WikiPathologica
SMARCB1(INI1/SNF5)-deficient pleural sarcoma †
IWTcase 64 year-old female no smoker, アスベストへの暴露歴なし.
1年4ヵ月前に子宮頸部腺癌と診断され, chemoradiation therapyを受け経過観察中に咳嗽, 倦怠感が出現する.
労作時呼吸苦が加わり, 胸部X-pで胸水貯留を指摘された. CTでは肺に腫瘍なし. 右胸腔に隔壁が複数形成され多量の胸水が貯留していた. ドレナージによる胸水コントロールが不能となり右胸腔掻爬術およびタルク癒着術を施行.
子宮頸部腺癌転移の診断のため胸膜組織を採取する.
胸膜腫瘤病理組織所見
 |  |  |  |
胸膜腫瘤切離面 | HE loupe像 | HE loupe像 | 子宮頸部腺癌組織像 |
組織細胞所見:
 |  |  |  |
HE x200 | HE: rhabdoid cells | HE spindle-shaped cells | HE: rosett形成 |
粗なクロマチンと中心性の核小体がめだつ核をもつ多稜形または類円形の上皮様大型異型細胞がシート状密に増殖している. 部分的に線維化を伴う.
核が偏在, 広い好酸性細胞質のラブドイド細胞やspindle cellの集簇する所見がある. 細血管周囲に細胞の配列するpseudo rossett様構造が散見される. 腺管形成などの分化傾向は認められない.
 |  |
HE 小型のrhabdoid cells | HE stary-sky様でBurkitt lymphoma-like |
小型のrhabdoid cellsはplasma cell様にも見える. この症例はCD138が部分的に陽性となるため困惑する所見である.
またstarry-sky像をしめしBurkitt lymphomaに似る所見が認められた. Burkitt lymphomaの腫瘍細胞は中型リンパ球が多いので大型細胞が多い本例のHEでは違和感を感じる.
免疫組織染色:陽性結果
 |  |  |  |
loupe像では全体が陰性に見える. | INI1染色 x400 | BRG1染色 | p53 びまん性陽性 |
INI-1/SNF5は腫瘍細胞陰性(これがこの腫瘍の「陽性」所見), 内部コントロールの血管内皮, 炎症細胞は陽性である.
一方chromatin remodeling complex subunitのSMARCA4(BRG1)はびまん性に陽性であった. p53もほとんどの腫瘍細胞が陽性を呈した.
 |  |  |  |  |
CD34 | CD99(MIC2) | CD138 | βcatenin | vimentin |
vimentinがびまん性に陽性. CD34, CD138(syndecan), CD99(MIC2)が部分的に陽性になる. βcateninは一部の細胞が細胞質と核が陽性となった. わずかに膜陽性細胞あり?
免疫染色: 陰性
CK(AE1/3), CAM5.2, EMAなど上皮マーカはごくごく少数の細胞に染まるのみで陰性と判定.
calretinin, WT1, D2-40, LCA, CD20, CD3, CD56, HMB45, melanA, S-100, TTF-1, chromograninA, synptophysin, NUT, STAT6,陰性, kappa/lambda-ISH陰性. 子宮頸部腺癌で陽性であったER, p16, は陰性.
病理診断
1. primary INI1/SNF5-deficient pleural sarcoma またはPrimary epithelioid sarcoma, proximal type of the pleura.
2. adenocarcinoma of the cervix uteri, under chemoradiation therapy.
primary epithelioid sarcoma, proximal type/ SMARCB1(INI1/SNF5)-deficient pleural sarcoma †
子宮頸部腺癌のchemoradiation therapy中に胸膜腫瘤と胸水貯留を合併した症例. 腺癌の転移病変が疑われたが, pleural sarcomaで, 病理学的検討より, Epithelioid sarcoma, proximal type( EpiS-proximal)に相当する病変と診断された.
Epithelioid Sarcoma, proximal type
- 侵襲性(aggressive), 大型細胞型のepithelioid sarcomaが1997年Guillouら*1により近位型 proximal-type epithelioid sarcomaとして報告された.
- 近位型類上皮肉腫は''若年成人の, 主に肢帯部, 腰部, 骨盤部, 外陰部, 会陰部の深部組織に発生する。。近位型は多くの研究者によりEMRTの亜型と考えられている。
- conventional typeにくらべてproxymal type epithelioid sarcomaは早期に転移をおこす.*1.発症から数年以内に再発や転移がおこるのが普通だが, 初発から数十年後の再発が報告されている.*2転移先は肺, リンパ節, 頭皮が最も頻度が高い*2が, 骨や中枢神経を含むいろいろな部位への転移の報告がある。*3
胸膜に原発するEpithelioid sarcomaの報告が, 文献上3例認められるが非常にまれな病態と考えらえる.*4 *5 *6