Multiple myeloma--molecular pathogenesis<--クリックでページ参照。

多発性骨髄腫

 

形質細胞の単クローン性増殖と, その産物である単クローン性免疫グロブリン(Mタンパク)の血清・尿中増加により特徴づけられる.

日本では, 10万人に約5人の罹患率. 年間4000人の死亡者を数え, 全悪性腫瘍の約1%, 全造血器腫瘍の約10%を占める. 高齢者の人口増加にともない罹患率, 死亡率ともに増加傾向を示す.

多発性骨髄腫(Multiple myeloma; MM)はリンパ節胚中心で抗原刺激を受け活性化, 分化した形質芽細胞腫(plasmablast)が多段階発がん過程を経て発症する.*1

前がん状態としてmonoclonal gammopahy uncertain significance(MGUS)とくすぶり型多発性骨髄腫(smoulderling MM)が知られている. MMは原則として, 全例MGUSを経て発症するとされる. *2

 

MMの発症メカニズム

MGUSの時点で, 約半数で免疫グロブリン重鎖遺伝子座(14q32)を含む染色体転座を, 残りの半数では主に奇数番の染色体トリソミーが認められる. 前者は染色体数に変化はなく, 非高二倍体(non-hyperdiploidy)と呼ばれる. 後者では, 染色体数が増加し高二倍体(hyperdiploidy)型とよばれる.

上記の2つの細胞遺伝子異常がMMの発症のprimary eventsと考えられている.

 

normal plasma cell, myeloma cell, plasmacytoma(bone)の細胞組織像

non-neoplastic.jpg(91.0KB)myeloma02ok.jpg(77.0KB)plasmablastic nodules02.jpg(102.6KB)plasmacytoma-bone.jpg(95.2KB)
1. non-neoplastic2. multiple myeloma3. plasmablastic meyloma4. plasmacytoma
 

(サムネイル画像のクリックで大きな画像が見られます) 1-3はASD-Giemsa染色. 4はHE.

  • 1. 骨髄の非腫瘍性形質細胞は細動脈に沿って局在する.全身性炎症疾患などのときに増加がめだつ. 矢印の形質細胞では車軸様核が組織でも確認できる.
     
  • 2. 骨髄腫性形質細胞は細胞の大小不同, N/C比の増加, 粗なクロマチンや核小体出現などの異型性を示す。分布はびまん性不均一で血管に沿う傾向もみられなくなる.
     
  • 3. plasmablastic/ immature plasma cellのびまん性増殖からなるmyeloma症例. VLA-5(CD49e)染色結果などphenotypeの特徴がある. (MPC-1-, CD49e-, CD45-/+)*3
     
  • 4. 上腕骨のextramedullary plasmacytoma. 骨髄はmyeloma cell陰性. bizzarreな大型細胞や多型細胞が増殖している.
     
     

骨髄腫に関連する臓器あるいは組織障害(myeloma-related organ or tissue impairment; ROTI), または単に臓器障害(endo organ damage)の症候, 障害に起因する合併症は,

  • 骨髄腫と関連疾患の診断
     
  • 治療介入の是非の判断
     
  • 治療効果判定(特にPD; progressive disease)判定
     
  • 治療後寛解状態からの臨床的再発の診断と治療再開の判断

など重要な判断を下すよりどころとなる事象である.

合併症の存在は, 骨髄腫の治療レジメンの選択に影響を及ぼし, 薬剤の投与量調節が必要になり結果的に治療成績に大きくかかわってくる.

合併症は患者のQOLを高度に低下させ, ひいては生死にかかわるため骨髄腫治療と共に重要な治療標的であるばかりでなく, 発症の予防措置が必要になる.

CRABの設定--- Myeloma defining events(MDE)

文献 *4*5

CRAB; 直ちに治療介入が必要な症候性骨髄腫(symptomatic multiple myeloma)と非分泌型骨髄腫(non-secretory myeloma)にはCRABで象徴されるROTIの存在が必須.--->2014年からIMWGの新診断基準がもちいられ, 症候性骨髄腫という診断名はなくなった.

MGUSと無症候性(くすぶり型改)骨髄腫にはROTIを認めないことが条件. また骨の孤立性形質細胞腫(solitary plasmacytoma of the bone), 髄外性形質細胞腫(extramedullary plasmacytoma)でもROTIは認めないことが条件とされている.

  • C; Calcium level increased(カルシウム値増加). 補正血清カルシウム≧11.5mg/dL (2.65mmol/L)または基準値より1mg/dLをこえる上昇.
  • 診断時血清Caが 11mg/dL以上の症例は 日本で8.6%, Mayo clinicでは13%*6 *7
  • 血清Ca上昇が軽度なら無症状あるいは倦怠感など症状は軽微であるが, Ca値の上昇により食思不振, 便秘, 悪心嘔吐, 口渇をきたし, さらに高度になると脱力, 傾眠や昏睡などの意識障害をおこす.
     
  • 高Caは腎の尿濃縮能力を低下させ多尿, 脱水をきたし腎機能を低下させる. 腎機能低下は高Ca血症を悪化させるという悪循環をまねき腎不全にいたる. Oncologic emergencyのひとつで早急な治療を要する.
     
  • 高Caの発症機序は骨髄腫細胞が産生するDKK1(dickkopf homolog1)による骨芽細胞抑制とMIP1α(macrophage inflammatory protein 1α)およびRANKL(receptor activator of nuclear factor κB)による破骨細胞活性化による.*8
     
  • 高Ca血症は初診時だけでなく骨髄腫増悪時にもみられることがあり注意が必要である.
     
