造血前駆細胞(progenitor or precursors)の異常な分化や成熟が第一の原因となる。間違った増殖や成熟の異常, 過剰なアポトーシスが異形成, 無効造血, 末梢血細胞減少の原因となる。しかしいくつかのdriver mutationは白血球増加や血小板増加をきたす。

4. 典型的にはクロマチン修飾, 転写調節, シグナル伝達などの subclonal driver mutationをもつクロナール細胞の獲得により さらに, 正常に機能しない分化/成熟能をもつ造血細胞からなるサブクローンを生じる。結果として, この芽球群は明瞭な白血病細胞を発現するまで徐々に増殖を続ける。この状態は厳密にはモノクロナールではなく, 体細胞突然変異の異なるセットで特徴づけられるクローンのモザイクである。(intraclonal またはintratumoral heterogeneityというコンセプト)


*1 谷脇雅史 MDSの細胞遺伝学と病態 臨床血液51;1460-69
*2
*3 The genetic basis of myelodysplasia and its clinical relevance. Cazzola M, et al. Blood 2013;122(25):4021-34.
*4 Cazzola M, Malcovati L. Myelodysplastic syndromes--coping with ineffective hematopoiesis. N Engl J Med 2005; 352(6): 536-8. PMID:15703418
*5 Haase D, et al., New insights into the prognostic impact of the karyotype in MDS and correlation with subtypes: evidence from a core dataset of 2124 patients.Blood. 2007;110(13):4385-95.PMID:17726160
*6 Schanz J, et al., Coalesced multicentric analysis of 2,351 patients with myelodysplastic syndromes indicates an underestimation of poor-risk cytogenetics of myelodysplastic syndromes in the international prognostic scoring system.J Clin Oncol 2011;29(15):1963-70.PMID:21519021
*7 Schanz J, et al., New comprehensive cytogenetic scoring system for primary myelodysplastic syndromes (MDS) and oligoblastic acute myeloid leukemia after MDS derived from an international database merge.J Clin Oncol 2012;30(8):820-9.PMID:22331955
*8 Lindsley RC, Ebert BL. The biology and clinical impact of genetic lesions in myeloid malignancies.Blood. 2013 Nov 28;122(23):3741-8 Review.PMID:23954890
*9 Ebert BL, et al., entification of RPS14 as a 5q- syndrome gene by RNA interference screen.Nature. 2008 Jan 17;451(7176):335-9.PMID:18202658
*10 Starczynowski DT,et al., Identification of miR-145 and miR-146a as mediators of the 5q- syndrome phenotype.Nat Med. 2010 Jan;16(1):49-58.PMID:19898489
*11 Barlow JL et al., A p53-dependent mechanism underlies macrocytic anemia in a mouse model of human 5q- syndrome.Nat Med. 2010 Jan;16(1):59-66.PMID 19966810
*12 Greenberg PL, et al., Revised international prognostic scoring system for myelodysplastic syndromes.Blood. 2012;120(12):2454-65.PMID:22740453
*13 Deeg HJ, et al., Five-group cytogenetic risk classification, monosomal karyotype, and outcome after hematopoietic cell transplantation for MDS or acute leukemia evolving from MDS. Blood. 2012 Aug 16;120(7):1398-408.PMID:22767498
*14 The genetic basis of myelodysplasia and its clinical relevance. Cazzola M, et al. Blood 2013;122(25):4021-34.

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Last-modified: 2015-06-07 (日) 09:12:06 (1114d)