[[WikiPathologica]]

*'''GNAS''', GNAS complex locus, gene ID:2778 NCBI [#h3a93693]
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***''NCBIのGNAS gene サマリー''(Aug 2012)(([[NCBI Gene ID: 2778, GNAS GNAS complex locus [ Homo sapiens (human) ]:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2778]])) [#a7f97460]

このlocusは高度に複雑な発現パターンを内蔵している。4つの異なるプロモーターと5'側エクソンから派生する母方, 父方および両アレル由来の転写産物を生じる。転写物のいくつかは5'側エクソンに''differentially methylated region(DMR)''を含んでいる。このDMRは''刷り込み遺伝子 inprinted genes''に通常認められ, 転写物の発現に関与している。

対立するストランド上の重複するlocusよりアンチセンス転写物が産生される。このlocusより生じる一つの転写物、またアンチセンス転写物は, ''父方由来にnoncoding RNA''を発現しこの領域のインプリンティングを制御しているようである。

さらに, 二次的に重複するORFを含む転写物は''構造的に無関係なタンパク-Alexをコード''している。

''下流エクソンのスプライシングの変化''も観察され, &color(red){''異なったフォームの刺激性Gタンパク質 αサブユニット(Gsα)''};を形成する。このサブユニットは''アデニルサイクラ―ゼ(adenyl cyclae)活性化''や種々の細胞応答と相互に作用する&color(blue){''受容体リガンドとリンクした古典的なシグナル伝達経路の主要な構成要素である。''};

異なったアイソフォームをコードする複数の転写バリアントがこの遺伝子に認められている。遺伝子の変異はpseudohypoparathyroidism type 1a, Mc Cune-Albright症候群, progressive osseus heteroplasia, 骨のpolyostotic fibrous dysplasia, いくつかの下垂体腫瘍の原因となる。

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''図:GNAS complex locus由来, 複数のimprinted senseおよびantisense''((Turan S, et al. The GNAS complex locus and human diseases associated with loss-of-function mutations or epimutations within this impreinted gene Horm Res Paediatr 2013;80:229-241))
#ref(GNAScomplexlocus.jpg,,80%)
父方由来あるいは母方由来の遺伝子アレルの発現がメチル化によりエピジェネティックにそれぞれ, 制御/制限されている遺伝子をインプリンティング遺伝子とよぶ。ヒトにはおよそ100種類のインプリンティング遺伝子が発見されている。~
GNASでも母方, 父方アレル各々のpromoter領域に異なるdifferential methylated regions(DMR)が設定されており異なる転写物が産生されている.
-&color(blue){'''''XLαs, A/B'''''(1Aまたは1'とも呼ぶ),'''''AS''''' 転写物は父方由来のみ};に排他的に発現し, 

-&color(red){'''''NESP55(Neuroendocrine secretory protein55)'''''は母方由来};で転写される。

-''Gsα''の推定されるpromoter領域はメチル化されておらず, differential methylationはなく, Gsα転写物はほとんどの組織に両方のアレル由来で発現している。しかしながらいくつかの組織(近位尿細管, 新生児褐色脂肪組織, 甲状腺, 生殖腺, 視床下部傍室核, 下垂体)では、まだ原因不明の父方由来Gsα消失が認められる。

-''NM_001077490.1 → NP_001070958.1  protein ALEX isoform Alex''~
転写変異(transcript variant): この変異(2, GNASXLでも知られる)は父方由来に発現する。variant1と比べ, 変わった5'側エクソンを含む。またこの転写変異はAlexとXLをコードする2つの重複するORFを持っている。~
Alex(=alexX)のRefSeqはGNAS遺伝子にコードされるイソフォームのいずれとも同一性はみられない。XLasと相互反応し, 神経内分泌細胞のG-proteinシグナルにこの相互作用が重要である。

