Waldenstroem macroglobulinemia
lymphoplasmacytic lymphoma(LPL) †
小型B細胞リンパ球, 形質細胞様リンパ球(plasmacytoid lymphocyte), 形質細胞の混在する腫瘍性増殖で骨髄, リンパ節, 脾臓病変を認める.
- 典型例はCD5陰性(CLLとの相違), 過粘稠(「ねんちゅう」と読む。粘調ではない)症候群(hyperviscosity syndrome), cryoglobulinemiaを呈するM蛋白の増加を随伴する。
しかし, IgM paraproteinの存在はLPLの診断には必須ではない。
- 他のリンパ腫でplasmacytoid variantは除外される。(とくにMALT lymphoma)
- REAL分類の「lymphoplasmacytoid」の名称はWHO分類でlymphoplasmacyticに変更されている。
WHO2016での変更点
1) MYD88L265Pがほぼ全症例に認められる。ただし, MYD88L265PはLPLに特異的ではない。--> MYD88のページ, Allele specific-PCR
2) IgM-MGUSはLPLあるいはその他のリンパ腫類縁疾患であり, 形質細胞腫とは異なると考えられる。
3) IgM-MGUSは マクログロブリン血症, 免疫グロブリン関連アミロイドーシスへの進展が年 1.5%とされる *1
形態:
- 腫瘍は小リンパ球, 形質細胞様リンパ球(plasmacytoid lymphocyte), 形質細胞のびまん性増殖からなり, 種々の程度に免疫芽球(immunoblast)が混在する。
- 形質細胞様リンパ球はリンパ球様の小型核をもつが, 細胞質の広い(粗面小胞体の発達した)細胞をさす。
- リンパ節の辺縁洞は免疫グロブリンに反応した組織球増加によりしばしば拡張している。
- 脾臓は赤脾髄, 白脾髄いずれも侵襲される。増殖はびまん性でmarginal zoneや赤脾髄の結節は不明瞭。
- 骨髄病変はびまん性のことも結節形成性のこともある。通常interstitial pattern. B-CLLに比べ病変は小さい傾向があり小リンパ球にplasma cell, plasmacytoid lymphocyteを混在する。
- 髄内腫瘍結節には多くのmast cellが主に結節辺縁部分に多く認められる。ASD-Giemsa染色で明瞭。免染は必要なくGiemsa染色で可。HEではよくわからない。
- 末梢血に腫瘍細胞が出現する頻度はCLLにくらべ少なく, plasmacytoidの形態をしめす。
免疫染色
- 腫瘍細胞には以下のマーカが陽性-->CD19, CD20, CD22, CD79a, sIgM (IgDは通常陰性)
- CD5, CD10, CD23, CD43は通常陰性(注:下記参照)
- CD25, CD11cはかすかに陽性となる症例がある。
- CD5は5〜20%で陽性となる。
症例によるvariationは見られるが, 新規診断基準*2*3では
- monoclonal surface Ig (sIg)陽性。(kappa/lambda= 5:1)
- CD23+となる症例が報告により存在する。(35%, 61%など)
- LPL/WMのFCM検査は骨髄腫用検査セット(cytoplasmic IgMをみる)ではなく、リンパ腫セットを依頼し, surface IgMを調べることが必要. cyIgMではkappa, lambdaが分かれないこともある。
B-CLLとの鑑別は, CD5, CD23が陰性で, CD20, sIgが強陽性. 細胞質のIg出現
LPLの症例--病理所見 †
症例 IWTcase. 71yo male.
濾胞性・間質性膀胱炎で診療中, 検査で貧血, 血小板減少, 高γグロブリン血症(IgM Mタンパク)を指摘され, 血液内科を紹介受診となった.
Hb11.5g/dl, RBC 321x104, MCV 104, MCHC 34.4, WBC 5200, st. 2.0, seg 79.0, Eo 0.0, Ba 0.0 Mo 5.0, ly 13.0%,plt. 11.7x104, 連銭形成(+). IgG 2121mg/dl, IgA 163mg/dl, IgM 3233mg/dl
免疫電気泳動でIgM-κtype Mタンパクが検出された.
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HE | Naphtol-ASD-CAE-Giemsa | Naphtol-ASD-CAE-Giemsa | bone marrowの結節病変 |
Bone marrow clot sectionでは, nodularな病変形成が認められる. HEでは不明瞭であるが, Naphtol-ASD-CAE-Giemas染色では mast cellの顕著な増加が明瞭に認識される.
mast cellsは周辺部に出現することが多いようである.多発性骨髄腫の結節にはmast cell増加を認めることは経験上ない.
明瞭な結節が形成されず,造血細胞内に小さなクラスタを形成して散在する場合もある.
増殖するB細胞はCD19+, CD20+. 結節内に増加する形質細胞はCD19+, CD20‐である. (多発性骨髄腫の形質細胞様細胞はCD19陰性).~
多くのB細胞がMUM1陽性を示す. CD5, CD10, BCL6は陰性.
CD138陽性形質細胞の分布. 中央部よりも周辺部に陽性細胞が多くみられる.
light chain, kappa/ lambda-ISHでは, kappa>lmbdaであるが, この結果より, 明瞭なrestrictionと断定するのは難しい.
通常/ 正常の骨髄クロットでは 背景タンパク液のIgMはそまらないかごく淡い陽性. しっかり陽性を示す本例では血中IgMの増加を示唆する. IgMに染まる形質細胞が増加している.
多発性骨髄腫などと違い, 他の免疫グロブリンが強く抑制されることは少ないようである.
