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骨髄腫の新しい診断基準

 

IMWG(International myeloma working group)の2014年改訂多発骨髄腫診断基準*1

 
  • 2003年のIMWG基準では, 高カルシウム血症(C), 腎障害(R), 貧血(A), 骨病変(B)のいわゆるCRAB症状と年2回以上の感染症, アミロイドーシスを臓器障害と規定し, これを有するものを症候性骨髄腫として治療対象としていた。
     
  • アルキル化剤の治療では, 症状出現前に治療を開始しても生存期間は延長できなかったが, 2000年代になり, サリドマイド, レナリミド(LEN), ボルテゾミブ(BOR)など新規薬剤が開発され,
    高リスク無症候骨髄腫を対象とした治療で, 症候が出現してから治療介入するよりも生存期間延長が示された. *2*3
     
  • IMWG2014新基準では, 骨髄腫診断事象(myeloma defining events; MDE-->CRAB)に加えて以下のMyeloma defining biomarkers が骨髄腫診断に必須となった.
     
  • 形質細胞が骨髄有核細胞の10%以上で, MDE(CRAB症状)の少なくとも1つを満たす場合, 症候性骨髄腫と診断する.(2003). 2014年診断基準からは, MDEを認めない場合でも一定の基準を満たせば多発性骨髄腫と診断される.*1
     
  • SMMの中でも短期間に高率にMMへ進展する超ハイリスク群を抽出するために骨髄腫診断バイオマーカ(myeloma-defining biomarker)が決定された意義が大きい.
    従来は治療適応のなかったSMMの一部の症例が治療適応となることを意味する.
 

骨髄腫バイオマーカのSLiM基準

 新たな骨髄腫バイオマーカのSLiM基準(骨髄単クローン性形質細胞≧60%, 遊離軽鎖比≧100, MRIで骨病変>1)が従来のCRAB基準に追加された.

  • 「症候性骨髄腫」の用語はなくなり, CRAB症状がなくても, SLiM基準を満たせば多発骨髄腫と診断し, 治療が推奨される.
     
  • SLiM基準を満たす症例でも長期にわたり進行の見られないもの, またウルトラハイリスク群(無症候性骨髄腫のうち2年以内に骨髄腫に進展するもの)については治療介入のエビデンスが乏しいという問題がある.

 骨髄単クローン性形質細胞≧60%

  • SMM(Smolderling multiple myeloma)276例中, 2%(6例)が骨髄形質細胞(BMPC)比率が60%以上であり, 診断後2年以内に95%が症候性骨髄腫に進展した*4無増悪生存期間中央値7.7ヵ月, 14ヵ月で5/6例(83%)がMMになるか死亡.
     
  • 651例SMMでの検討では, 21例(3%)が骨髄形質細胞(BMPC)比率が60%以上, 2年以内に95%がMMになる. MMへの進展期間中央値7ヵ月.
     
    BMPC比率が≧60%では, 貧血を示すことが多いが, 無症候であっても, 進行がはやいため, MMとみなすべき

 血清遊離軽鎖 serum free light chain(FLC)

  • 正常κ/λ比は0.26〜1.65 (kappa型; 3.3〜19.4mg/dl, lambda型; 5.7〜26.3mg/dl: SRL)
     
  • クローナル形質細胞増殖疾患では, FLC比が異常になることが多く, MGUSの33%, SMMで70%, MMの90%以上が異常値を示す.
    FLC比異常が存在すると, MGUS, SMM, ALアミロイドーシス, 孤在性形質細胞腫が進展する可能性が高い. *5

 MRIで巣状病変が > 1

 
 

IMWG2014年 MGUSと形質細胞異常関連疾患診断基準

IMWG-kijun02.jpg

mark-dg-25.gif non-IgM monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)

mark-dg-25.gif IgM-MGUS

mark-dg-25.gif light-chain-MGUS

mark-dg-25.gif smoldering multiple meyloma (SMM)

mark-dg-25.gif multiple myeloma (MM)

mark-dg-25.gif 弧発性形質細胞腫 solitary plasmacytoma

mark-dg-25.gif 弧発性形質細胞腫-微小骨髄浸潤

mark-dg-25.gif 形質細胞性白血病 plasma cell leukaemia; PCL

mark-dg-25.gif POEMS症候群

mark-dg-25.gif 全身性ALアミロイドーシス

monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS)

  • MGUSは, 50歳以上で約3%(M:F=4.0vs2.7)に, 75歳以上で約5%に認められ比較的遭遇頻度の高い疾患.
     