**''ゲノム刷り込みと刷り込み遺伝子 genome inprinting and inprinting gene'' [#c08a4829]

>哺乳類細胞は父方由来遺伝子と母方由来遺伝子を1組づつもつ二倍体である。1984年,&color(red){父親由来か母親由来か, どちらから受け継いだかによって発現が異なるよう予め記憶の刷り込まれた対立遺伝子};の存在が発見された((Barton SC, et al.Role of paternal and maternal genomes in mouse development.Nature. 1984 Sep 27-Oct 3;311(5984):374-6.PMID:6482961))((Surani MA, et al. Development of reconstituted mouse eggs suggests imprinting of the genome during gametogenesis. Nature. 1984 Apr 5-11;308(5959):548-50.PMID:6709062))。
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1991年には、父親から受け継いだ染色体でしかはたらかない遺伝子:Paternally expressed genes(PEG)と、母親からの染色体でしかはたらかない遺伝子: Maternally expressed genes(MEG)が実際に同定された((Wagstaff J, et al. Localization of the gene encoding the GABAA receptor beta 3 subunit to the Angelman/Prader-Willi region of human chromosome 15. Am J Hum Genet. 1991 Aug;49(2):330-7.PMID:1714232))
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''初期胚で刷り込みをうける遺伝子は、精子の染色体由来か, 卵子の染色体由来かによりメチル化のされ方が決定する''.その結果, DNAメチル化は2つの同一遺伝子を識別する目印となる。
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&color(red){刷り込まれた遺伝子は受精直後におこる波状の脱メチル化から守られる};ので, ''体細胞はこのメチル化目印をもとに2コピーある遺伝子それぞれがどちらの親に由来するか記憶し, それに従って発現を調節できる''。
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''PEGやMEGのことをインプリンティング(刷りこみ)遺伝子''と呼び、この遺伝子のはたらきによって起きるさまざまな現象をゲノムインプリンティング(ゲノムの刷りこみ)と呼ぶ。

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***シグナル伝達経路において低分子量Gタンパク質は分子スイッチとして機能する((Janeway's 免疫生物学 原書第7版 南江堂 東京 2010; pp))。 [#w7b4ee97]
**シグナル伝達経路において低分子量Gタンパク質は分子スイッチとして機能する((Janeway's 免疫生物学 原書第7版 南江堂 東京 2010; pp))。 [#w7b4ee97]

-単量体GTP結合タンパクファミリーは, 低分子量Gタンパク(small G-protein)または低分子量GTPアーゼ(small GTPase)と呼ばれ, レセプター結合型チロシンキナーゼからの多くのシグナル伝達経路の重要な構成要素である。
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-低分子量Gタンパクには, &color(red){GTP結合型とGDP結合型の2種類の状態がある};。GDP結合型は不活化型であるが, guanine nucleotide exchange factor(GEF)によって媒介されるGDPからGTPへの変換により活性型に変わる。~
GTPの結合はGタンパクの構造変化を起こし, 多くの異なる標的分子との結合が可能になる。GTPの結合はスイッチのオン、オフに相当する。
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-低分子量Gタンパク質はいつまでも活性化状態でいるわけではなく, すみやかに自分自身でGTPからリン酸基を取り除き自らを不活化する。この反応はGTPase活性化タンパク(GTPase-activating protein: GAP)とよばれる制御補助因子によって加速される。このため, 低分子量Gタンパク質は通常不活化型のGDP結合型として存在し, レセプターからのシグナルに反応して, 短時間だけ活性化される。
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-guanine nucleotide exchange factor(GEF)はGタンパク活性化の鍵であり, アダプター蛋白との結合で細胞膜のレセプター活性化部位に集まる。GEFが接近すると蛋白翻訳後に付加された脂肪酸を介して, 細胞内膜上に局在しているRasや他の低分子量Gタンパクが活性化される。
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-Gタンパク質は細胞表面レセプターが活性化されるとオンになり, その後自動的にオフになる分子スイッチの役割を果たす。それぞれのGタンパクが独自のGEFとGAPをもつことにより, 特有な経路をもつようになる。
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-GタンパクにはGタンパク結合型レセプターに会合している高分子量のヘテロ三量体Gタンパクも存在する。

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>★ [[低分子量Gタンパク質>small GTPase (G-proteins) 低分子量Gタンパク質]]のページを見る。

