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Solitary fibrous tumor(SFT) 孤立性線維性腫瘍

当初, 肺, 心膜, 胸膜, 腹膜などの漿膜表面に発生することが認識されたが, その後さまざまな部位に発生することが知られてきた。

SFTには膠原繊維の豊富な多彩な形態学的特徴を示す通常型(conventional type), あるいは線維型(fibrous variant)と呼ばれるものから
樹枝状血管に富む膠原線維の少ない富細胞型(cellular variant)とよばれるものが存在する。

cellular variantは従来hemangiopericytoma(血管周皮腫)とされてきたものに相当する。同一腫瘍内で両者が同時に認められる、再発時に互いに移行する、または中間型の組織像を示す症例が存在することより, 現在では同一疾患概念でまとめられ hemangiopericytoma-SFTと記載される*1

臨床事項

  • 中年成人の徐々に増大する腫瘤. 腫瘍径が10cm以上になり圧迫症状を呈することがある。咳嗽, 胸痛, 呼吸困難が初診時の症状として多い.
  • hypertrophic osteoarthropathyを来すこともある.
  • まれには症候性低血糖を来す。これは腫瘍によるinsulin growth factorII産生のためと考えられる*2.
  • incidentalomaとして発見されるものもある.

病理所見

  • 好発部位は後腹膜, 四肢深部軟部組織, 腹腔, 体幹, 眼窩と髄膜を含む頭頸部
  • マクロでは境界明瞭で部分的に薄い線維性被膜でおおわれている白色調弾性硬の多結節状外観をていする。
  • 組織所見;
  • 通常型では高細胞密度と低細胞密度の領域が交互に認められる. 円形ないし紡錘形細胞が比較的厚く硝子化した壁をもつ分枝状, 鹿角状の血管をともなって特定の配列をとらず( = 「patternless」 pattern ), または束状, 花筵状配列を示し増殖する。核クロマチンは通常繊細で空胞状. 細胞間には膠原繊維が沈着し、ときに硝子化またはケロイド状変化もみられる。
  • 膠原繊維の石灰沈着や低細胞密度領域の粘液腫様変化myxomatous changeを示すケースもある。
  • 粘液腫と鑑別の必要な, 大部分粘液様変化を示す粘液型SFTが報告されている。(STAT6は染まる?, NAB2-STAT6 fusion scriptは?)
  • 腫瘍性多核巨細胞が出現することがある。病変全体に散在するか、血管拡張様angiectoid 間質裂隙に沿って認められる。この所見がめだつ腫瘍を巨細胞性血管線維腫giant cell angiofibromaとして記載していたが, 現在はgiant cell-rich variantのSFTと考えられている。
  • 富細胞型SFTは腫瘍径が大きいことが多く, 大腿深部軟部組織, 骨盤内, 後腹膜, 体幹, 頭頸部, 髄膜に好発する。中等度〜高度の細胞密度で単調な増殖を示す。膠原繊維の介在はわずかで、壁の薄い鹿角状staghornの樹枝状血管が目立つ。
  • 腫瘍細胞は円形ないし卵円形の均一な核をもつ。
  • 異型のない成熟脂肪細胞が富細胞型SFTに混在することがある。脂肪腫様血管周皮腫とよばれたが現在, 脂肪形成型fat-forming variantのSFTとされている。
  • SFTの90%はCD34陽性。通常型はびまん性で強い染色性。富細胞型のCD34陽性率は低く(%), 陽性例でも部分的で弱いintensityを示す。多くのSFTはMIC-2(CD99)とbcl-2が陽性を示す. 20-30%はEMA, SMAが陽性となる. S-100, Cytokeratin, Desminはほぼ陰性。

予後 prognosis

  • 10-15%のSFTは再発, または肺, 肝, 骨への遠隔転移を来す。縦隔, 腹腔, 後腹膜, 骨盤内 SFTは他の部位の腫瘍に比べてサイズが大きく, 富細胞型が多く, 再発・転移を生じるものが多いことが知られている。全摘が困難な部位であることも原因.
  • 同様に髄膜には富細胞型が多く, 髄膜以外の軟部組織SFTと比べて再発・転移を来しやすい。
  • 富細胞型, 通常型の予後は、富細胞型に転移が有意に多いものの,5生率はいずれも85%以上と報告されている。
  • SFTを形態像だけから予後, 臨床経過を予測することは困難。一見良性のものが転移する場合があり, また富細胞型であっても良性経過をとることがある。
  • SFT悪性の指標: 腫瘍径>5cm, 初回の播種巣, 浸潤性発育, 高細胞密度, 多型核, 腫瘍壊死, 核分裂像>4/10hpfを挙げる。
  • 胸腔SFTも胸腔外SFTでも初回の外科的完全切除によって良好な予後が得られる。

通常型SFTに隣接して高悪性度肉腫部分の認められる脱分化型dedifferentiated variantの報告があり, より再発・転移の危険性が高い*3

SFTに認められる遺伝子異常

NAB2-STAT6 fusion geneはSFTのdriver mutationである。

  • Robinson DR, et al Nat Genet 2013*4
    44歳女性のSFT症例ほか, SFT症例 計28例のtranscriptome解析で NAB2-STAT6 gene fusion が検出された。RT-PCR法により55症例のSFTにgene fusionを検出し高頻度にみられる遺伝子異常であることが確認された。
    SFTにNAB2-STAT2融合タンパクを検出, NAB2のearly growth response(EGR)-binding domainがSTAT6の活性化ドメインに融合していた。NAB2-STAT6 fusion geneの過剰発現は培養細胞の増殖を誘導し, EGR反応性遺伝子を活性化した。
    NAB2-STAT6融合はSFTのdriver mutationであり, 細胞分裂経路の転写抑制因子が転写活性化因子に転換してしまうことで腫瘍の初期発生を誘導する例であることがわかった。
  • Chmielecki J et al Nat Genet 2013*5
    whole exome sequenceにより17例のSFTにNAB2-STAT6 fusionを認めた。53個の腫瘍のうち29個の腫瘍で,このfusion transcriptの7つのヴァリアントの存在を確定(55%).
    このlocusでの融合頻度の下限よりNAB2-STAT6は特徴的なSFTの遺伝子異常といえる。

中部交見会No.1335 solitary fibrous tumor of the uterus 40歳代後半女性 金沢医科大学臨床病理学 中田聡子先生ほか

  • --> 子宮のSFT. NAB2-STAT6 fusion geneを検出。ESSとの鑑別が問題となった。

*1 Enzinger
*2 Fukasawa Y., et al. Solitary fibrous tumor of the pleura causing recurrent hypoglycemia by secretion of insulin-like growth factor II. Pathol Int. 1998 Jan;48(1):47-52. PMID:9589464
*3 Mosquera JM., et al. Expanding the spectrum of malignant progression in solitary fibrous tumors: a study of 8 cases with a descrete anaplastic component-is this dedifferentiated SFT? Am J Surg Pathol 2009; 33: 1314-1321
*4 Robinson DR et al., Identification of recurrent NAB2-STAT6 gene fusions in solitary fibrous tumor by integrative sequencing. Nat Genet. 2013 Feb;45(2):180-5. doi: 10.1038/ng.2509. Epub 2013 Jan 13.
*5 Chmielecki J et al., Whole-exome sequencing identifies a recurrent NAB2-STAT6 fusion in solitary fibrous tumors. Nat Genet. 2013 Feb;45(2):131-2. doi: 10.1038/ng.2522. Epub 2013 Jan 13.

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Last-modified: 2018-05-18 (金) 09:41:10 (90d)