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JAK/STATシグナリングのページ
Polycythemia vera 真性多血症 †
文献*1
clinical and morphological features
■Polycythemia--Erythrocytosis frequently combined with thrombocytosis/ leukocytosis.
■Suppressed endogenous erythropoietin production
■Panmyelosis--Bone marrow hypercellularity for age with trilineage growth
Driver genes
■JAK2V617Fが 96%の患者さんに認められる.
■JAK2exon12変異が約4%の患者さんにみられ, この患者さんのほとんどは赤血球増多単独 である.
■JAK2がwild typeの例は極端に少ない.
「JAK2V617Fがない場合のpolycythemia vera診断はかなり慎重にならなければならない」
PVでは多くの症例で, JAK2V617F変異は両アレルに同一遺伝子変異が存在する, ホモ接合性変異(homozygous mutation)を示す. これに対し, ET, PMFではホモ接合性変異はまれで, 一方のアレルのみが変異するヘテロ接合性変異である.
genotype, phenotypeとの関連, clinical outcome
■PV患者さんは血栓症のリスクが高くなる.
■PVは骨髄線維症に進展することがある.
■PVはごくまれに,急性骨髄性白血病と同様の芽球増加をきたすことがある. その場合骨髄異形成が先行することがある.
■JAK2V617F変異とJAK2 exon12変異症例の臨床経過はほぼ同じでかわらなかった.*2*3*4
WHO2016 Polycythemia vera のクライテリア †
■3大項目( three major criteria)
- 1. hemoglobin; 男性 > 16.5g/dl, 女性 > 16.0g/dl. あるいは Ht; 男性 > 49%, 女性 > 48%
あるいは赤血球量が増加している.
(循環赤血球量の測定にはアイソトープ検査が必要で行われている施設はほとんどない。)
- 2. 骨髄生検で年齢相当よりも, 過形成髄をしめす. 3系統増生(panmyelosis)があり, 顕著な赤芽球, 顆粒球, 巨核球系増生がある. 多型性を示す成熟巨核球が出現する(大きさにはバラツキがみられる)
- 3. JAK2V617FあるいはJAK2exon12の変異が認められる.
■小項目(minor criteria)
PVと診断するには3大項目すべてを満たすか, 大項目2つと小項目を満たす必要がある.
絶対的なerythrocytosis; 男性 Hb>18.5g/dl(Ht >55.5%), 女性 Hb>16.5g/dl(Ht >49.5%)があれば,
- JAK2変異があり, 血清エリスロポイエチン低値で, PVと診断できる.
- この場合にはPVの診断に, かならずしも骨髄生検は必要ではない.
- しかしながら, 骨髄線維症の合併を早期診断するためには骨髄生検による評価が必須となる.
2016WHOではPVのHb, Ht基準が引き下げられた.これは瀉血などにより検査値が低下している, masked PV症例を拾い上げることが目的であり'', masked PVではovert PVよりも血栓症の危険度が高く, 生命予後が不良であるという報告による. *5
JAK2 exon12 mutation †
- JAK2 exon12変異はJAK2V617F-陰性のPVに比較的特異的(relatively specific)で, 2007年にはじめて報告された.*6
- その後の研究で, N542-E543delが10をこえるJAK2 exon12変異のうちもっとも高頻度の変異であることが示された.*6*7*8*9
- JAK2 exon12変異には in-frame deletions, point mutation, duplicationがあり, 高度に保存された7つのアミノ酸残基(F537-E543)に高い頻度で検出される.*6
- JAK2V617Fのcounter partである, JAK2K539L exon12 mutaionをもつ症例では, マウスにおいて赤血球増多erythrocytosisを来すことが報告されている*6
- JAK2 exon12変異PV患者さんでは, 変異はheterozygousであることが多く, 臨床病理学的にerythroid myelopoiesisが強く(JAK2V617Fは顆粒球増多が目立つのに対して),erythropoietinはほぼ正常で, 診断時, より若い患者さんが多かった.*6*10*11
- JAK2 exon12変異PV患者さんの臨床経過はJAK2V617F変異PV患者さんと変わらずほぼ同じであった.*2*3*4
Case presentation †
IWT-case 67yo female.
X年3月の検診で白血球増加, 赤血球増加を初めて指摘された. 12月に脳塞栓症を発症して抗血栓治療を開始. 精査目的に血液内科紹介.
Hb 16.7g/dl, RBC 730x104/μl, Ht 55.9%, MCV 76.6, MCHC 29.9, WBC 17400/μl, diff; seg84.9, Eo3.6, Ba1.1, Mo2.6, Ly7.8, Plt 76.7x104/μl.
骨髄吸引クロット組織
cellularity 50-60%. 3系統造血細胞の増殖を認める. maturation arrestはない.
特に赤芽球系細胞が強く増殖している所見ではなく, 顆粒球系細胞増多がめだち, 巨核球の増加もある.
ETを含む慢性骨髄増殖性腫瘍 MPNの多くは, 多かれ少なかれ巨核球増多がみられ, CMLでも巨核球増多が見られる症例が多く, PVはより巨核球の増多が見られる.
CMLの巨核球は小さめで散在性. 凝集はみられない. pureなCMLでは血島が消える.
ET以外のMPNにおける巨核球増加は, 細胞質の広い明瞭な分化をした巨核球であっても, 大型単核や, やや異型的な巨核球の増加が主体である. 血小板凝集はあまり見られない.*12
PVで経過観察中にmyelofibrosisを合併した症例 †
myelofibrosis secondary to PV/ post-PV myelofibrosis case (<---クリックで症例の骨髄病理所見を見る)