***&color(#0000ee){GNAS変異と胆管膵管内粘液産生性腫瘍, IPMNとIPNBs };[#ab497fbc]

''Intraductal papillary mucinous neoplasm of the pancreas (IPMN)''

2011年Furukawaら((Frukawa T, et al.Whole-exome sequencing uncovers frequent GNAS mutations in intraductal papillary mucinous neoplasms of the pancreas. Sci Rep. 2011;1:161.))が, Whole-exome sequencingによりIPMNを解析し, GNAS変異を48/118例(40.7%)に認め、対照のductal carcinomaには全例(32例)GNAS変異は認められなかった。GαsおよびプロテインキナーゼAのリン酸化基質がIPMNによく発現しており後者は腫瘍の悪性度と関係していた。Gタンパク質シグナル経路がIPMNにおいて重要な働きをしている。

同年Wu Jら((Wu J, et al. Recurrent GNAS mutations define an unexpected pathway for pancreatic cyst development. Sci Transl Med. 2011 Jul 20;3(92):92ra66.))はIPMNの嚢胞液DNAから169遺伝子をしらべKRAS変異と&color(red){GNAS codon201の変異};を認めた。113例の追加IPMN症例を調べ, ''66%にGNAS変異''を、''96%にはGNASあるいはKRASの変異が検出された''。8例はIPMNより進展した浸潤癌であるとわかり, そのうち7例の浸潤癌部に同じくGNAS変異が確認できた。

変異の多くは&color(red){'''''GNAS''' コドン201(exon8)''};に集中し,''ほとんどがR201H/ R201Cのmutation''。


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''Intraductal tubulopapillary neoplasm: ITPN''((Yamaguchi H, et al. Intraductal tubulopapillary neoplasms of the pancreas distinct from pancreatic intraepithelial neoplasia and intraductal papillary mucinous neoplasms. Am J Surg Pathol. 2009 Aug;33(8):1164-72. ))

主膵管内を病変の主座とする点はIPNMとおなじであるが, &color(blue){非粘液産生性で組織学的に管状, 乳頭状あるいは管状乳頭状増殖形態を特徴とする};。
&color(red){''ITPNには'''KRAS''', '''GNAS'''の突然変異は認められていない。''};((Yamaguchi H, et al. The discrete nature and distinguishing molecular features of pancreatic intraductal tubulopapillary neoplasms and intraductal papillary mucinous neoplasms of the gastric type, pyloric gland variant. J Pathol. 2013 Nov;231(3):335-41.))
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***膵以外の腫瘍に認められるGNAS変異の報告 [#o36e36b9]

1.大腸癌:ERK1/2MAPK pathwayを介して発癌に関与することが報告されている。((Wilson CH, et al. The activating mutation R201C in GNAS promotes intestinal tumourigenesis in Apc(Min/+) mice through activation of Wnt and ERK1/2 MAPK pathways. Oncogene. 2010 Aug 12;29(32):4567-75. doi: 10.1038/onc.2010.202. Epub 2010 Jun 7.))

2.大腸絨毛腺腫((Yamada M, et al. Frequent activating GNAS mutations in villous adenoma of the colorectum. J Pathol. 2012 Sep;228(1):113-8. doi: 10.1002/path.4012. Epub 2012 Jul 2.))

3.胃幽門型腺腫((Matsubara A, et al. Frequent GNAS and KRAS mutations in pyloric gland adenoma of the stomach and duodenum. J Pathol. 2013 Mar;229(4):579-87. doi: 10.1002/path.4153. Epub 2013 Feb 4. PMID: 23208952))

4.虫垂低異型度粘液性腫瘍((Nishikawa G, et al.Frequent GNAS mutations in low-grade appendiceal mucinous neoplasms. Br J Cancer. 2013 Mar 5;108(4):951-8. doi: 10.1038/bjc.2013.47. Epub 2013 Feb 12.))

5.子宮の[[lobular endocervical glandular hyperplasia]]((Matsubara A, et al. Lobular endocervical glandular hyperplasia is a neoplastic entity with frequent activating GNAS mutations. Am J Surg Pathol. 2014 Mar;38(3):370-6. PMID:24145653))

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