T細胞

制御性T細胞(Treg)とIL-17産生ヘルパーT細胞(Th17)

制御性T細胞(regulatory T cell; Treg )の存在と働き

T-torelance.jpg

免疫系はT細胞受容体, B細胞受容体の多様性で無数の外来抗原認識を可能にしている。一方自己抗原を認識する危険な自己反応性T細胞, B細胞クローンも産生される可能性があり, 胸腺,骨髄の未熟段階で「負の選択機構」により除去される。中枢性免疫寛容 central immunological toleranceと呼ばれる。 右図:T細胞の中枢性, 末梢性免疫寛容*1

しかし, この自己反応性クローン抑制機構は完全ではなく, 正常動物の末梢には機能的に成熟した自己反応性リンパ球が存在すると言われている*2

近年の研究で免疫系には免疫抑制に機能を特化したCD4+T細胞集団が内在し, 自己反応性T細胞の増殖・活性化を抑制的に制御して免疫自己寛容の維持や過剰な免疫応答の抑制に働いていることが明らかにされた。
このシステムを末梢性免疫寛容 peripheral immunological toleranceとする。

坂口らのマウス実験により, CD25+, CD4+T細胞が末梢における自己免疫反応を抑制する働きをもつことが示された. この抑制性T細胞のサブセットは, 健康な個体の末梢CD4+ T細胞の5-10%を占めており制御性T細胞(regulatory T-cell: Treg)と名付けられた.*3

  • TregはT細胞以外にもB細胞, NK細胞, NKT細胞, 樹状細胞(DC)など種々の免疫担当細胞を抑制する。

Tregの免疫抑制メカニズムの全貌はまだ不明であるが細胞接着依存性に他のT細胞活性化や増殖を抑制することが知られ, 抑制にはCTLA-4, TGF-β, IL-10, 他多くの分子が関与していると推察される。(下記参照)

  • CTLA-4
    主にCD4+T細胞に発現しDCなどのCD80/86と結合する。CD28よりも結合力が強く抑制的に働く。欠損マウスはリンパ増殖疾患により生後数週間で死亡する。
     
  • TGF-β
     
  • interleukin-10(IL-10)
    IL-10欠損マウスのTregはエフェクターT細胞を不活化できない''ことから, Tregの抑制作用にIL-10が関与していることは明らかなようです

制御性T細胞の種類

1. 内在性制御性T細胞 nTreg

制御性T細胞集団のうち, 内在性制御性T細胞(naturally occuring regulatory T cells; nTreg )は主に胸腺髄質で産生され, 活性化されて自己免疫だけでなく, 感染症, 腫瘍免疫, 移植片特異的免疫寛容などさまざまな免疫反応を抑制する。

  • 胸腺でのnTreg発生には髄質胸腺上皮細胞とDCの両者が関与しTCRによるMHC上自己抗原認識の他, IL-2とCD28, CD11a/CD18(LFA-1)などの共刺激が必要である。
  • ヒトでは胸腺Hassall小体がIL-7様サイトカインのthymic stromal lymphopoietinを産生, CD11c+ CDのMHC class, CD-LAMP, CD80/86の発現を増強させてFoxp3+ Tregの分化発生に関与すると考えられている。
  • nTregはTreg-specific demethylation regionの脱メチル化をうけており, エピジェネティックに安定性が保たれている*4
  • nTreg自身は抗原特異性をもつが, 抗原提示細胞の抑制, 膜型/分泌型TGF-β, IL-10などを介して抗原特異性とは無関係に周囲T細胞を不活化することより, Tregの作用は優性免疫寛容と呼ばれている*5
     

nTregの表面マーカ

  • CD25; interleukin(IL)-2 受容体α鎖分子を高率に発現する。
  • CTLA-4 (cytotoxic T lymphocyte-associated antigen 4)
  • GITR (glucocorticoid-induced tumor necrosis factor receptor related protein )
  • FR4 (folate receptor4)
  • neuropilin-1など

nTregの転写因子FOXP3の発現

nTregは転写因子FOXP3を特異的恒常的に発現する。 FOXP3の通常T細胞への強制発現は制御性T細胞と同等の機能導入が可能となることからFOXP3は制御性T細胞機能のマスター制御遺伝子でありTregの発生, 分化, その抑制機能に必須と考えられている。

2. 誘導性制御性T細胞(iTreg:inducible Treg)

末梢においてナイーブT細胞がTGF-βの存在下抗原刺激を受けるとFOXP3を発現することが知られており, 末梢におけるTreg分化の可能性が指摘され, 胸腺由来のnTregとは区別してiTregやadaptive Tregと呼ばれる。*1

