WikiPathologica

コヒーシン(cohesin)

S期でDNA複製され生じた姉妹染色分体を束ねて接着させ(コヒージョン->cohesion), 染色体を正確に分配するために必須な役割をもつ蛋白複合体をいう。[オーソドックスな役割]

  • SMC1A, SMC3, Rad21/Scc1とSA/Scc3/STAGを中心とした4つのタンパク質からなる複合体で特徴的な構造をとる。
  • 特徴的なリング状の構造をとりリングの中心に姉妹染色分体を配置するモデルが提唱されている。
 
cohesin02.jpg
  • コヒーシン複合体の構造
  • リング状の構造をしたコヒーシン複合体の骨格はABC ATPaseである, Smc1,Smc3,および RAD21/Scc1からなるトライアングルである.
  • ヒンジ(上方),ヘッド(下方),それに,中間部分の逆平行コイルドコイルをもった竿のような形状のタンパク質で,ヒンジ部位を介してヘテロ2量体を形成している.
    このSmc1-Smc3ヘテロ2量体のヘッド部位をつなぐように横たわっているのがkleisinファミリータンパク質のRAD21/Scc1である.このRAD21/Scc1に直接に結合しているのが第4のサブユニットSA1またはSA2である.
  • それぞれのコヒーシン複合体はSA1またはSA2をもっており両者を同時にもつことはない.
  • Wapl-Pds5ヘテロ2量体はScc1およびSA1あるいはSA2を介してコヒーシンに結合している.複製されたクロマチンとコヒーシンとの結合様式については諸説あるが,ここでは,2本の姉妹染色分体をひとつのリングが抱え込んでいる“リングモデル”にしたがう.
  • コヒーシン複合体は分裂終期からG1期にかけてクロマチンに結合するが,この時期にはWapl-Pds5ヘテロ2量体のはたらきによってコヒーシンとクロマチンとの結合は不安定化されているものと考えられる.S期のあいだ,SororinはDNA複製とSmc3のアセチル化に依存してクロマチンに結合し,そこでコヒーシン複合体上のPds5とFGF配列を介して結合することでWaplをPds5からはずす.このことによりWaplの機能が阻害され,S期からG2期のあいだのコヒーシンの結合が安定化されているものと考えられる.分裂期においてSororinはリン酸化(P)をうけPds5と結合できなくなる.その結果,WaplがPds5と結合することで活性化しコヒーシンを不安定化させるようにはたらくのかもしれない*1
 

[新たに注目されるコヒーシンの働き]--ゲノムの仕切りインシュレーターとしての機能

近年コヒーシン複合体がCTCFと協調的にインシュレータ-としての役割を持つことが示されコヒーシンの転写における機能がクローズアップされてきた*2

インシュレーター(insulator)とは染色体上に点在する制御配列と遺伝子の連携を行い染色体高次構造を通して遺伝子発現調節を制御する基本構造と想定されている。

インシュレーターは遺伝子から遠位に存在するエンハンサーの指向を高める(エンハンサー効果を遮断/限局させる)活性とヘテロクロマチンとユークロマチン領域を住み分ける障壁(バウンダリー)としての活性をもつ*3

インシュレーターは上記2つの活性により、位置効果バリアとして働くことでヘテロクロマチンの影響を遠ざけ, ゲノムを機能領域に区画化する。

CTCF(CCCTC-binding factor): 11個のZinc fingerをもつCCCTC配列を認識するDNA結合蛋白でハエからヒトまで高度に保存されている。1999年, ニワトリのβグロビン遺伝子領域インシュレータ-配列に結合する因子として単離された*4

CTCFは脊椎動物中でインシュレーター活性をもつ配列に広く結合しており, IGF2/H19遺伝子座におけるゲノムインプリンティング, X染色体の不活性化など生物学的に基本的かつ重要な遺伝子発現制御機構に広範囲にかかわっていることが示唆されてきた。実際染色体高次構造を解析するとCTCFは特異的な高次構造(=ループ構造)を染色体に形成させることにより遺伝子発現調節をおこなっていることが推察されている。

Cohesin複合体遺伝子変異と腫瘍

次世代シークエンサーによる解析により, 骨髄系腫瘍で cohesin複合体遺伝子変異が見つかったことが報告された。(Nature Genetics 電子版 Aug, 2013*5)

  • cohesin構成因子のうちSA/STAG, RAD21/, SMC1, SMC3遺伝子のみに変異, 欠失が認められた。
  • MDS(8.0%), CMML(10.2%), AML(de novo12.1%, AML/MRC 13.3%), CML(6.3%), MPN(1.3%)
  • MDSでは, RCMDとRAEBに変異が多く,
  • 特定の変異hot spotは見られない。各構成遺伝子変異は同時にはおこらない。
  • cohesinの変異は骨髄腫瘍に認められるTET2, ASXL1, EZH2変異としばしば合併する。

*1 Nishiyama T, et al. Sororin mediates sister chromatid cohesion by antagonizing Wapl. Cell, 2010; 143, 737-749
*2 Bando M コヒーシンとインシュレーター機能 医学のあゆみ 2010; 235(10): 983-987
*3
*4 Bell AC, et al., The protein CTCF is required for the enhancer blocking activity of vertebrate insulators. Cell. 1999 Aug 6;98(3):387-96. PMID:10458613
*5 Ayana Kon,et al., Recurrent mutations in multiple components of the cohesin complex in myeloid neoplasms Nature Genetics 18 August 2013 doi:10.1038/ng.2731

添付ファイル: filecohesin02.jpg 966件 [詳細]

トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2015-12-08 (火) 20:37:32 (951d)