SOFT TISSUE SARCOMAS WITH EPITHELIOID MORPHOLOGY 類上皮形態を示す軟部腫瘍*1

Angelo P. Dei Tos M.D. Dep. of Pathology& Oncology Treviso, Italy --International Seminar at Lake Hamana, 2004の講演より

間葉系腫瘍は顕著な類上皮形態を示すことがあり, しばしば上皮への分化を示すマーカの発現を伴う。これは診断を混乱させる大きな原因となる。類上皮性変化は皮膚線維腫を含む様々な軟部腫瘍に発現するが、ここでは悪性類上皮間葉系腫瘍について述べる。

Contents:

類上皮肉腫 epithelioid sarcoma

類上皮間葉系腫瘍の代表的腫瘍で, 1970年Enzingerにより始めて報告された。

  • 一般的に思春期や若年成人の四肢遠位部に発生する。まれに小児にも発生する。
  • 男女比は2:1と男性に多く発生する。
  • 約25%は表在性である。
  • 緩徐な進行性発育をする腫瘍*2であるとされている。筋膜, 腱, 神経鞘にそって腫瘍が増殖することが特徴。
  • 比較的おとなしい組織像にもかかわらず近位部に多発性に再発を繰り返したり転移率が高いことが特徴である。(再発率は90%, 転移率は35-40%で肺転移が最も頻度が高い)
  • 10年生存率は25-50%と幅があり, 再発, 転移, 死亡まで20年間追跡例も報告されている

類上皮肉腫(ES)の組織所見

多彩な形態を示すため, その診断は外科病理の最大の課題のひとつとなっている。加えて定型的なESは本来の生物学的悪性度が見落とされるほどの全くおとなしい形態をしめすことがしばしばあり, 訴訟事故になることが多い。
同一病変内に異なった生育パターンをとることも時に見られる

1. Classic necrobiotic(granulomatous)growth pattern

  • coalescent cystic nodules lined by festoons composed of polygonal and spindle cells 多角あるいは紡錘形細胞からなる花網(festoon)構造により縁取られた嚢胞状結節の癒合
  • 嚢胞の腔は壊死物質や硝子化した膠原線維が混在,充満している
  • 上皮様細胞の大部分は中心部に位置し紡錘形細胞成分は結節周辺部に偏在するが, 両者は次第に移行している。核は円形, vesicularで小型の核小体を有する。多型性は通常ごくわずか。

2. Fibroma-like variant
紡錘形細胞が優位で, 上皮様細胞は目立たない。豊富な膠原線維間質内にわずかな異型をしめす細胞が存在する。診断には免疫染色(cytokeratin陽性)が非常に有効となる。

3. Angiomatoid variant
最もまれなESのvariantです。組織では上皮様細胞, 紡錘形細胞からなる壁と血液に充たされた嚢胞性腫瘤。内皮のマーカが陰性であることから類上皮血管肉腫と鑑別される。
CD34+となることがありangiosarcomaと間違えるがCD31は必ず陰性.

免疫染色:どの亜型でもvimentin, 低分子量cytokeratin, 高分子量cytokeratin, EMAが陽性となるのが特徴。CD34は半数例に陽性。 ES classic necrobiotic variantは環状肉芽腫, リウマチ結節が鑑別となるが, これらはkeratin陰性, CD68陽性から診断可能となる。

4. Proximal-type/ variant
肢帯部, 腰部, 外陰部, 会陰部の深部組織に発生する。
ESの他の亜型と比べ大型, 多型性に富む多角細胞からなり, 核分裂像が多い。好酸性細胞質, 大型核小体をもつvesicularな偏在核が特徴であるラブドイド細胞がしばしば出現する。

腫瘍細胞はsmooth muscle actinに陽性。desminは陰性。

ラブドイド細胞:ES proximal variantによく出現するが, この亜型に特異的ではない。この細胞は予後の悪い種々な症例に見られるので, 単なる脱分化をあらわしているのかもしれない。

類上皮肉腫の鑑別診断

深部軟部組織に発生した場合, 間葉系腫瘍-とくに血管系腫瘍の類上皮亜型, 悪性黒色腫, 滑膜肉腫, 癌が鑑別に上げられる。癌は付属器由来, 転移性いずれでも一般的にCD34陰性, 他方ESはその半数がCD34陽性となる。皮膚に発生した場合, 癌では表皮異形性や表皮内癌の存在に注目すると鑑別できる。

  • 無色素性悪性黒色腫
    amelanotic melanoma はラブドイド細胞が出現するためproximal typeのESと診断を誤ることがある。ESにはない, 表皮向性の出現とmelanoma marker (S-100, HMB-45, melanA, tyrosinaseなど) 陽性が鑑別に役立つ。
  • 滑膜肉腫
    synovial sarcomaとESはともにcytokeratin, EMAが陽性となるが, その臨床像と病理形態所見はかなり異なっている。ESは皮膚を含めより遠位の構造を侵す一方, synovial sarcomaはより近位の病変が普通で, 表在部の病変はごくまれである。古典的なsynovial sarcomaはmonomorphic, biphagic ともに形態がESとoverlapすることはないが, 滑膜肉腫のlarge cell undifferentiated variantはESと鑑別が困難である。この場合はt(X;18)の証明が大変有用となる。
  • 腎外ラブドイド腫瘍 extra-renal rhabdoid tumor(ERT) proximal type ESの主要な鑑別疾患となる。ラブドイドの所見が主体の場合はHE組織での鑑別はほぼ不可能。ERTは乳幼児に発症し非常にagressiveな経過をたどる。