  • しかしながらTGF-βで誘導されたiTregのFOXP3発現は不安定で一過性といわれている。
  • iTregの発生にはTGF-βが必要。IL-6が共存するとRORγtを発現してIL-17産生Th17細胞への分化がおきiTregへの分化は阻害されてしまう。
  • IL-6のTh17分化誘導は腸管リンパ組織のCD103+樹状細胞の産生するレチノイン酸により阻害されiTreg分化へシフトすることが知られている。
     

3. この他iTregには, IL-10を高産生するTr1(type1 regulatory T cells)、TGF-βを高産生するTh3が知られている。

Tregの特徴と働き

転写因子Foxp3(forkhead/ winged-helix transcription factor box P3)

  • Treg特異的に発現する転写因子. Tregに恒常的に認められる, CD25, CTLA-4(細胞障害性Tリンパ球抗原4), TNF受容体スーパーファミリーであるGITR(glucocorticoid-induced TNF receptor family-related gene)やOX40などの重要な分子の発現を制御している。
  • Foxp3はTregの発生・機能に必須であり, マスター制御遺伝子と考えられている. *6
  • Foxp3遺伝的異常はTregを完全に欠損し, ヒトのIPEX症候群やScurfyマウスに見られる致死的自己免疫疾患の原因となる.
  • immune dysregulation, polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked syndrome: IPEX症候群
    1型糖尿病, 甲状腺炎, 炎症性腸疾患, 重症アレルギーなどを特徴とする遺伝疾患でFoxp3の変異が認められる

Tregは恒常的にcytotoxic T-lymphocyte antigen(CTLA)-4などの抑制性分子を高発現しており, TCRを刺激しても, 増殖反応は示さず, IL-2を産生しない

さらにTregは, 共培養したCD4+ T細胞やCD8+ T細胞の増殖を抑制する。

 

Foxp3,CD45RA, CD15s(Sialyl Lewis X)による抑制機能をもったTregの分類*7*8

(1) naive Treg: Foxp3lo, CD45RA+または Foxp3lo, CD45RA+, CD15s- の細胞

(2) 活性化Treg: Foxp3hi, CD45RA- または, Foxp3hi, CD45RA-, CD15s+ 細胞

(3) Non-Treg: Foxp3lo, CD45RA-細胞 または Foxp3lo, CD45RA-, CD15s- 細胞

naive Tregは抗原刺激により活性化Tregに分化し, 強い抑制作用をもつ。 Non-TregはFoxp3陽性であるが抑制機能はもたない。ヒトTregにはFoxp3+細胞の中にNon-Tregを含むため注意が必要である。
マウスのようにCD25, Foxp3だけでTregの同定というわけにはいかず, 腫瘍細胞内の局所Tregの検証はむずかしい。

活性化Tregに特異的に発現している分子として, CC chemokine receptor(; CCR)4が期待されている。CCR4は活性化Tregに特異的であり, naive Tregには作用せず, 抗CCR4抗体薬(モガリズマブetc)は自己免疫疾患を惹起することなく, 腫瘍内浸潤活性化Tregのみを除去することが期待されている。

 

Tregの抑制機能の中心的メカニズムはCTLA-4とIL-2の制御である

IL-2の制御

IL2receptor01.jpg

IL-2はT細胞増殖に重要なサイトカインである。

  • IL-2受容体は通常, β鎖(CD122)とγc鎖(CD132)で構成されており, これにα鎖(CD25)が加わりIL-2に対して高親和性を持つようになる。TregはCD25を恒常的に発現しており, この高親和性受容体でIL-2と, より効率的に結合する。(右図*9クリックで拡大)
     
  • IL-2, IL-2R欠損マウスの表現型はリンパ節過形成や自己免疫疾患の発症であった. in vivoでは, IL-2が少なくともT細胞抑制的に働いていることを示唆しており, 実際IL-2はTregの維持, 増殖に必須のサイトカインである.
     
  • T-regは通常のT細胞と異なり, IL-2を産生しない. Tregでは特異的転写因子のFoxp3がIL-2産生に重要なAML1やNFATなどと結合してIL-2の産生を抑制している.
     