  • MGUSは, non-IgM, IgM, light-chainの3つに分類される. non-IgM MGUSは骨髄腫, 弧発性形質細胞腫, 免疫グロブリン関連アミロイドーシスへの進展が年 1%とされる.
     
  • IgM-MGUSはマクログロブリン血症, 免疫グロブリン関連アミロイドーシスへの進展が年 1.5%とされる。
     
  • light-chain-MGUSはlight-chain MM, ALアミロイドーシスへの進展が1年で 0.3%とされている
     
  • MGUSとされた患者さんは, 3から6ヶ月ごとに臓器障害の有無, 血清・尿中Mタンパク量の測定, 必要に応じて骨髄検査や骨X線検査が必要。
     
  • MGUSの血清M蛋白量は1.5g/dL未満の場合が約80%で, 2g/dL以上は約5%とまれであることから, M蛋白量が2g/dL以上ある場合はSMMやMMを考慮する必要がある.

血清免疫固定法によりM蛋白とそのtypeが確認される。クローナルな形質細胞は免疫グロブリン重鎖と軽鎖あるいは, 軽鎖のみを産生する. 頻度は以下のとおり.*6 *7

●IgG - 69 %, ●IgM - 17 %, ●IgA - 11 %, ●IgD - <1 %

●Biclonal - 3 %

●Kappa light chain - 62 %, ●Lambda light chain - 38 %

IgD Mタンパク陽性の症例は, ほぼ多発骨髄腫, ALアミロイドーシス, 形質細胞性白血病に限られるが, 2例のIgD-MGUSが報告されている. *8

Smouderling multiple myeloma (SMM)

  • SMMのM蛋白質はIMWG診断基準ではIgG, IgAであり, M蛋白質がIgMの場合はSMMよりむしろくすぶり型マクログロブリン血症を考慮する.
     
  • IgM型MMは極めてまれな疾患で, マクログロブリン血症の鑑別にはMYD88L265P変異の検出が有用である.
     
  • SMMの頻度はMMの約9%, 診断時年齢中央値は64歳(26〜90歳, 40歳未満は3%). 男女比は6:4.*9
     
  • SMM 267例のfollow upで(0〜29年, 中央値6年)158人(57%)がMMへ, 5人(2%)がアミロイドーシスに進展した.
     
  • SMMからMMまたはアミロイドーシスへの進展は期間で中央値4.8年, 診断後の5年が年10%, 6〜10年が年約3%, 11年以降は年約1%.
     
  • SMMはMGUSと比べるとかなりまれな病態で患者間での進展経過もばらつきが大きいがMMへの進展リスクが極めて高いためより慎重な対応が必要になる.
 

reviced ISS(R-ISS) system 2015; 簡便で強力な予後推定可能ステージングシステム

Palumbo A, et al. (J Clin Oncol 2015)*10

  • 3060人の新規に骨髄腫と診断された, autologous stem-cell transplantationを受けられる若い患者さんから, 高容量の治療を受けられない高齢の患者さんまでを評価している。
 
R-ISS-fig01.jpg
 
 
  • 5年生存(overall survival;OS); R-ISS stage I, II, IIIでは各々, 82%, 62% および 40%である.
  • 単独の予後因子だけでは, 26%の患者さんが予後良好なグループに間違って分類されていたと考えられる.
  • R-ISSは, 患者さんの年齢, 治療の影響なく, 各グループでOSの違いが明瞭に得られた.

high-risk, 予後不良とかかわる染色体転座

t(4;14)転座

t(4;14)転座, t(4;14)(p16.3;q32)は多発骨髄腫の染色体異常で2番目に多く, 15〜20%に認められる.

