[[WikiPathologica]]

*中間径フィラメントとサイトケラチン [#y1b4b4e8]

''細胞骨格線維''&note{:細胞骨格 細胞の分子生物学 第5版 2013;pp965-1010 ニュートンプレス 東京};

動物細胞には細胞の空間的構成や力学的な性質の基本となる細胞骨格線維が''3種類''ある. ''中間径フィラメント''は機械的強度を与え, ''微小管''は膜でかこまれた小器官の位置や, 細胞内輸送の方向を決める. ~
''アクチンフィラメント''は細胞表面の形を決め, 細胞の移動に必要。
しかし, どれもそれのみでは役にたたず, 何百もの補助タンパク質が働いて, これらの線維どうし, また線維と細胞の他成分を連結する必要がある. 

真核生物には, すべてアクチンとチューブリンがある. 中間径フィラメント(アクチンとチューブリンの中間のサイズ=φ10nm から命名), は脊椎動物, 線虫, 軟体動物を含む後生動物の一部にしか見つかっていない, またこれらの生物においても, すべての細胞質内に必要なわけではない- 脊椎動物の中枢神経でミエリンを産生する, glia(oligodendrocyte)は中間径フィラメントを含まない.

中間径フィラメントは力学的ひずみを受ける細胞の細胞質に特に多く, 硬い外骨格をもつ節足動物や棘皮動物には通常見られない. 中間径フィラメントは''柔らかい動物の組織に物理的強度を与える重要な役割をはたしているらしい''.

''中間径フィラメントの構築''

#ref(int-filament.jpg,around,right,80%)
中間径フィラメントには, さまざまな種類があり, 配列多様性が大きい. 中心部αヘリックスには40回程度の7残基反復モチーフがあり, この部分が長いより合わせコイル構造を作っている. この領域はisoformすべてに共通であるが, N末端, C末端の球状領域には大きな違いがある.

細長いポリペプチド分子が中間径フィラメントを構成しており, 中央のαヘリックス領域が別の単量体と巻き付いてより合わせコイル構造を形成. さらにこの平行した二量体が互いに逆向きに少しづつずれて並び四量体を形成. これがチューブリンのαβ二量体あるいはアクチン単量体に相当する遊離サブユニットとなる.

中間径フィラメント・サブユニットにはアクチンやチューブリンとは異なり''ATP結合部はない.''


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***中間径フィラメントの種類(脊椎動物の主な中間径フィラメント) [#p8413092]

-''細胞の種類により発現する中間径フィラメントの種類が異なっている''.(右図)

#ref(int-filamentType.jpg,around,right,75%)
最も多様な中間径フィラメント・ファミリーは&color(crimson){ケラチン(keratin)};類で, ヒト上皮細胞には約20種類あり, 毛髪や爪に特異的なものがさらに10種類ほどある. genomeの解析から約50種類あることがわかっている.

keratinフィラメントはI型(酸性)とII型(中性か塩基性)のケラチン鎖が等量混合してヘテロ二量体を形成し, その2本が結合して基本となる四量体サブユニットが構成される.

ジスルフィド結合で架橋されたケラチンの網目構造は細胞が死んでも残って皮膚外層(角化層), 毛髪, 爪, 動物のかぎ爪やうろこなどの堅固な外被を作っている。

&color(red){ケラチンの多様性は上皮がん(癌腫)の診断に応用される. ''発現するケラチンの種類から原発巣がどの上皮組織由来かを推察することができる''.};

○--->[[サイトケラチン20, 7免疫染色による原発不明癌, 原発巣の推定>#k24acf02]]
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**サイトケラチンの種類 [#k880a7d2]

-サイトケラチンには約20種類のサブタイプが存在し, 酸性ケラチン(Type I)と塩基性ケラチン(Type II)にわけられる. ~
Type I, Type IIの両者は, おのおの2本づつのケラチン線維が四量体を形成する.


#ref(cytokeratins.jpg,around,right,80%)

-分子量では, ''低分子ケラチン(40-54kD: CK7, 8, 17 - 20)''と''高分子ケラチン(48-67kD: CK1〜6, 9〜16)''に分類される.~
皮膚の角化型重層扁平上皮に発現するCKの分子量が最も大きく, 次いで角膜や粘膜の非角化型扁平上皮, 最も低分子なCKは腺上皮や重層扁平上皮の基底細胞に主に発現している.