  • Treg自身はIL-2を産生せず高親和性受容体を恒常的に発現することにより, 周囲のIL-2を積極的に消費減退させている。このIL-2制御によりTregは免疫応答を抑制している。

CTLA-4の制御

  • CTLA-4?は抗原刺激後の活性化T細胞に発現する重要な抑制性分子である。CTLA-4はT細胞活性化に必要なCD28を介する共刺激を阻害している。T細胞表面のCD28は樹状細胞などに発現するCD80,CD86と結合して共刺激を得るが, CTLA-4はより強い親和性によりCD80,CD86と結合してCD28との結合を阻害している
     
  • TregのCTLA-4は樹状細胞のCD80, CD86の発現を減弱して, 共刺激を制限することが報告されている. *10
     
  • CTLA-4をTreg特異的に欠損させると自己免疫性心筋炎など多臓器に自己免疫疾患を発症し, 2ヶ月ほどで死亡する*10
 

helper T-cellのサブセット

Th1 cells

転写因子T-betを特異的に発現し, interferon(IFN)-γを産生してマクロファージを活性化, 細胞内寄生細菌の排除に寄与している。*11

Th1細胞は獲得免疫系が認識したシグナルを自然免疫系の細胞に伝達する役割を負う。活性化されたマクロファージは貪食能を高め, 細胞障害酵素を放出して近接する細胞を障害し, 好中球を局所に動員する。

Th1細胞応答は, ツベルクリン反応など遅延型過敏反応(delayed-type hypersensitivity:DTH)でみられる。DTHは有益な反応であるが過剰な場合は組織を強く障害してしまう。
感染や炎症遷延時には, Th1細胞が抑制性のIL-10を産生して過剰組織障害を防いでいるが, この機構により炎症が慢性化することがある。

Th1細胞は炎症性腸疾患や関節リウマチ(RA)などへの関与が考えられている. かつてTh1が主役とされていたがTh17細胞によると判明している疾患も多い. Th1とTh17は条件により相互に類似した表現型に移行するとの報告もあり今後の検討が必要.

CD4T-cell.jpg

Th2 cells

Th2細胞は, 転写因子GATA-3を発現し, IL-4, IL-5, IL-10, IL-13などを産生し, IgG1抗体とIgE抗体へのクラススイッチを制御している。

Th2細胞は, 原虫, 真菌, 寄生虫, 肺炎球菌などの細胞外で増殖する微生物にたいする抗体産生を介して感染を制御している。

特にIL-4, IL-5はIgE抗体へのクラススイッチと好酸球増加を制御しており, Th2細胞は獲得免疫系が認識したシグナルをB細胞系に伝達する役割をもつ。

Th2細胞は気管支喘息, アトピー性皮膚炎, など各種のアレルギーの病態形成に強く関与している。

以前に, 抗IL-5抗体が治療に応用されたが、血中や喀痰中好酸球は著減したが臨床症状の改善は不十分であった。現在Th2細胞応答を制御する新たな標的分子が検討されている。

Th17 cell*12

IL-23(IL-12とp40分子を共有するILとして発見された)により活性化されたIL-17産生エフェクターT細胞により実験的自己免疫性脳脊髄炎やコラーゲン誘導関節炎が惹起される。 これらの病態は以前Th1に惹起される自己免疫反応だと考えられていた。

この IL-17を産生するエフェクターT細胞群はCD4+ナイーブT細胞からTh1, Th2とは完全に独立して分化する細胞群であることが示され, 2005年Th17と名付けられた。*13

CD4+ナイーブT細胞からTh17への分化誘導にはTGF-β, IL-6が重要である。*14

IL-6はCD4+ナイーブT細胞に作用し, IL-21産生を促す。IL-21はオートクラインにより, Th17の分化, 増殖に関与している。

Th17の分化が開始された細胞ではIL-23受容体が発現し, IL-23シグナルを受け取るようになる。IL-23はTh17の増幅, 活性化を促進し, Th17の生存, 維持にも働く。

一方, Th1, Th2の産生するIFNγ, IL-4, IL-12, IL-27はTh17の分化や活性化を抑制している。つまり, Th1, Th2はTh17を抑制することになる。in vitroの系でTh17が観察されなかったのはこのためと考えられる。