染色体末端部の転座のため, Gバンド法やSKY法では検出不能であり, FISHあるいはRT-PCRにより検出する.

転座Ig領域切断点は, ほとんどの例でスイッチ領域にあり4p16切断点はFGFR3遺伝子上流50-100kb, MMSET遺伝子内にあって,結果としてFGFR3遺伝子の異所性発現と同時に異常なIgH-MMSETmRNAの発現も認められる.

転座によりIgHのイントロンにあるエンハンサーが, 4p16.3にあるMMSET(multiple myeloma SET domain protein)およびFGFR3の2つの遺伝子に近接してこれらの遺伝子を過剰発現させると考えられている.

t(4;14)転座をもつmyelomaのうち約30%には受容体型チロシンキナーゼFGFR3の高発現が認められない. 一方全例にヒストンリジンメチル化酵素 MMSETの高発現が見られるため, t(4;14)骨髄腫の発がんにはMMSETが重要であるとされている*11

t(14;16)転座

t(14;16)(q32;q23), c-MAF, 大MAF群に属する転写因子であるc-MAFは, 通常形質細胞には発現していないが, Ig転座によりmyeloma患者さんの4-5%に異所性過剰発現している。

c-MAFのほか, t(8;14)(q24.3;q32)でMAFAが, t(14;20)(q32;q11)でMAFBが過剰発現し大MAF群転写因子は多発性骨髄腫患者さんの7-8%で過剰発現している.


*1  Rajkumar SV, et al. International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncol. 2014 Nov;15(12):e538-48. doi: 10.1016/S1470-2045(14)70442-5.
*2  Mateos MV, et al. Lenalidomide plus dexamethasone for high-risk smoldering multiple myeloma. N Engl J Med. 2013 Aug1;369(5):438-47.
*3  Mateos MV, et al. Lenalidomide plus dexamethasone versus observation in patients with high-risk smouldering multiple myeloma (QuiRedex?): long-term follow-up of a randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2016 Aug;17(8):1127-36.
*4  Rajkumar SV, et al. Diagnosis of smoldering multiple myeloma. N Engl J Med. 2011 Aug 4;365(5):474-5.
*5  Dispenzieri A, et al. Immunoglobulin free light chain ratio is an independent risk factor for progression of smoldering (asymptomatic) multiple myeloma.Blood. 2008 Jan 15;111(2):785-9.
*6  Kyle RA, et al. Prevalence of monoclonal gammopathy of undetermined significance. N Engl J Med 2006; 354:1362.
*7  Kyle RA, et al. A long-term study of prognosis in monoclonal gammopathy of undetermined significance. N Engl J Med 2002; 346-564.
*8  Kyle RA, Rajkumar SV. Monoclonal gammopathy of undetermined significance. Br J Haematol 2006; 134-573.
*9  Kyle RA, et al. Clinical course and prognosis of smoldering (asymptomatic) multiple myeloma. N Engl J Med. 2007 Jun 21;356(25):2582-90.
*10  Palumbo A, et al. Revised International Staging System for Multiple Myeloma: A Report From International Myeloma Working Group. J Clin Oncol. 2015 Sep 10;33(26):2863-9.
*11  Martinez-Garcia E, et al. The MMSET histone methyl transferase switches global histone methylation and alters gene expression in t(4;14) multiple myeloma cells. Blood. 2011 Jan 6;117(1):211-20.

添付ファイル: fileR-ISS-fig01.jpg 347件 [詳細] fileIMWG-kijun02.jpg 434件 [詳細] fileMM-IMWGkijun.jpg 267件 [詳細] fileMGUS-kijun.jpg 255件 [詳細] filemark-dg-25.gif 313件 [詳細]

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Last-modified: 2017-12-10 (日) 22:21:44 (372d)