[[Epigenetics エピジェネティックス]]

*クロマチンリモデリング因子 [#zbb6834b]
chromatin remodeling factors

''クロマチンリモデリング因子''はヒストンバリアントやヒストン修飾, あるいは転写因子との相互作用により特定のクロマチン領域に運ばれる. そこでATP依存性に, ヌクレオソームの除去, ポジショニングの変換, ヌクレオソーム中のヒストンバリアントの交換, ヒストン修飾状態の変更を行って, &color(blue){''ヌクレオソームレベルでのクロマチン構造変換''};をきたす。

これによりクロマチンリモデリング因子は&color(red){''転写, 複製, 修復, 組み換えなどのDNA反応を正にも負にも制御できる''};。

''クロマチンリモデリング因子の構造''

クロマチンリモデリング因子は,これまでの研究により, ''9-12個のサブユニットからなる巨大な複合体''であることがわかっている。

複合体中に含まれるSnf2ファミリータンパク質のドメイン構成型により4種のファミリーに分類される。

1. ''SWI/SNF (switch/ sucrose non-fermenting)'': さらに サブユニット構成により''BAF, PBAF複合体''に大別される。

2. ''ISWI (imitation switch )''

3. ''CHD (chromatin helicase DNA binding protein )''

4. ''INO80 (inositol 80 requiring )''
#br



***''SWI/SNF5 ファミリー'' [#s0c067ae]

#ref(SWI-SNFfig.jpg,around,right)
>出芽酵母の特定遺伝子転写が不活性となる変異株について解析した2つの独立した研究により最初に同定されたクロマチンリモデリング因子

>出芽酵母の性決定にかかわるHO遺伝子の転写が不活性になる遺伝子変異として'''Swi1, Swi2, Swi3'''が, SUC2遺伝子の転写不活性化の遺伝子変異には'''Snf2'''(Swi2と同一遺伝子), '''Snf5, Snf6'''が発見された。後にこれらは1つの複合体(SWI/SNF5複合体)を形成することが明らかになった。

>SWI/SNF5複合体は''ATP依存的にクロマチンリモデリングを行い, ATPase活性をもつSwi2/Snf2サブユニットが活性の中心となる(出芽酵母の場合)''。その後の解析により, Swi2/Snf2と相同性をもつタンパク質が多数同定された。これらのタンパク質はSnf2ファミリーに分類され、その多くがクロマチンリモデリングにかかわる複合体を形成していた。


>ヒトでは,BAF(BRG1-associated factors)複合体のhBRM or BRG1と PBAF複合体のBRG1が&color(red){ATPase活性};をもつ。
#clear


''悪性腫瘍におけるSWI/SNF5ファミリー遺伝子の変異''
#ref(SWI-SNFcomplexTable01.JPG,around,80%)

>これまでにヒト悪性腫瘍で, '''SNF5''' ('''SMARCB1, INI1, BAF47'''), '''ARID1A''' ('''BAF250A, SMARCF1'''), '''PBRM1''' ( '''BAF180''' ), '''BRG1''' ('''SMARCA4''')などの変異が報告されている。

'''''SNF5''' ('''SMARCB1, INI1, BAF47''')''

-''抗体名のINI1(integrase interactor1)で有名''. 小児腎・軟部組織の悪性ラブドイド腫瘍 malignant rhabdoid tumor(MRT), 中枢神経系のatypical teratoid/ rhabdoid tumor(AT/RT)症例の大多数に変異が認められている. 
#br
-deletion, non-sense, frameshift, missense変異などが認められ, 不活性化変異inactivating mutationとなる
#br
-不活性化変異によりタンパク質発現が消失し, &color(crimson){免疫染色で腫瘍細胞核のINI-1消失(ほとんどの正常細胞は陽性のため内部コントロールとなる)陰性化};が診断で重視される. 
#br
-MRT, AT/RTの他, 肉腫や癌での消失陰性化の報告がある.&note{:Hollmann TJ, et al. INI1-deficient tumors: diagnostic features and molecular genetics. Am J Surg Pathol. 2011 Oct;35(10):e47-63.};--->[[類上皮肉腫のページを見る>類上皮肉腫 - Rahbdoid cell のみられる腫瘍]]

&ref(INI1-tumor.jpg,,50%);

'''''ARID1A'''''''(BAF250a)''

-AT-rich interactive domain 1a(ARID1A)遺伝子はBAF250a 蛋白質をコードしている. BAF250aはSWI/SNF クロマチンリモデリング複合体を構成するmultiproteinの重要な成分の一つ.&note{:Wilson BG, et al.SWI/SNF nucleosome remodellers and cancer. Nat Rev Cancer 2011;11:481-492.};

-deletion, non-sense, frameshift, missense変異などがあり, &color(magenta){卵巣明細胞癌の50%, 子宮体部類内膜癌の30%前後に変異が認められる};&note{:Jones S, et al. Frequent mutations of chromatin remodeling gene ARID1A in ovarian clear cell carcinoma. Science. 2010 Oct 8;330(6001):228-31.};&note{:Wiegand KC, et al. ARID1A mutations in endometriosis-associated ovarian carcinomas. New Engl J Med. 2010 Oct 14;363(16):1532-43.};相同性の高い'''ARID1B'''遺伝子もあるが, 変異の報告は'''ARID1A'''についてのものが多い.

-ARID1A1の変化は高悪性度内膜癌において認められ, Grade3のendometrioid carcinomaの39%に, 18%の漿液性癌, 26%の淡明細胞癌に発現消失が報告されている. &note{:Wiegand KC, et al. Loss of BAF250a (ARID1A) is frequent in high-grade endometrial carcinomas. J Pathol 2011;224:328-333.};

-変異は'''SNF5'''同様, 不活性型変異である.

-ARID1Aはp53依存性にp21を誘導し, ノックダウンでは細胞増殖が促進される&note{:Guan B, et al. ARID1A, a factor that promotes formation of SWI/SNF-mediated chromatin remodeling, is a tumor suppressor in gynecologic cancers. Cancer Res. 2011 Nov 1;71(21):6718-27.};

-ARID1Aの変異は上記2種の癌に比べると低頻度であるが, 胃癌, 大腸癌, 乳癌, 膵癌, 腎癌, 髄芽腫などでみられる.&note{:Jones S, et al. Somatic mutations in the chromatin remodeling gene ARID1A occur in several tumor types. Hum Mutat. 2012 Jan;33(1):100-3.};

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