''抗サイトケラチン抗体''&note{Izumi:泉美貴 サイトケラチンのタイプについて 病理と臨床 2007; 25 臨時増刊号: 310-319};

>1. &color(crimson){抗panCytokeratin (AE1/AE3)};;~
AE1が酸性ケラチン(Type I)のCK10/ 12/ 14/ 15/ 16/ 19, AE3が塩基性ケラチン(Type II)のCK1/ 3/ 4/ 5/ 6/ 7/ 8を認識する. 汎サイトケラチン抗体. ''上皮性か非上皮性かの鑑別に使用される. 肝細胞は陰性.'' &color(red){''AE1/3にはCK20が入っていないよ。''};

>2. &color(crimson){34βE12};
>
CK1, 5, 10, 14を認識する. 抗高分子ケラチンの代表. 扁平上皮系腫瘍と導管上皮由来癌に陽性となる. 
-導管円柱上皮に陽性. 乳癌, 膵癌, 胆管細胞癌, 唾液腺腫瘍 肺癌など. 
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-膀胱癌, 中皮腫, 類上皮肉腫が陽性.
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-前立腺癌; 基底細胞に陽性. 前立腺癌疑い病変に一部でも陽性像が確認されれば基底細胞が残っており, 良性ないし反応性病変と診断することが可能. CK14抗体(中分子CK)抗体もこの目的でつかわれる.
-前立腺癌; 基底細胞に陽性. ''前立腺癌疑い病変に&color(red){一部でも陽性像};が確認されれば基底細胞が残っており, 良性ないし反応性病変と診断することが可能''. CK14抗体(中分子CK)抗体もこの目的でつかわれる.
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-正常唾液腺の筋上皮細胞に陽性. 筋上皮系細胞腫瘍では必ずしも陽性にはならない。
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-肝細胞のマロリー硝子体が染まる. 
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-Oncocyte: 甲状腺の正常および腫瘍中のオンコサイトを認識する. (CK14)

>3. &color(crimson){CAM5.2(CK7/18)};
>
低分子ケラチンの代表的抗体. 腺上皮, 腺癌および内分泌系腫瘍の検出に有用. 重層扁平上皮系細胞は陰性. 
-陰性, 例外的染色性を示す腺癌; 
--胃癌は1/3は中等度に染まるのみ. 2/3はびまん性陽性. 大腸癌はほぼ100%で陽性
--膵腫瘍のうち, solid and cystic papillary tumorでは陰性
--乳癌;''導管癌では細胞辺縁が陽性を呈する''. &color(red){小葉癌では, 核周囲が強くそまる.};
--''正常肝細胞と肝細胞癌で陽性''(CAM5.2+[CK18が陽性], AE1/3陰性)
--腎癌(淡明細胞癌) CAM5.2+, AE1/3±, CK7-, CK20-, 34βE12-.
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-神経内分泌系腫瘍 (CAM5.2+, CK7+)
--小細胞癌, 膵内分泌腫瘍;核に隣接してドット状に陽性. 
--carcinoid: しばしば陽性. 消化管カルチノイドは80%が陽性.
--下垂体腫瘍:しばしば陽性
--&color(crimson){''嗅神経芽腫: 例外的に30%程度の陽性率を示す.''};
--中皮腫: 良性悪性の中皮に陽性.
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-汎CK(AE1/AE3)抗体よりも診断に有用な場合
--肝細胞癌, 腎癌, 紡錘形細胞癌(低分化扁平上皮癌), セミノーマを除く''yolk sac tumorなどの胚細胞腫瘍''

>
-例外的に扁平上皮系細胞での陽性像
--紡錘形細胞癌(低分化扁平上皮癌); 鼻・咽頭・喉頭・皮膚
--扁桃の重層扁平上皮
--食道:扁平上皮基底細胞に中等度発現. 食道癌でも90%の高率で陽性となる.
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-転移性脳腫瘍
--グリア細胞やアストロサイトおよびその腫瘍, 髄膜腫などでAE1/3, 34βE12が陽性となるが, CAM5.2は陰性. 脳の転移性癌検出に有用.
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-リンパ節の傍皮質領域, fibroblastic reticulum cells(interfollicular dendritic cells)に陽性となるため癌の転移と誤診しないように注意が必要.脾や扁桃でも同じ種類の細胞に陽性となる.

>3. &color(crimson){CK5/6};~
CK5が扁平上皮(基底細胞), 筋上皮細胞, 中皮細胞, 移行上皮などで発現. 扁平上皮への分化を確認できる抗体.
-中皮腫
--上皮型の90%以上に陽性
--biphasic mesotheliomaでは, 上皮成分に40%, 肉腫様成分には10%の陽性にすぎない。
--desmoplastic (sarcomatoid) mesotheliomaでは陰性
--すべての中皮腫はAE1/AE3に≧70%高率に陽性. 
--CK5/6は大多数の腺癌には陰性のため, 肺腺癌(Ber-EP4+, MOC31+)と中皮腫(CK5/6+, calretinin+)の鑑別に有用.
--肺扁平上皮がんと中皮腫の鑑別には使えない.
--反応性中皮増生か腫瘍性中皮かはCK5/6の染色では鑑別は不能である.
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-扁平上皮癌: 皮膚扁平上皮癌(100%), 基底細胞癌(100%)陽性. AE1/3+, CK5/6+
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-その他の正常細胞
--乳腺の筋上皮細胞は陽性. 前立腺の基底細胞も陽性
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-その他の腫瘍
--肺大細胞癌の多く
--胸腺腫 100%に陽性
--唾液腺腫瘍:すべての癌の90%以上に陽性
--移行上皮癌: 6割に陽性. 扁平上皮分化を示す移行上皮では特に陽性率が高い.
--子宮内膜癌の50%に陽性
--卵巣癌の一部に陽性.