Th17とiTreg

  • TGF-βはIL-6,IL-21と協調してCD4+ナイーブT細胞からTh17への分化を誘導するが、一方単独ではiTreg分化を促す。
  • IL-2やレチノイン酸は, TGF-βの存在下で, Th17分化を抑制し, iTregの分化を促進する。このようにTGF-βは機能が相反するTh17とiTregの両方の分化に関与している。
  • Tregのマスター遺伝子であるFoxp3はTh17マスター遺伝子のRoRγtの機能を抑制することが報告されている。
  • このようにTh17とiTregはバランスをとりながら免疫系のホメオスタシスを維持しているようである。
  • Th17は、IL-17(IL-17A), IL-17F, IL-21, IL-22, TNF-αなどのサイトカインを産生する。
  • IL-17は 上皮細胞や間質系細胞からG-CSFやIL-8を産生を誘導する。これによって好中球活性化や炎症部位への遊走を促進する。
  • IL-17は macrophageから, IL-1, IL-6, TNF-αなどの炎症性サイトカイン産生やICAMなどの接着分子の発現を促し, 炎症を惹起する。
  • IL-21はTh1やNK cellからのIFNγ産生を促進する。また、腸管線維芽細胞からMMP産生を促し, 炎症に関与することが示された。
  • IL-22は皮膚ケラチノサイト, 腸管上皮細胞から炎症性サイトカインやケモカインを産生させるだけでなく, 抗菌ペプチドのβディフェンシンやS100A9などの産生も促している*15

Tfh (follicular helper T-cell)

Tfh細胞は転写因子 bcl-6を発現し, 抗原に反応したB細胞が集まる胚中心に存在, B細胞の分化を促進する。

胚中心では, 濾胞性樹状細胞(FDC)がケモカインCXCL13(=BCL)を産生しており, CXCR5陽性のB細胞とTfh細胞を集簇させる。

Tfh細胞は共刺激分子ICOSとCD40L, サイトカインIL-21によりB細胞を活性化する。

Tfh細胞もTh2細胞同様に, IL-4を産生する。Th2が末梢臓器で機能するのに対し, Tfh細胞はリンパ節で働くと考えらている。

Tfhの誘導と機能発揮にはIL-21が重要であり, IL-21をターゲットにした治療法が開発中である。

マウスでは, 過剰なTfh活性化は, 自己反応性B細胞の活性化と自己抗体産生を惹起し, SLE様全身性自己免疫疾患を発症することが知られている。


*1 Chen W et al., J. Exp. Med198:1875-1886, 2003
*1  千田奈津子, 小林一郎 中枢性免疫寛容不全と末梢性免疫寛容不全における標的抗原特異性 Jpn J Clin Immunol 2015 38(3): 142-149
*2  Sakaguchi S, Foxp3+ CD25+ CD4+ natural regulatory T cells in dominant self-tolerance and autoimmune disease. Immunol Rev. 2006 Aug;212:8-27.
*3  Sakaguchi S et al Immunologic self-tolerance maintained by activated T cells expressing IL-2 receptor alpha-chains (CD25). Breakdown of a single mechanism of self-tolerance causes various autoimmune diseases. J Immunol. 1995 Aug 1;155(3):1151-64.
*4  Morikawa H, Sakaguchi S. Genetic and epigenetic basis of Treg cell development and function: from a FoxP3-centered view to an epigenome-defined view of natural Treg cells.Immunol Rev. 2014 May;259(1):192-205.
*5  Shevach EM Mechanisms of foxp3+ T regulatory cell-mediated suppression.Immunity. 2009 May;30(5):636-45.
*6  Hori S, et al Control of regulatory T cell development by the transcription factor Foxp3. Science. 2003 Feb 14;299(5609):1057-61.
*7  Miyara M, et al Sialyl Lewis x (CD15s) identifies highly differentiated and most suppressive FOXP3high regulatory T cells in humans. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Jun 9;112(23):7225-30.
*8  Miyara M, et al Functional delineation and differentiation dynamics of human CD4+ T cells expressing the FoxP3 transcription factor. Immunity. 2009 Jun 19;30(6):899-911.
*9  菅村和夫ほか編 サイトカイン・増殖因子 用語ライブラリー 2005;pp19-21 羊土社 東京
*10  Wing K,et al CTLA-4 control over Foxp3+ regulatory T cell function. Science. 2008 Oct 10;322(5899):271-5。
*11  Matsuzaki J, et al Immunosteroid as a regulator for Th1/Th2 balance: its possible role in autoimmune diseases. Autoimmunity. 2005 Aug;38(5):369-75.
*12  渋谷和子 Th17細胞とその機能 生体の科学 2008;59(5): 462-463
*13  Wynn TA.T(H)-17: a giant step from T(H)1 and T(H)2.Nat Immunol. 2005 Nov;6(11):1069-70.
*14  O'Garra A, et al Differentiation of human T(H)-17 cells does require TGF-beta! Nat Immunol. 2008 Jun;9(6):588-90.
*15  Cua DJ, et al Interleukin-23 rather than interleukin-12 is the critical cytokine for autoimmune inflammation of the brain.Nature. 2003 Feb 13;421(6924):744-8.

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Last-modified: 2020-03-11 (水) 20:30:32 (122d)