転移と治療

  • 組織亜型に関係なく, ESは独特な腫瘍である。肺への転移が高頻度におこるが, 他の肉腫と異なり領域リンパ節への転移をきたす。容易に転移性癌と誤診される.
  • 治療の第一選択は現在でも広範な外科切除である。化学療法・放射線療法を併用した四肢の保存的外科手術の可能な他の肉腫とは違って四肢遠位発症ESの場合, 近位方向への過酷な再発, 進展を防ぐために切断術を考慮する必要がある

症例リンク Luiz Fernando Froes Fleury Jr Primary cutaneous sarcomas An. Bras. Dermatol. vol.81 no.3 Rio de Janeiro June 2006:手掌に発生したESのマクロ写真あり

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硬化性類上皮線維肉腫 Sclerosing epithelioid fibrosarcoma (SEF)

SEFは線維肉腫の確立されたvariantで形態的には癌にとても類似している。*3成人の下肢, 肢帯, 体幹, および頭頚部に発生する傾向があり, 40歳代に最も多い。

SEFの組織所見

  • SEFの組織は一般に境界明瞭, 好酸性から淡明な類上皮細胞の網状または索状増殖が密に硬化した間質内に認められる。核分裂像は少ない。
  • 免疫染色では通常vimentinが陽性。まれに部分的EMA陽性, keratinが陽性となる症例もありうる。
  • 局所再発がほぼ半数の患者さんにおこり, 転移率は40%。

類上皮血管系腫瘍

類上皮血管内皮腫 epithelioid hemangioendothelioma(EHE)

通常痛みを伴う深部組織の腫瘤で成人の四肢に発生するのが最も多い。肺のintravascular bronchoalveolar tumor(IVBAT)として知られていた疾患は肺のEHEと考えられている。

  • EHEの病変はよく, 一本の血管から病変が発生するように思われる
  • 円形好酸性細胞から構成され, 索状や充実性胞巣構造を示して増殖している。細胞質内空胞を見ることも多い。
  • 腫瘍細胞は細胞学的に異型が軽く, 核分裂像は少ない, 粘液軟骨様の間質内に腫瘍細胞が認められる。
  • 免疫組織染色では血管内皮マーカのfactor軸慙抗原, CD31, CD34, 核内転写因子のFLI-1が通常発現している。

agressiveなEHE

腫瘍の30%はagressiveな経過をとる。著明な細胞異型, 壊死巣, 核分裂像の増加が認められる。 20%では局所再発がある。

  • 定型的EHEでは転移率は20%以下, 死亡率は約3%。組織像に異型を認める症例では死亡率は20%に増加する。
  • EHEは十分に悪性腫瘍とみなすべきである(2002年WHO分類)

EHEのES-like variant.

  • CD34が陰性のため, HE組織での鑑別診断が困難となっている。
  • cytokeratin, CD31, FLI-1はいつも陽性となり, ESとの鑑別に免疫染色が重要となっている。

類上皮血管肉腫 epithelioid angiosarcoma

大型, 類上皮型の血管内皮細胞を主体とする血管肉腫の亜型。典型例では特徴的な水泡状の大型核小体をもつ核や好酸性の豊かな細胞質の腫瘍細胞が増殖する。

  • 典型例では下肢の深部軟部組織に腫瘤を形成するが腹部やその他の臓器にも発生する
     
  • 肺, 副腎, 甲状腺は比較的頻繁に認められる。
     
  • 上皮様形態は軟部組織で報告される前に皮膚や甲状腺の血管肉腫で報告されている。
     
  • まれに癌に類似する充実性増殖パターンが主体の本腫瘍があり, 通常血管内皮マーカに加えてEMAやkeratinなどの上皮マーカが陽性をしめすため診断のピットフォールになる。
     
  • 高悪性度腫瘍。診断から1年以内に50%が死亡する。
     
  • 遠隔転移は肺, リンパ節, 骨, 軟部組織に頻度が高い。
     
  • 形態像, cytokeratinの発現において類上皮肉腫ESのangiomatoid variantとの鑑別が重要となる。本腫瘍はより多型性が強く, 通常CD31, factor爾鯣現していることで鑑別する。
     
  • 悪性類上皮血管内皮腫との間に線引きが困難なことがあるが充実性腫瘍増殖の存在はより類上皮血管肉腫を支持するてがかりとなる。

類上皮型悪性末梢神経鞘腫瘍

  • 悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST)は種々の分化を来すことがあり, これを背景に, 類上皮形態をとることがありうる. 腺様構造をとることがあり, keratinやEMAが陽性になったり, しばしばchromograninやsynaptophysinなど神経内分泌マーカを発現したりする.
     
  • 種々の分化を伴うMPNSTの半数はNF1 syndromeと関連しており, 鑑別に遺伝学的検査が有用なことがある.これらの症例では全例が滑膜肉腫 に特異的なt(X;18)転座が欠如していることが確認されている。
     
  • まれにMPNSTは全領域が上皮様形態を示すことがある。これは臨床病理学的に明確に区別される疾患の可能性がある.

類上皮型MPNST

胞巣型軟部肉腫 Alveolar soft parts sarcoma(ASPS)

腎外ラブドイド腫瘍 extrarenal rhabdoid tumor (ERT)

類上皮型多形型脂肪肉腫


*1 Dei Tos AP, International Seminar at Lake Hamana, 2004
*2
*3 Meis-Kindblom JM et al., Am J Surg Pathol; 19: 979-993, 1995

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Last-modified: 2020-05-21 (木) 13:39:01 (8d)