>&color(crimson){CK19};~
最も低分子量のケラチン(40kD). 単量体で存在する. 
-ほとんどの腺と非角化扁平上皮基底細胞に存在
-CK18(CAM5.2)と類似した反応性を示す. 
-上皮への分化を検出するマーカに使われることがある.
-肝細胞には陰性. cholangiolocelluar carcinomaには+を示す。

>&color(crimson){CK7};~
広く腺上皮で陽性. 内皮細胞にも陽性となる.
-腫瘍では&color(red){消化管以外の腺癌};, 移行上皮癌, 中皮腫, 胸腺などに陽性.
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-各臓器の陽性像
--乳房外パジェット病: CK7+, GCDFP15+, Ber-EP4+, CK20-
--腎集合管: 正常集合管+、Bellini管癌+, 近位・遠位尿細管-, 淡明細胞癌-.
--正常細胞で陰性: 大腸上皮, 扁平上皮, 肝細胞, 近位・遠位尿細管, 前立腺腺房上皮は陰性.
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-陰性の腫瘍細胞: ''子宮頸部を除く''扁平上皮癌, 肝細胞癌(15%. 低分化癌では陽性率が上がる), 腎癌, 前立腺癌, 小腸癌, 大腸癌, 副腎癌, 肺小細胞癌など.
--胃癌は30-50%, 直腸癌では20-50%が陽性となる.
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-腺上皮以外での陽性
--子宮頚部異形上皮および扁平上皮癌
--神経内分泌腫瘍(CK20-, CAM5.2+): 臓器により陽性率が異なる. 甲状腺髄様癌100%, 乳腺78%, 肺20-43%, 子宮頚部14.3%, 下垂体腫瘍10%, 褐色細胞腫 〜0%.
--移行上皮・移行上皮癌:主体はCK20+, CK7+ (症例により差がある)
--中皮腫(CK7+, CAM5.2+)正常から悪性まで陽性.
--血管内皮細胞に陽性
--&color(crimson){肝細胞癌のfibrolamellar variantに陽性};

>&color(crimson){CK20};
非常に臓器特異性の高い発現を示す. 癌になっても染色性が保たれ, 悪性腫瘍の原発部位同定に有用.
-carcinoidや神経内分泌腫瘍での発現率は低いが&color(red){''皮膚メルケル細胞癌では核に隣接したドット状の特徴的な染色像を呈する''};。
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-主な陽性像: 胆嚢, 膵臓, 胃, 小腸, 大腸などの消化管上皮. 卵巣粘液性腫瘍, メルケル細胞癌
-肺, 乳腺では粘液癌であれば25〜50%の高い発現をしめす
-扁平上皮癌:ほとんど発現しない。扁平上皮癌と移行上皮癌の鑑別ができる.
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-肝細胞癌と胆管細胞癌の鑑別
--肝細胞癌: AE1/3+, &color(red){CK7-, CK20-};, CK8/18(CAM5.2)+
--胆管細胞癌: AE1/3+, &color(red){CK7+, CK20+};, CK8/18(CAM5.2)+
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***サイトケラチン20, 7免疫染色による原発不明癌, 原発巣の推定 [#k24acf02]

#ref(CK20CK7.jpg,around,80%)
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左図はCK20, CK7染色による積極的な臓器特定診断, 右図は95%の確率で特定臓器の癌を否定する. (内容を混同しないように注意)~
高原大志ほか, 腹部後腹膜原発不明がんの鑑別 病理と臨床 2017; 35(2): 160-166より

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&color(crimson){''SIZE(28){■}''};''サイトケラチンのaberrant expression'' 文献&note{Izumi:泉美貴 サイトケラチンのタイプについて 病理と臨床 2007; 25 臨時増刊号: 310-319};改変追加.
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#ref(CK-lowfreq01.jpg,around,right,70%)
#ref(CK-highfreq01.jpg,around,right,70%)

-組織診断において最初の免疫染色ステップはCK, LCA, Desmin, S-100によって組織由来を推定することから始まる。~
CK陽性は 腫瘍が上皮性細胞由来であることの根拠として使われるが, 非上皮性腫瘍においてもCK陽性になる場合があり, 注意が必要である。CKの aberrant expressionやabnormal expressionと呼ばれる。

-通常上皮は細胞膜にCK陽性を呈することが多い. aberrant expressionの場合は細胞質にびまん性や斑状(dot-like), 核近傍に点状にそまるなど特異な染色態度をとることがある。

-形質細胞ではCKではないが, 上皮マーカのEMAが高頻度に染色され, またsyndecan-1(CD138)陽性となることはよく知られ形質細胞マーカとなっている. syndecan-1(CD138)は NUT-positive midline carcinomaにも染まってくる.

-横紋筋肉腫ではCKのほか, &color(#8b008b){''CD56, synaptophysin, chromograninAなど神経内分泌マーカ''};がaberrant expressionする.--->[[横紋筋肉腫の症例>Alveolar rhabdomyosaroma]]ページへ

-&color(red){ALK+ B-cell lymphoma};はCK, EMA, CD-138が陽性になる。CD20, CD3は陰性。名前にまどわされないように。ALKを染めてみることが肝。

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