*Endocrine Pancreas 膵内分泌組織 [#zc512b01] ''血液グルコース濃度を調節するホルモン''を分泌する器官で''ランゲルハンス島 ilets of Langerhans''と呼ばれる細胞集団をつくり, 膵臓全体に見られるが''尾部に多い''。サイズは大小さまざまで, 数個から何百個の細胞から構成され, 総体積は膵重量の1-2%。多角形の細胞が短く不整なコード状構造を示し,窓の開いた毛細血管網が間質となる。膵ランゲルハンス島の内分泌細胞は''胎生9-12週''に確認されるようになる。。((Histology A text and atlas with correlated cell and molecular biology 5th ed. Lippincott Williams&Wilkins;pp 598-599)) #ref(Langerhansilet.jpg,around,30%) ←クリックで大きな画像が見られます。ランゲルハンス島のHE染色像~ HE像でも小さめな細胞が辺縁に認められ、おそらくGlucagon産生のA細胞と考えられる。 #clear &color(#228B22){■};''ランゲルハンス島から分泌されるホルモン'' ランゲルハンス島のilet cellでは''Insulin, Glucagon, Somatostatin, Pancreatic polypeptide(PP)''の4つの主要なホルモンが産生される。~ おのおの1個の内分泌細胞は1種類のペプチドホルモンを産生する-[Insulin(β細胞), Glucagon(α細胞), Somatostatin(δ細胞), Pancreatic polypeptide(PP)(PP細胞)]と記載する文献が多いが, いくつかの細胞は1種類以上のhormonを産生しているようで免疫染色でグルカゴン陽性のα細胞にgastric inhibitory peptide(GIP), コレシストキニン(CCK)やACTH-endophorinなどが陽性となるevidenceが得られているようである。((Histology A text and atlas with correlated cell and molecular biology 5th ed. Lippincott Williams&Wilkins;pp 598-599)) ''Gastrin, vasoactive intestinal polypeptide(VIP)''は膵内分泌腫瘍Pancreatic endocrine neoplasmで産生されることがあるが正常のilet cellには認められない。 |Cell type|CENTER:%|産生ホルモン|ラ氏島での分布|CENTER:免疫染色図| |α細胞|15-20%|Glucagon|ラ氏島の辺縁部に多い傾向|#ref(Glucagon01.jpg,,20%)| |β細胞|60-70%|Insulin|ラ氏島の中心部に多い|#ref(Insulin02.jpg,,20%)| |δ細胞|5-10%|Somatostatin|ラ氏島辺縁部に多い傾向|#ref(somatostatin02.jpg,,20%)| &color(#0000ff){''Insulin インスリン''};~ インスリンは血糖調節において中心的な役割をはたす。 -細胞内部に存在するグルコース輸送体(GLUT4)の細胞膜への移行を促し脂肪組織や筋肉おけるグルコースの取り込みを高め, 血糖はすみやかに低下する。 -肝臓のグルコース取り込みには直接影響しないが, 解糖, グリコーゲン合成, 糖新生を制御する酵素に対抗する影響を介して長期的なグルコースの取り込みを亢進する。 &color(#228b22){''Glucagon グルカゴン''};~ ラ氏島のα細胞で作られ, その分泌は低血糖により促進される. -glucagonはホスホリラーゼを活性化することでグリコーゲン分解を促進する。エピネフリンとは異なり, 筋ホスホリラーゼには影響を与えない(筋細胞自身がglucagonに応答しない). -glucagonはアミノ酸や乳酸からの糖新生も促進する。 -glucagonのすべての作用はcAMPの産生を介して発揮される。 -肝のグリコーゲン分解と糖新生はインスリンに対抗するglucagonの高血糖作用に貢献する。 内在性glucagon, insulinのほとんどは肝を通過するとき血中から除去される。 #ref(somatostatin01.jpg,around,right,50%) &color(#ff6347){''Somatostatinソマトスタチン ''};~ 1973年Brazeauらによりヒツジ視床下部抽出液中に存在する成長ホルモン分泌抑制因子として発見されたペプチドホルモン。ソマトスタチンには 3, 14位のシスチン残基間S-S結合による環状構造をもつ''ソマトスタチン14''とソマトスタチン14のN末端にArg-lysの塩基ペプチドを介して14個のアミノ酸が連結した''ソマトスタチン28''の2種類がある。((島津章: ソマトスタチン ホルモンの事典 朝倉書店 pp47-55, 2003))(図)~ somatostatinは消化管に65%, 脳に25%, 膵臓5%, その他5%の割合で分布する。~ 中枢神経では大脳皮質, 海馬, 扁桃体に多い。視床下部では, 脳質周囲核に多く存在する。 膵と消化管に対する作用 -インスリン, グルカゴン, 膵ポリペプチドの分泌抑制, 膵外分泌抑制作用がある。 -消化管および膵ではδ細胞に存在し標的細胞や毛細血管周囲に細い細胞突起を伸ばして存在する。 -インスリン分泌にはSSTR(somatostatin receptor)5, グルカゴン分泌にはSSTR2が関与している -Ca/calmodulin介在性セリン/スレオニンホスファターゼのカルシニューリンが活性化され開口分泌過程を抑制する &color(#228b22){■};''ilet cellの免疫染色'' ilet cellは各々分泌するホルモン以外の免疫染色では''chromograninA'', ''synaptophysin'', ''CD56'', ''CD99'', ''NSE''および''PDX-1''陽性となる。 -PDX-1(Pancreas duodenum homeobox 1):ホメオドメイン遺伝子によってコードされる転写因子でイン スリン、ソマトスタチンなどの膵臓遺伝子転写を促進し、膵臓ランゲルハンス島の機能維持に必要不可欠であ ると考えられている。PDX1は胚形成期において、内胚葉上皮から腸管上皮へと分化していく過程でも働く。 最近ではPDX-1が特にインスリン分泌に関与していることから、糖尿病治療に役立つのではないかと注目を集めている。((Entrez Gene: PDX1 pancreatic and duodenal homeobox 1)) **Pancreatic endocrine cell tumor (PET) [#yfc874e6] -Case1: insulinoma -Case2: somatostatinoma -Case3: [[gastrinoma]] 腫瘍疾患名をクリックすると症例のページにジャンプします。 ■膵内分泌腫瘍Pancreatic endocrine tumor (PET)の良性悪性 ''内分泌腫瘍で&color(red){悪性の指標とすべきでないHE所見};ポイント'' -中等度の細胞異型(giant nuclei, bizzare nuclei, etc) -不完全な被膜の形成 -被膜外への腫瘍細胞の浸潤所見 Mitotic indexは悪性の指標にはならない:広範な浸潤・転移を示しながら核分裂像がほとんどないことも多い。 ''HE所見で悪性とできるのは'' -内分泌腫瘍に特有のorganoid pattern(下記)が著しく崩れている --basal palisading --trabecular pattern --rosett形成 -高度の核異型--poorly differentiated intermediate type or small cell carcinoma -多数の壊死巣