  • R; Renal insufficiency(腎不全); 血清クレアチニン>2mg/dL(177μmol/L)
  • MM診断時日本では14.9%, Mayo clinicでは19%が基準をみたしていた.*6 *7
     
  • 2014年の診断基準改定により,''実測あるいは推測クレアチニンクリアランスまたは糸球体濾過率40mL/分未満でも腎機能障害とみなすことになった.
     
  • 骨髄腫腎による腎機能障害を骨髄腫診断事象(MDE)とみなすため, 遊離軽鎖値が低い場合(<500mg/dL)は腎生検による確認が必要になる.
     
  • 初期症状は浮腫や倦怠感. 進行すると体液貯留による呼吸困難感, 嘔気や意識障害などの尿毒症症状がみられる. また高血圧や貧血が腎機能障害に由来することがある.
     
  • 骨髄腫の憎悪のみならず脱水や高Ca血症, 高尿酸血症の合併, あるいは薬剤性腎障害にも注意が必要である.
     
  • A; Anemia(貧血); 正色素性, 正球性かつHb値が正常下限より<2g/dlまたは<10g/dL.
     
    • 多発性骨髄腫診断時にHb 10g/dL未満の症例は日本では54.5%, Mayoでは35%と報告されている*6 *7
       
    • 症状は倦怠感や労作時動悸, 息切れなどであるが, 無症状のうちに健診や慢性疾患の定期検査で貧血がみつかりMMの診断にいたることもしばしば経験される.
       
    • 骨髄腫細胞が発現するFasリガンドやTRAILといったapoptosis誘導因子が赤芽球に作用することや, 骨髄腫細胞により刺激された間質細胞が産生するIL-6などのサイトカインによりペプシジンが過剰産生され鉄動態を抑制することが考えられている.*9 *10
       
    • 骨髄腫経過中の貧血進行では, 原疾患増悪以外にも, 腎障害によるerythropoietin低下, 骨髄線維症, MDS, 溶血性貧血やVB12欠乏の合併にも注意が必要.
       
  • B; Bone lesions(骨病変); 溶骨性病変, 重度の骨塩減少あるいは病的骨折
    • 単純X-p, CTあるいはPET-CTで1ヶ所以上の骨融解像, MRIでは直径5mm以上の病変を2ヶ所以上認めた場合をMDEの骨病変とする.
       
    • 診断時になんらかの骨病変をもつ症例は日本では77.3%, 脊椎圧迫骨折を有する例は46.3%, 脊椎以外の病的骨折をしめす例は24.6%と報告されている.*6
       
    • 四肢や肋骨の病的骨折, 脊椎圧迫骨折による疼痛や神経症状あるいは骨痛の検査過程でモノクロナール蛋白がみつかりMMの診断にいたることがしばしばある. 脊椎圧迫骨折により神経症状のある場合はoncology emergencyであり放射線療法などの治療を急ぐひつようがある.
       
    • ビスホスホネート製剤の定期投与により骨痛や病的骨折などのMDEを減少させるだけでなく, 生存期間を延長することが示されている.*11
       
  • Other(その他); 過粘稠症候群, アミロイドーシス, 年2回をこえて繰り返す細菌感染.

*1  Iida S, Ueda R. Multistep tumorigenesis of multiple myeloma: its molecular delineation. Int J Hematol. 2003 Apr;77(3):207-12.
*2  Weiss BM, et al. A monoclonal gammopathy precedes multiple myeloma in most patients. Blood. 2009 May 28;113(22):5418-22.
*3  Otsuyama K, et al. An increase in MPC-1- and MPC-1-CD45+ immaure myeloma cells in the progressive states of bone marrow plasmacytosis:the revised phenotypic classification of monoclonal marrow plasmacytosis (MOMP-2005). Int J Hematol. 2006 Jan;83(1):39-43.
*4  多発性骨髄腫Updating 第2巻 多発性骨髄腫の症候/合併症とその対策−骨髄腫の多様な臨床病態をいかに評価し管理するか−, 医薬ジャーナル社, 2013
*5  林 敏昭 V.多発性骨髄腫の検査, 診断 症候と身体所見 日本臨床 2016;74 suppl5: 198-201
*6  多発性骨髄腫の診療指針(日本骨髄腫研究会編), 文光堂, 2004
*7  Kyle RA, et al. Review of 1027 patients with newly diagnosed multiple myeloma. Mayo Clin Proc 2003; 78(1): 21-33
*8  Hayashi T, et al. Novel therapies for multiple myeloma. Br J Haematol 2003; 120(1): 10-17
*9  Silvestris F, et al.Negative regulation of erythroblast maturation by Fas-L(+)/TRAIL(+) highly malignant plasma cells: a major pathogenetic mechanism of anemia in multiple myeloma. Blood. 2002 Feb 15;99(4):1305-13.
*10  Sharma S et al.Involvement of hepcidin in the anemia of multiple myeloma. Clin Cancer Res. 2008 Jun 1;14(11):3262-7.
*11  Morgan GJ, et al.Long-term follow-up of MRC Myeloma IX trial: Survival outcomes with bisphosphonate and thalidomide treatment. Clin Cancer Res. 2013 Nov 1;19(21):6030-8.

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Last-modified: 2017-12-01 (金) 12:32:30 (354d)