LPLの症例 †
症例ページ--->lymphoplasmacytic lymphomaの症例
lymphoplasmacytic lymphomaの治療 †
第六回リンフォマニアになる会 伊豆津先生の講演から
診断の契機
- 貧血, 過粘稠症状(倦怠感, 息切れ, 頭痛, 意識障害, 視力障害, 腎障害), 肝脾腫は典型的な主症状
- 寒冷凝集素症(CAD), cryoglobulinemia, polyneuropathy, amyloidosis, 腎障害などIgMの特徴的生理作用による症状があり上記3症候がない場合はIgM低値で, B-cellクローンが少ないことが多い
↑
診断において臨床家と病理医の所見がくいちがうのは, こういう場合。(臨床家は症状がある[=治療が必要な状態]のでテンションが高いが、病理医はB細胞の増殖は少なく, 腫瘍といえないと返事する)
- 無症候(検査異常):IgM M蛋白, 末梢血リンパ様異型細胞(単クローン性B細胞)
macroglobulinemiaの患者さんは, 症状を呈していなければ, (過粘稠症状, 貧血など過粘稠以外の症状)治療の必要はない。症状が発現してくれば治療対象となる。(原則は2016年も変わっていない)
これまでLPL/WMの治療 †
■ indolent B-cell lymphomaに対する治療
- Rituximab単剤療法
- IgM flaire(IgMフレア)という問題がおこる。:腫瘍量が減ってもIgMが増えてしまう。治療後2週間から6週間の間, 過粘稠症候群の症状が悪くなることがある。これは疾患の進行とは異なる
治療開始後に再入院になり, 血漿交換が必要になるときがある。
- Rituximab併用化学療法 (RCD療法, R-CHOP療法, BR療法… )
■ 骨髄腫に対する治療
- MP療法 (melpharan+predonisolone)
- Dexa大量療法, VAD療法
- Bortezomib併用療法(BDR療法… )骨髄腫には初回治療につかいわないと予後が悪い。日本ではリンパ腫には保険が認められていない。
■ 血漿交換療法(double filtration plasmapheresis)
■LPL/WMの治療効果判定: IgM減少を基準としている。
- Minor response(MR): 血清IgM減少 25~50%, 新規病変・症状なし
- Partial response(PR): 血清IgM減少 50-90%, 髄外病変改善, 新規病変・症状なし
- Very Good partial response(VGPR)血清IgM減少 ≧90%, 髄外病変改善, 新規病変・症状なし
- Complete response(CR) 免疫固定法で血清単クローン性IgM消失. 血清IgM正常
髄外病変消失、BMに腫瘍浸潤なし.
■最も初回治療によく使われるDRC(Dexamethasone, Rituximab, Cyclophosphamide)療法においてOverall response ORR(血清IgMが25%以上低下する)は83%: CRは7%と非常に少ない, PR 67%, MR 9%
- CRは非常に少ないため, macroglobulinemiaの患者さんではIgMが低下するだけで, 倦怠感など過粘稠症状や貧血が改善するため、これで治療よしとする。
■bortezomibを併用するとIgMを早く低下させることができる.(日本では使えない) 1-2ヶ月で効果がでてIgM Fraireの山がない。しかしCRは3%ほどと、大変まれ。
LPL/WMの経過中の問題点
1) 再発を繰り返す
2) 組織学的形質転換(transformation)
3) 二次性骨髄異形成症候群・急性白血病の合併
4) 感染症
BTK inhibitor(ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤)--ibrutinib †
tol-interleukin-1 resistanse (TIR)ドメインは直接MYD88を活性化するほか, TRL4ではTIR domain containing adoptor protein (TIRAP)とBurton's tyrosin kinase (BTK)が反応することでMYD88が活性化される。
Burton's tyrosin kinaseを阻害するとMYD88を介するシグナルを阻害しNFkB活性化を押さえることができる。
MYD88変異をもつ患者さんのほうが, MYD88野生型患者さんよりもibrutinibが良く効く. IgMの減少が強く、貧血改善度が高い*4--->Treon SPらの文献 freeで閲覧可能です。
再発を繰り返すWM 63例にibrutinib 420mg/day PO投与.
- 全奏功割合 90.5%, Major response 73%. 血液障害など有害事象は抗がん剤よりも頻度が少ない。*4
商品名 imbruvica (ヤンセン)
米国では2013年11月にマントル細胞リンパ腫への使用が、2014年2月に慢性リンパ性白血病への使用が承認された。2015年1月には、非ホジキンリンパ腫の一種であるワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症への使用が可能となった。
日本では2016年3月に「再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)」について承認された。2016年6月現在では、「再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫」に対して追加承認申請されている。(承認のデータはwikipediaから)
原発性マクログロブリン血症へのイブルチニブ療法 †
ibrutinibの単群試験が2つと, ibrutinib+ R療法群とプラセボ+ R療法群を比較する第III相試験*5*6がおこなわれた.
イブルチニブは420mg x 1/T, 連日投与. リツキシマブは 375mg/m2を 1, 4, 17, 20週めにip.
- いずれの単群試験でも, overall response 90%, major response 70%と優れた治療効果が得られた.
- 効果は治療開始後早期から発現し, 血清IgM低下, 貧血改善, リンパ節腫脹脾腫の縮小, 感覚性ニューロパチーの改善が認められた.
- 比較試験では, ibrutinibの併用により, 再発, 死亡リスクが80%低下した.
- 比較第III相試験においては, ibrutinibの無進行生存期間延長効果は, MYD88L265P, CXCR4WHIMの遺伝子変異の有無にかかわらず同等に認められた.
- 有害事象; grade3以上の心房細動, 高血圧がプラセボ+ R療法群に比較して高頻度に起こった.(各々, 12 vs 1%, 13 vs 4%)
- infusion reactionや一過性IgM増加(フレア)はイブルチニブ併用療法の方が低頻度であった( 1 vs 16%, 8 vs 47%)