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Progressive multifocal leukoencephalopathy(PML) 進行性多巣性白質脳症

1958年Åström らによりCLLとホジキン病患者の脳に発症するまれな脱髄性疾患として報告された特異な白質脳症. PMLの名称を提示. *1

  • 1961 Richardsonらは (1)oligodendrocyteの形態変化や炎症細胞欠如の病理像 (2)免疫不全との関連から本疾患は易感染性宿主におけるoligodendrocyteの感染症であると考えた.*2
     
  • 1965年 JCウイルスがホジキン病のPML脳から分離されたことがブレイクスルーとなり, PMLは, 腫瘍その他の疾患や治療により引き起こされる免疫抑制機転を介して合併してくる
    日和見的なウイルス感染症の一つであることが確定された.
     
  • 本邦では高橋,長島ら(1962年)の報告が最初. *3*4
  • 認知症症例に広範な脱髄病変が存在することを最初に報告した例; Hallervorden J (1930年) *5*6
     
    「多発硬化症と類似している脱髄が亜急性に進行し, 組織像は多発硬化症とは異なり, 小脱髄巣が白質に散在すること, 腫大した核を持つ細胞が出現する」と, 45歳Tbc症例および71歳の硬膜下血腫女性症例の脳病変について記載している
     
     

PMLの臨床*7

PMLの発症年齢は 40-60歳が多く, 小児ではきわめてまれ.

PMLは比較的まれな疾患であったが, AIDSの出現で約50倍増加したといわれている.
その後種々の免疫抑制薬や分子標的薬の使用に関連するPMLも増加している. MSやCrohn病の治療薬natalizmab関連PML*8*9

記憶力低下, 錯乱, 注意力低下, 痴呆など大脳精神症状が多く, その他 視覚障害, 言語障害, および不全麻痺, 運動障害など多彩な症状を伴う.

多い症状は 構音障害, 四肢筋力低下, 視力障害, 失調, 人格変化.

感覚障害, 痙攣, 頭痛, 複視は少ない. 視神経病変を来した症例はないとされている.

病理学的脊髄病変が確認される症例があるが, 臨床症候としてはまれ.

AIDS関連PML, natalizmab関連PMLと、それ以前のPMLでは, 臨床症候に違いが指摘されている.*7

症状の進行は速く, 発症後3〜6ヶ月で死の転帰をとるものが多い.

natalizumabは, α4β1インテグリンに対するヒト特異的抗体

●インテグリンは,細胞接着蛋白質(フィブロネクチン,ビトロネクチン,コラーゲンなど10数種類)に対する細胞表面上の受容体蛋白の総称.
αサブユニットとβサブユニットが1対1に非共有結合で会合したαβヘテロダイマーにより形成され,組み合わせによって結合するリガンド特異性が異なる.
そのうちα4β1インテグリンはVLA-4(very late antigen-4)と呼ばれ,白血球の細胞表面に発現される接着分子であり,その主なリガンドはVCAM-1(vascular cell adhesion molecule-1).

●MSの脱髄病巣にはリンパ球や単球が多く含まれており,炎症細胞が末梢循環から最初に病巣内の血管内皮細胞と接着し,脳実質内に侵入するものと考えられている.
VLA-4はこれらリンパ球や単球の細胞表面に表出され,血管内皮細胞の接着,脳実質内への侵入において重要な因子と考えられている


*1  Åström K, et al Progressive multifocal leuko-encephalopathy; a hitherto unrecognized complication of chronic lymphocytic leukaemia and Hodgkin's disease Brain 1958; 81: 93-111
*2  Richardson EP Progressive multifocal leukoencephalopathy N Eng J Med 1961; 265: 815-823
*3  長島和郎 他 進行性多巣性白質脳症-剖検からウイルス分離そして実験的脳腫瘍の形成- 病理と臨床1983; 1: 289-297
*4  長島和郎 他 新しく注目される大脳・脊髄白質病変 病理と臨床 1994; 12: 205-211
*5  Hallervorden J Eigenartige und nicht rubrizierbare Proesse. A: Hand buch der Geisteskrankheiten: Bumke O Ed. Verlag von Julius Springer, Berin, 1930, pp1063-1107
*6  澤 洋文, et al. JCウイルスの最近の基礎的治験 Brain and Nerve 2007; 59(2):101-108
*7  Berger JR, et al. PML diagnostic criteria: consensus statement from the AAN Neuroinfectious Disease Section. Neurology. 2013 Apr 9;80(15):1430-8. PMID:23568998
*8  Langer-Gould A, et al Progressive multifocal leukoencephalopathy in a patient treated with natalizumab. N Engl J Med. 2005 Jul 28;353(4):375-81.PMID:15947078
*9  Kleinschmidt-DeMasters? BK, Tyler KL. Progressive multifocal leukoencephalopathy complicating treatment with natalizumab and interferon beta-1a for multiple sclerosis. N Engl J Med. 2005 Jul 28;353(4):369-74.PMID:15947079

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Last-modified: 2019-08-20 (火) 11:35:31 (31d)